吉良からのメッセージ

2020年6月8日

マイナンバー制度を普及させる際の課題と解決方法

前回のメッセージでは、マイナンバー制度の、私が考える普及方法の概略についてお伝えしました。
今回は、マイナンバー制度を普及させる際の課題と解決方法について持論を展開します。技術論が多くなりますので、更には、自分自身もまだ勉強中なので、分かりにくい点もあるかもしれませんが、事前了解をお願いします。

まず、マイナンバー制度を普及させる具体案です。

デジタル政府化を一挙に進めるため、2011年のデジタル放送開始の時のように、政府、民間企業、報道各社が連携をして、3か月とか6か月とか一定期間中に集中して国民に理解と利活用を呼びかける必要があると思っています。また、その期間中、特にピンポイントで、理解と手続きを促進するため、一日限りの休日「マイナンバーの日」を制定してはどうかと思っています。
その日はstay homeを原則とし、NHKを中心に民放にも協力してもらい、一日中、マイナンバー制度の機能や利便性、その利活用方法を理解してもらいます。同時に、実際使えるようになるための手続きのやり方を説明し、住民票、公的医療保険、家族構成(扶養家族や児童手当把握のため)、年収、年金、マイナンバー制度上登録する指定口座(給付金などの振込先口座にもなる)、等等をマイナンバーに一元化するための諸手続きを一挙に完了させてしまうのです。
また、スマホ利用者に対しては、政府がつくる「マイナンバー制度アプリ」(注)を通して理解を深めてもらうと同時に、制度の手続きを一挙に促進できると思います。勿論、それに先立って政府と各自治体による広報も必要かつ重要なことは言うまでもありません。
尚、マイナンバー制度の各種手続きや利活用に苦労する可能性が高い高齢者に対しては、「マイナンバーの日」に限らず、自治体行政職員と失業中の若者を「マイナンバー普及員」として雇用し、理解と手続きの支援をしてもらうことも考えるべきだと思います。

マイナンバー制度普及の際に最も問題となるのは、年収把握と指定口座の変更時の対応だと思います。

繰り返しで恐縮ながら、私も現在勉強中であり、具体的各論や各種課題の具体的解決策の詳細については、これから案をつくっていくつもりですが、私は、原則として「全住民確定申告制度」(正確には国内に住民票を有する全ての人)とすることで、年収把握と指定口座変更の問題を解決できるのではないか思っています。
会社員や公務員などの給与所得者は、法人組織が本人に代わって源泉徴収し(いわゆる給与天引き)、年末調整の計算、手続き、還付までやってくれています。また、給与所得者でも年収2000万円以上の人などは既存制度下でも確定申告しています。社会全体の労力・手間・コストを軽減するために、これらの制度はそのまま活かすこととします。法人組織に属していない個人事業主やフリーランスなど事業所得を得ている人、申告すべき所得がない人、また、収入はあるが、課税水準以下の所得であるために結果的に申告していない人(本来は住民税徴収のため市町村は全ての住民の所得を把握しているはずだと思っていましたが、現実問題としては、住民税非課税世帯を中心に、所得把握できていないケースが多くあるとのこと)には、極めて簡易な確定申告をしてもらう制度です。
極めて簡易な方法にするためには、(制度開始の年は大変な困難を伴いますが、一旦スタートして税務当局及び基礎自治体の市町村により前年の所得把握ができている前提で、税務当局または市町村が予め申告内容をマイナンバーに想定入力しておき、本人はその記入内容に問題があれば修正し、なければ、確認するだけとするような、極めて簡易な方法にすべきだと思っています。こんな方法では正確な所得把握などできないのではないかとの反論があろうかと思います。確かにその通りです。
しかし、この簡易確定申告の究極の目的は、低所得者の正確な所得把握をしての徴税目的ではなく、社会のセーフティネットとして、緊急時に支援金を給付するための、つまり、ある水準以下の所得であることを確認するための確定申告だからです。そのため、低所得者にとっての確定申告の目的は、いざという時の支援対象となる所得水準であることを基礎自治体に把握してもらうことと、支援金給付のための指定口座の登録にあるのです。

また、低所得者以外の個人事業種やフリーランスの方にとっては、今回のコロナ禍による大幅収入減時の支援金を迅速に受け取るために、毎年毎年の所得を申告しておき、指定口座を登録しておいてもらうのです。
更に、ある時期には源泉徴収される法人組織に勤めていても、その後に転職や失業中となる可能性もありますので、米国の社会保障番号制度のように、普段は源泉徴収される法人組織の給与取得者も年末調整の税金還付だけは個人で申告するようにすべきだと思います。前々回お伝えしましたように、私も米国駐在時代、普段は会社が源泉徴収するのですが、IRS(歳入庁)から直接通知が届くこともあり、税金還付の手続きだけは、個人でやっていました。

上記の制度を採用、移行する際は、相当な困難が想定されますが、欧米諸国はもちろん、中国や韓国にも大きく後れをとっているデジタル政府化を一挙に実現していくためには、国民の理解を得ながら、政府として大英断し、断固としてやり抜く覚悟が必要だと思います。

(注)政府がつくる「マイナンバー制度アプリ」について

マイナンバー制度の理解を深めてもらい、諸々の手続きを早急に進める具体的方法として、

(1)政府と基礎自治体が、制度の広報を兼ねて、内容の説明と手続きの仕方を盛り込んだパンフレットをつくり配布する。
(2)NHKや民放を利用して、ある一定期間、マイナンバー制度の説明と手続きを促し続け、その内の一日は上記のごとく「マイナンバーの日」とし、集中的に取り組む。
(3)コストの抑制と迅速性を考えると、スマホを使える人向けには、アプリによって、説明し、アプリを使って手続きをしてもらう。

と大きく3つの方法が考えられると思います。

政府としてもスマホ利用者にはアプリを通して理解、手続きを促進するのがコスト上も手続きの受理、処理上もベストだと思いますので、そのようなアプリづくりに早急に着手すべきだ思います。

吉良州司