吉良からのメッセージ

2016年4月16日

4月15日地方創生特別委員会にて質問に立ちました

4月15日地方創生特別委員会にて質問に立ちました。
地方が元気になるための持論を前置きし、下記の要旨で書生論的、観念論的ではありますが、地方創生についての本質的な議論を展開しました。
当日の委員会でも石破大臣はじめ与野党問わず好評な議論でしたので、是非、衆議院TVでご覧戴きたいと存じます。

1.成長戦略と地方創生の関係について

まず最初に、地方創生と成長戦略の関係ということを念頭におきつつ、民主党と自民党の違いについて披露しました。具体的には自民党が常に供給者側の論理に立つ政党であるのに対して、民主党は生活者の論理に立とうとする政党だったこと。また、自民党は戦後復興と高度成長戦略により、我が国を世界有数の経済大国に押し上げてくれた功労者だが、その時の成功体験があるために、先進国になった今でも、当時の発展途上国的政策を色濃く残している政党である。安倍政権の成長戦略は今でも優良な製造業を後押しするという発想が残っている。製造業が高度成長を引っ張り、日本経済を牽引してきたし、今もリーダー的存在であることは間違いないが、製造業は生産性の観点からも優等生だし、地方を元気にするという観点からは、地方雇用の大宗を占めるサービス業を後押しする必要がある。
そういう製造業を中心とした成長戦略の中で、安倍政権は成長自体を目的化していると危惧している。国民の幸せ、幸せ感を増幅していくのが政治の役割であるのに、途上国時代的発想の限界で今でも成長することが国民の幸せだという感覚を脱し切れていない。
地方創生も、安倍政権の中にあっては成長の一つの手段として考えられているのではないかという問題意識を持ちつつ、地方創生と成長戦略の関係について、石破大臣の見解を質しました。

2.若者の意識に変化が表れている

日本が先進国になっている今、一億みんなであっちに向かっていくか、日本人全体で何百兆円を達成するとか、こういう発想自体が極めて発展途上国的である。

アブラハム・マズローという心理学者が唱えた「人間の欲求五段階説」において、初期段階には生理的欲求、安全の欲求、親和の欲求(社会的欲求)がある。ここまでの段階は発展途上国的で、たとえば、みんながひもじい思いをしているときに、みんな食えるようにしようということに誰も異論は唱えない。けれども、安全も衣食住が足り、人とのかかわりも十分できるようになって以降に人間が求めるものは、自分を認めてもらいたいという欲求があり、その先には、自己実現という欲求がある。自己実現の方向は人様々であり、豊かになればなるほど、もう一つの方向を向かない、それが人間の心理でもあり、そして人間がつくる社会だ。
そういう意味でも、一億みんなでこっちに向かっていくとか、みんなで六百兆を達成するとか、もうそういう時代ではないということを指摘する。

その延長線上で、若者の意識変化が表れている。

今の若者は、自分たちが生まれて以来、一度も成長とか元気のいい社会を経験したことがない。自分の給料を見ても、一部の人を除いては、本当にこれで生活できるのかという給料。将来的な展望もなかなか描きづらい。けれども、若者は、そういう現実を受け入れ、その環境の中で、何とか幸せ感を得ようとしている。
その典型的な動きの一つが東京のワーキングプアと言われるような若者が、自腹で東北の被災地に行ってボランティア活動をしていること。少ない給料の中で、自腹で交通費を払って被災地に行くのは大変なことだが、被災者から一言「ありがとう」と言われる、その幸せを求めて被災地に行っている。
もう一つは、都会を離れて地方に定住しようという若者たちが出てきていること。
これらは、経済成長ではなく、自分たち独自の幸せ感を探し始めているそのあらわれだ。

上記を前置きした上で、若者を中心に都会から地方へと目を向け始めている背景にはどういうことがあると考えているのか、石破大臣の考えを質しました。

3.奈良時代の税制・租庸調が地域コミュニティーに求められる時代

地方創生というのは必ずしも成長戦略の手段ではない。

これからの地域コミュニティーは、人と人とのつながりを大事にしながら、奈良時代の税制・租庸調に戻る時代になる。租はお米で、最後の調は布、庸は労役など現物提供。
これからは、GDPには反映されないけれども、お互いが物々交換やサービスを交換し合い、幸せ感や満足感や元気を交換し合うコミュニティーの時代になると思っている。
マッサージが得意な人がマッサージしてあげたら、相手はキャベツを返礼にくれる、このようなあり方が、必ずしもGDPには反映されないけれども、幸せ感や満足感は大いに増していく時代になると思う。
租庸調という形をどういう形でやるかは国というよりも各自治体が創意工夫していかなければならない分野だが、このような物々交換が重要で、それがコミュニティーの中の重要な要素を占めていくという考え方についての石破大臣の見解を質しました。

4.人材育成が地方創生の鍵

地方・地域を元気にしていくためにはリーダーの育成が欠かせない。リーダー候補には留学だったり遊学だったりさせて、広く視野を広げて、そして自分のふるさとに戻って地域おこしをしていくという仕組みをつくれないものかと思っている。
時に自治体は、外に出るな、ここにとどまっていろというやり方をするが、私は逆だと思っていて、サケじゃないが一度大海に放って、それでも必ず戻ってくるというような仕組みがより地域を元気にできると思っているが、石破大臣の見解や如何にと質しました。

5.民間との人事交流、民間の知恵を借りる必要性

田舎に行けば行くほど、役所の存在、役場の存在が大きい。そこに住む地域住民は役場の人たちを頼りにする。でも、役場の人たちには民間経験がない。
耳学問はあるけれども、各論、ハウツーになったときに指導することができないという問題がある。
役場の方たちは物すごく地域のことを真剣に考えて頑張っているが、その発想に限界がある。

大分県庁出向時に大分県のある肉牛生産が盛んな町で意見交換をしていたときの話。牛肉関税が下げられていた頃、町や肉生産者は関税引き下げに大反対していた。その際、私は役場の方と肉牛生産の方に次のような話をした。
自分のような商社の人間は、肉の関税が下がると、畜産公社、町役場、町民からお金を集めてオーストラリアに牧場を買い、日本への輸出をすることを考える。本土でつくった肉は高級牛として売り、オーストラリア産は手頃な値段として日本向けに輸出して儲ける。儲かれば儲かるほど、配当として朝地町にお金が還流され、町が潤うと。

このような経験や発想を持っているビジネス経験者が東京近辺含めてたくさんいるので、このような人材を地域の活性化のために活用する仕組みをつくりたい。
こういう豊富な経験を持っている人が都市部にいるが、その人たちが戻ってこれる受け皿をつくる、その一例としてオーストラリアの産業開発公社という投資、融資、経営指導、技術指導を行う連邦政府100%出資だが、民間人による経営・営業を行っていた公社をモデルとする「大分産業開発公社」の設立を大分県に提案した経験があるが、そのような組織を設立し、受け皿としていきたい。
石破大臣にもそのような受け皿づくりについて前向きに検討してもらいたい、と要請しました。

上記の質問に対して、石破大臣の答弁はほとんど全てに肯定的であり、共感を示してくれるものでした。