吉良からのメッセージ

安全保障法制に対する吉良州司の考え方 その4

前回のブログでは、「遠くは抑制的に」と主張する考え方をお伝えしました。その要旨は、我が国周辺の諸事態に広く深く備える必要性は認めるものの、いくら米国が同盟国に対して米国が果たしている役割を担ってくれるように要請があったとしても「世界のどこででも」後方支援や武力行使ができるようにするには無理があるということです。法律論の細部に触れた内容でもあったために、やや難解だったという声もいただきました。

そこで今回は、前々回の「近くは現実的に」も含めて、わたしの考え方の要点を分かりやすく整理いたします。

1.日本周辺地域の危機対処は国家としての最優先

国際環境の変化は、北朝鮮の脅威や中国の台頭に限らず、国際的に拡散するテロの脅威、国家以外の当事者による武力紛争、宇宙・サイバー空間に対する攻撃やその可能性、中東情勢の不安定性など、枚挙に暇がありません。国際的なこの新情勢に対応するために、米国が同盟国に応分の役割や負担を要請しており、それに応える必要性も理解しています。

それ故、私は、地域的制約を越えて対処することが未来永劫まかりならぬというつもりはありません。しかし、日本周辺の直接的な危機への対処と地理的に遠い地域での対応とでは自ずと優先順位が違うと思うのです。

前回、前々回のメッセージにおいて強調しましたように、東アジアにおける、北朝鮮の脅威や中国の台頭に対して、また、朝鮮半島有事や台湾海峡有事、尖閣や東シナ海で起こりうるかもしれない紛争や武力衝突に対して十分な備えをしておくことは国家の最優先課題です。そして、充分な備えをするために、同盟国(米国)や重要な安全保障上の友好国(豪州等)との常日頃からの共同訓練や一朝有事の際の連携を確かなものにしておく必要性も認めます。
これらのことは、繰り返しになりますが、私自身が実務責任者のひとりとして深く関わった前防衛大綱でも、その必要性を強調しているのです。

従って、日本周辺における危機に対しては、『国家としての「正当防衛」』の範囲内であれば、基本的に「個別的自衛権」の範囲内として対応が可能であり、それが我が国を防衛する任に当たっている米軍を支援することになる場合で、国際法上は「集団的自衛権」とみなされる可能性があったとしても、それを容認してまでも十分な備えをしておくべきだと思います。

2.「世界のどこでも」の場合、本来なら憲法改正が必要
~現行憲法が許しているのは正当防衛と国際貢献~

政府案に示されている、自衛隊の活動領域を地域、質量ともに拡大するには、本来なら憲法改正が必要で、改正憲法(私は「創憲」の立場)の中で、平和主義理念を明確に掲げた上で自衛権の保持と自衛権行使のための自衛軍の保持を明記すべきだと思います。同時に、自衛軍の目的、役割も明記することによって、自衛軍の活動に歯止めをかけておく必要もあると思っています。

もともと、現行憲法は、第9条第1項において「国権の発動たる戦争と武力による威嚇または武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する」、第2項において、「前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない」と明記していることは、ご承知の通りです。
ただし、これは、「主権国家が持つ自然権としての自衛権まで否定したものではない」と解釈され、その自衛権行使のための「軍隊ではない」実力組織としてわが国の自衛隊が存在します。

このことを素直に読み解けば、人間と同じように、『国家としての「正当防衛」』は許される、つまり、他国による攻撃、侵略、急迫不正の侵害に対し、自国、自国民の生命・財産、権利を防衛するための武力行使を伴う反撃は許されるということです。国際貢献についても、憲法前文(割愛)の精神から、当然許される、「許される」どころか、積極的に貢献すべきだと読めると思っています。

3.世界中どこでも後方支援や武力行使が許されるというのは正当防衛の域を超えている

みなさんが既にご存知の当たり前のことばかりを書いてしまいましたが、「遠くは抑制的に」という私の考え方について、理論的、現実対応的にもご理解戴きたいからなのです。

今回の政府提出安全保障法案中の「世界のどこでも」内容は、この「正当防衛」の域を超えると思っており、繰り返しになりますが、世界のどこかでは、国際社会として一丸となって対処すべき事態も起こると思っていますが、その事態に対しては個別に「特別措置法」で対応すべきだと思うのです。

そして、特別措置法の足らざるところは、前回のメルマガで指摘したように、国会における議論と決断の迅速化を主要政党間で取り決めておき、自衛隊の日頃からの(想定される事態に対応した)訓練や、特別別措置法が提出された直後から調査、情報収集などができるようにしておくことにより、十分補完できると思っています。

そして、「世界のどこかでの国際社会の重要な一員としての」貢献は、このように当面は特別措置法で対応しながら、その間、我が国の安全保障と国際貢献の在り方を国民的に徹底して議論し、創憲や憲法改正により、自衛権、自衛隊(自衛軍)、国際貢献について新憲法に盛り込んでいくべきだと思います。

前回、前々回のメッセージと重複する内容になりましたが、吉良州司の考え方について、みなさまの理解を進めていただくために、このあたりは、十分な説明・解説をさせていただきました。ご不明な点やご意見について、メールをいただければ幸甚です。

吉良州司

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