吉良からのメッセージ

日米二国間協議について思う。その1

今日は、今話題の日米二国間協議についてです。

国連総会を活用した日米首脳会談において「TAG(Trade Agreement on Goods)」の協議(日米二国間の関税など貿易に関わることを新たに取り決める物品貿易協定の協議)を開始すること、(米国からの輸入農産物を想定していると思われますが)新しい関税率はTPPのそれを下回るようにはしないこと、TAGの交渉中は、我が国が最も懸念する、対米自動車輸出に関する関税の引き上げはしない、という約束を取り付けた、と報道されています。

この種の話は当局筋から正確な情報を取り寄せた上で評価すべきだと思いますので、本メルマガでは、目先の利益しか見えない(実際は、目先の利益にすらならないのですが)トランプ大統領が引き起こす世界的な自由貿易の危機についての持論をお伝えしたいと思います。

まず、現在の状況を歴史的に俯瞰してみます。実は、大学時代に一番力を入れて勉強したことは、国際経済の仕組みでした。

世界経済は今なお、第二次世界大戦末の1944年に発足したブレトン・ウッズ体制下にあると言えます。同体制は、国際通貨基金(IMF)と国際復興開発銀行(IBRD=世界銀行)による国際通貨金融体制、自由貿易の推進を目的として締結されたGATT(ガット=General Agreement on Tariffs and Trade=関税貿易一般協定)と、同協定を引き継いだWTO(世界貿易機関。1995年設立)による国際貿易体制、米ドル基軸通貨体制、を大きな枠組みとする国際通貨金融貿易体制で、各国の通貨価値の安定を図りながら、自由貿易を促進し、世界経済の安定と発展、及び、途上国の経済発展の促進を目的としていました。

勿論、1971年のいわゆるニクソン・ショックによって、金との兌換保証を前提としていた基軸通貨米ドルの金兌換が停止されることとなり、為替取引は固定相場制から変動相場制に移行するなど、ブレトン・ウッズ体制の初期の形は終焉しています。しかし、変動相場制下でも米ドルの基軸通貨体制は維持され、WTOを中心とする自由貿易体制の維持・促進、IMFと世界銀行を中核とした国際金融秩序の維持を目的とする通貨体制の大枠は今も変わっていません。もっとも、この体制が、現在の世界経済、国際金融の諸問題を解決できる体制になっているかどうかは別問題です。

ブレトン・ウッズ体制が構想された当時の時代的背景は、2度の世界大戦、特に第2次世界大戦は、不景気、恐慌にあえぐ先進各国が、自国が持つ植民地を中心に市場を囲い込み、「ブロック経済圏」をつくっていたこと、そのブロック経済化により、世界貿易が縮小し、益々、各国の不景気が深刻になる負のスパイラルに陥っていたこと、その状況を打開するために、植民地を持たない国が、武力を含めた強引な市場獲得を急いで、他国利権との摩擦・衝突が生じたこと、その摩擦・衝突を正面突破しようとして戦争に至ったこと、などがあげられます。

このような時代的背景から起こった悲惨な戦争を二度と繰り返さないために、「経済のブロック化」を阻止・回避し、開かれた世界貿易を促進し、各国経済、ひいては世界全体の経済を発展させるべく、ブレトン・ウッズ体制が構想されたのです。

今、トランプ大統領が掲げる「米国第一主義」と「自由貿易の否定」は、ブレトン・ウッズ体制の産みの親である米国自らが、悪夢の「ブロック経済化」を追求しようとするものです。

既に長くなりましたので、今日は一旦これで終わりにし、また、近い内に続編を発信したいと思います。

吉良州司

バックナンバー