96年12月 ニューヨーク便りNo.3

新年明けましておめでとうございます。

日本は昨年初冬早くも雪に見舞われるなど例年より寒いやに聞いておりますが元気でお過ごしでしょうか。
当地は昨冬ものすごい大雪の連続で12月半ばには、我が家の庭に家族5人全員が入れる鎌倉を作っていたのですが、今冬は前線の到来が気温の比較的高い日と重なる為、雪にならず雨が多い冬となっています。雪景色の美しさを思うと雪を願わぬでもありませんが、一方雪掻きの大変さを思うとなんとかこのままの冬であってほしいと思う今日此の頃です。

さて、昨年の我が家の状況をお知らせする意味で、些細且つ庶民的な内容ではありますが、我が家の7大ニュース(解説付)と惜しくも選考からもれた3ニュース(タイトルのみ)を御報告させて戴きたいと思います。

米国自宅近く 娘たち3人のサイクリング

1.家族みんなでイエローストーンへ !

昨年の夏休み、家族皆でワイオミング州のグランドテイートン、イエローストーン両国立公園に旅行に行きました。大自然に触れ、ハイキングを楽しみ、また多くの野生動物に接することが出来るなど思い出に残る素晴らしい旅行となりました。

2.弟の卓司がニューヨークに!

昨年9月、日本から弟の卓司が遊びに来てくれました。子供達も大喜びで、一緒にニューヨークを観光し、楽しい日々を過ごしました。この期間中、三女のさちこは「卓おじちゃんがいい」と言って、お父さんの手を振り払い、卓おじちゃんと手をつないでいました。楽しい日々の中に潜むちょっぴり淋しい物語です。

3.ゆみこ サッカーチームで大活躍!

次女のゆみこが町のサッカーチーム(Ridgewood Soccer Association)に入会し「サッカーが一番好き」と言う程熱中し始めました。毎土曜に練習、試合があるのですが、「ゆみちゃん 頑張れ!、ゆみこ そこだ! そこでシュート!」と家族も一緒になって熱中・興奮しています。
アメリカ人のお父さん・お母さん達もかなり興奮して応援するのですが、我が家もみんな負けず劣らず気合の入った応援をしています。因みに、子供達とその友達と一緒にサッカーをしていたお父さんは年を忘れて「いいカッコをしよう」と思った結果、左足くるぶしの骨にひびをいれてしまいました。本人には気の毒ですが、はっきり言って“笑い話”です。

4.綾子 全校代表に!
長女の綾子は日本人学校ニュージャージー分校の最高学年ですが、1年生の入学式や現地校との交流会では全校生徒代表として挨拶、また運動会や全校学習発表会では司会を努めるなどこの1年大活躍をしました。本人は主役になることの楽しさを覚え、大きな自信をつけました。

5.さちこ ナーサリーに通い始める!

さちこがナーサリーという保育園に通い始めました。アメリカ人の先生なので家でも英語で話始めるかな?と思いきや、否「さっちゃん、日本語の先生の方がいい !」とは本人の弁。やはりお父さんの子供に間違いなさそうです。それでも楽しそうに通っています。

6.千代美がPTA役員に!

千代美が分校のPTA役員を努め、新校庭の遊具建設の為の資金集めバザー開催など大活躍しました。これまで、いつも小さな子供がいた為、そのような役割を担ったことはなかったのですが、この初挑戦にさちこを抱えながらもよく頑張りました。

7.吉良家にもコンピューターブーム到来!

東京にいる時、割り当てられたノートブック型のパソコンは「吉良さんの文鎮」と呼ばれ、書類の重しとしてしか活躍しておりませんでしたが、コンピューターの本場アメリカに来て状況は一転。今ではパソコンなしでは生きていけない身体になってしまいました(かなり大袈裟ではありますが)。ゆみこも宿題の日記やレポート作成にパソコンを使いますし、家族のほとんどみんながパソコンに親しむようになってきました。ただ我が家にも一人だけ取り残されている大人がいます。その人はサラリーマン川柳の中で「部下帰り こっそりさわる コンピューター」という句が一番好きだそうです。

8.さちこも一人前に! <やっとオムツが取れる!>
9.綾子・ゆみこ テニススクールに通い始める! <ピアノに続く姉妹揃っての習い事>
10.州司 ブラジル出張! <11年ぶりの里帰り>

本年も皆様にとって素晴らしい年でありますよう心よりお祈りしております。

1997年1月元旦 吉良州司・千代美(TEL 1-201-612-7330)
綾子(11歳、日本人学校6年生)   ゆみこ(10歳、現地校4年生)   さちこ(4歳、ナーサリー1年目)

追伸

年賀の挨拶状を書いた2日後にペルー・リマでゲリラによる日本大使公邸襲撃事件が起こりました。

人質の中には小生の無二の親友で、毎日ファックス、テレックス、電話をやり取りしながら一緒にペルーやエクアドルなどのプロジェクトを追求している会社の同僚でもある山本為之さん(“為ちゃん”と呼んでいます)が含まれています。また、小生がリマに出張する時いつもお世話になり、誰よりもペルーを愛する先輩・佐藤店長も、そして、この二人をいつも助けてくれる日系ペルー人社員Mr.Shiromaも人質になったままです。
この追伸を書いている今日現在まだ三人とも開放されておらず、正月までに開放されていれば本当に「新年明けましておめでとうございます」なのですが、長引く場合は「おめでとう」とも言っておれず、そのことを付記したいと思います。

自分は今、今度の事件に直面して、自分の人間としての弱さ(但し、人間らしい弱さ)を痛感しています。

ダッカの日航機乗っ取り事件の時は、その「超法規的措置」につき、連合赤軍を憎むが故もありますが、日本政府の弱腰(犯人の言いなりになってしまうこと)に疑問を持ったものでした。でも、あの事件の時は人質の中に自分の知人はいませんでした。

今回、家族ぐるみ生涯の友であり、また兄とも仰ぐ親友がその火中にいるとなると、ゲリラ500人規模の釈放という超法規的措置であれ、国家予算の半分、いや全部を身代金として払ってであれ、とにかく如何なる手段であれ、人質を一人も死傷に至らしめることなく解決してほしいと願わずにはおれません。

自分が今住んでいる米国の政府は「テロには絶対屈してはならない。ゲリラが報われてはならない」と一切の譲歩をするなと言っており強攻策にも備えているようですが、「余計なこと言うな!するな!アメリカは引っ込んでおれ!」と叫ばずにはおれません。北風と太陽の話ではありませんが、米国の「自分の価値観が世界の価値観であるべき」といった強気一辺倒の考え方、やり方がイスラム世界や中南米のゲリラをして米国を敵視し、テロを頻発させる原因かもしれません。その意味で以前「弱腰」と映っていた日本政府の「人命尊重」「人命第一主義」「人間の命は地球より重い」といった考え方、対応は素晴らしいものだと思い始めています。

今は一刻も早い人質の解放、佐藤さん、城間さん、為ちゃんの無事をただ祈るばかりです。

1996年12月21日   吉良州司