吉良からのメッセージ

2017年5月10日

5月10日財務金融委員会での質問報告

先日の4月19日の経済産業委員会において、事業型インフラ・プロジェクトに対する新しい資金提供手段につき頭出し程度に触れた内容に関して、去る5月10日に財務金融委員会の質問に立ち、詳しい説明と具体的な提案を行いました。以下では、その要旨をお伝え致します。

事業型インフラ・プロジェクトの資金調達手段として、米国証券市場の「ルール144a」市場があり、この市場でプロジェクトの事業会社が社債を発行してプロジェクト資金を調達する方法を紹介しました。
米国証券市場SECでの社債発行は通常、社債内容にはかなり高いハードルの開示義務が課されていますが、「ルール144a」市場は社債の引受とその売買を
Qualified Institutional Buyer(QIB)という、一定の社債資産を持つ、プロの機関投資家に限定することを条件に、開示義務のハードルを低くし、社債発行のコストと労力を大幅に低減することにより、会社やプロジェクト事業会社が簡易に社債発行できる市場です。
この市場では、米国内外のプロジェクトの事業資金は勿論、会社の信用力を背景に一般的な社債発行も行われており、我が国でも商社、銀行、生保などが資金調達しています。
世界的に見ても、1990年から2010年までの21年間に主要国の多くが同市場から多額の資金調達を行っています。
この間、為替をUS$@112円とした場合、オーストラリア2358億ドル(約26.4兆円)、カナダ1209億ドル(約13.5兆円)、ケイマン1894億ドル(約21.2兆円)、フランス1435億ドル(16.1兆円)、オランダ1254億ドル(14.0兆円)、英国4136億ドル(46.3兆円)と米国以外76か国の合計が2兆657億ドル(231.4兆円)、米国は、3兆3716億ドル(377.6兆円)で、米国を含む世界全体では5兆4373億ドル(609.0兆円)の調達が為されています。
因みに、日本は、16社22案件で191億ドル(2.1兆円)、ドイツ242億ドル(2.7兆円)です。
我が国としては、まだまだ拡大の余地があると思っています。

これらの概要を説明した上で、1998年、実際に自分自身がこのルール144aを使うため格付け会社のMoody‘sやS&Pにプレゼンに行き、社債の格付けを取得し、メキシコの484MW大型複合火力発電案件のプロジェクト資金(US$2億3500万ドル、約263億円)を調達した経験を紹介しました。また、ほとんど同じスキームのメキシコ541MW複合発電プロジェクトもルール144aで調達(US$3億3500万ドル、約375億円)しようとしましたが、発行直前にロシア金融危機が起こったため、同市場では調達できなくなり、急遽、スイスの制度金融を中心にした資金調達に切り替えた経験も披露し、同市場のリスクについても説明しました。

この経験があるだけに、世界的に金融市場が混乱していない時には、「ルール144a」市場での、混乱している時には制度金融での資金調達という役割分担ができれば怖いものなしだと思っています。それに加え、我が国の制度金融機関である国際協力銀行(JBIC)は、昨年のJBIC法の改正により、新たにプロジェクトの社債引受業務もやれるようになったので、JBICによるルール144a市場での社債引受も検討すべきだと提案しました。JBICがルール144a市場での社債引受と、プロジェクトに直接資金提供できる両方の役割を担えるようにすることで、日本企業の事業型プロジェクトを資金面で後押しすべきだと提案したわけです。

これに対して、経済や金融市場の動向、またビジネスにも造詣の深い麻生副総理からは、いとも簡単に「基本的に問題ない」との答弁を戴きました。今後、日本企業による世界各地におけるプロジェクトの資金調達手段として、JBICによるルール144a市場での社債引受が活発になることを祈念します。

この財務金融委員会質問の議事録はウェブサイトに掲載しましたので、こちらよりご参照ください。

質問内容には上記以外に、インフラ輸出への政府としての取り組みと日本とインド間の原子力協定にも触れていますが、前者は割愛、後者については、外務委員会の質問内容の報告として、別途、お伝えさせて戴きたいと思います。