真相 参院選候補擁立の舞台裏

(編集部より)2007年夏、参院選挙のメルマガ2本目。選挙に勝つためには、どういう政策を、どういう有権者にアピールして、どういう層から票を入れてもらわなければならないかを力説しています。選挙に勝つためのこの構造自体は、今もまったく変わっていないことに驚かされます。

みなさんこんにちは、吉良州司です。

お元気ですか。

前号では、私の「参院選への想い」と題して、なぜ矢野大和さんなのかをお伝えさせていただきました。今号は、「<真相>参院選候補擁立の舞台裏」と題して、報道を騒がせた要因となった、野党陣営の分裂のことや、党本部とのことなどについて、これまでなかなかお伝えできなかった真相の部分をお話したいと思います。

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<真相>参院選候補擁立の舞台裏

【「今回は社民の順番なのに民主党が強引に候補を擁立した」というのは本当か?】

民主・社民間で、将来に亘って次は民主、次は社民というような順番で候補を擁立するという取り決めは一切ありません。3年前までの2回の選挙では交互に支援をした経緯はありますが、少なくとも今回や将来の取り決めは存在しません。

もっと早い段階から民主党の候補擁立に動きたかったのですが、現在の民主党本部が進める「全国的な野党共闘」の方針があった為に、民主党大分県連としては候補擁立を自重してきました。一方で社民党の意向は「今回は6年前に社民党の梶原敬義さんが失った議席の奪還選挙で、前回は民主党候補を推したので、今回は自分達の番だ」というものです。順番の取り決めはないのですが、全国的な野党共闘と大分の過去の事情を勘案すれば、社民党の意向を尊重しなければならないと思い自重していたのです。大分のことは私としても責任が持てますが、他の都道府県のことまで責任が持てる立場にはありません。その為、民主党本部の全国的な野党共闘方針を尊重し、他の都道府県への影響を最小限に抑えなければならないと思っていたからです。

それ故、民主党大分県連内の候補者選考委員会の候補者探しにおいて、矢野大和さんは当初から名前が挙がっていましたが、まずは「民主党が協力できる候補」で「勝てる候補」を社民党が出してくるかどうか見守る方針としました。もし、社民党が「民主も協力できる候補」且つ「勝てる候補」を出してきたならば、協力しなければならないと考えていました。

【社民党の公表は“見切り発車”】

元々、社民党との水面下の交渉、調整の中で、「お互いが合意するまで、候補者の公表はしない」という取り決めになっていました。それ故、社民党が現在の候補の打診をしてきた時、「民主党としては勝つことが極めて難しいと総合的に判断せざるを得ない。公表すれば、公の場で断らざるをえない。そうすれば、ご本人の名誉に傷がつくので、何としても公表は控えてほしい。公表しても民主党としては協力できない。」と申し入れておりました。しかし、「社民党の順番だ」「勝つ、勝たないは気持ちの問題。勝てないと思うから勝てない。勝てると思えば、そして、民主党も真剣に応援してくれれば勝てる!」と主張し続け、私たちの嘆願にも近い“制止”のお願いを振り切ってついに公表してしまいました。見切り発車してしまったのです。

何故、勝てないと判断するのか?については、いくつかの明確な理由があります。その理由をはっきりと説明すれば多くの有権者に私たちの判断を理解してもらえると思います。しかし、本人の名誉を傷つけるわけにはいきませんので「総合的判断」とだけ公表しています。また、私たちは、「民主党も応援できて、勝てる候補を新たに探すのであれば、それを待つ」とも申し入れておりました。社民党やご本人は「勝てる、勝てないは有権者が判断すること。(民主党の言い方は)失礼だ」と言っているようですが、民主党の、「公表しても協力はできない。ご本人の名誉の為に、合意ができない前の公表は避けてほしい」という申し入れや、(合意前に公表しないという)取り決めを無視して公表してしまったことはまことに残念でなりません。

【民主党と社民党の三者協力に関わる認識の違い】

民主と社民の間には、選挙協力に関わる認識の違いもあります。社民は「大分版三者共闘(連合を軸に民主・社民の三者が協力)が成立すれば勝てる」と主張しますが、民主は「反自民の三者共闘では勝てない。(利権とは一線を画した)健全な保守層や広範な無党派層を取り込める候補でなければ勝てない」という認識です。

民主党が「誰々を推してくれ」と叫んでも、潜在的民主党支持者の全てがその人を支援してくれるわけではありません。民主党は「健全な政治が行われる為には政権交代が必要だ。政権交替があってこそ、政党間に競争原理が働き、お互いが切磋琢磨する緊張感のある政治、国民の為の政治が実現できる。その為には、自民党に代わって政権を担える健全な政党が必要。民主党がそのような政党に育ってほしい」と願う方々の期待感によって票を戴いている政党です。「いい候補」と「国民の期待に応える政策」を有権者に提示できてはじめて潜在的民主党支持者から票を入れてもらえるのであって、「いい候補」と「いい政策」のどちらが欠けても有権者の理解は得られず、選挙には勝てません。民主党の一番大きな支援者は「民主党支持層」ではなく「政権交代期待層」なのだという謙虚さが必要だと思います。

我々が自信を持って推薦できる候補でなければ、結局、政権交代期待層である潜在的民主党支持者には推してもらえません。「勝てる候補」という意味で疑問を持つ社民党候補を推してくれとお願いしても、この政権交代期待層が付いてきてくれないことを自覚しているからこそ、三者共闘が成立しても勝てるわけではないと主張しているのです。

【手順を踏んで矢野大和さん擁立へ】

社民党が2月5日に候補者名を公表し、民主が社民から支援要請を受けた後、私達は、「社民が出した候補の推薦は困難。他の候補を探すことを検討してほしい」と返事をしました。しかし、社民党は差し替えるつもりは全くないとのことでしたので、民主党として独自候補の擁立に動くことを公表し、その日の内に矢野大和さんに正式な出馬要請をしました。その後の経緯は新聞・TVで報道されている通りですので割愛致します。

【小沢一郎代表会見の衝撃】

小沢一郎代表には、事細かに情勢を報告していましたので、「社民党候補に一本化というような判断はしない。社民党本部には大分の難しさを何とか理解してもらい、分裂選挙の了承を取り付ける。そして全国に影響させないとの約束を取り付ける。その上で公認ではなく推薦する」という結論を期待していました。しかし下された判断は「大分選挙区において民主党の公認推薦候補は立てない。但し、立候補する人、それを応援する人を拘束することはできない」というものでした。

この判断は、民主党大分県連としては決して満足のいくものではありませんが、野党共闘で参院与党を過半数割れに追い込むという目的・手段を明確にした小沢一郎代表の立場を考えると、社民党に最大限配慮し全国的な共闘を壊さず、民主党大分の現場の手足までは縛らないというぎりぎりの判断だったと思います。このことはよく理解できます。

しかし、この判断を聞いた矢野大和さんや矢野大和さんの今後を心配する親族、友人達にしてみれば「民主党がハシゴをはずした」と思い、大きなショックを受けるのは当然です。その不安、不満を取去り、必ず勝つという自信を持ってもらう為には「どんなことがあっても矢野大和と生死を共にし、必ず勝つ」という民主党県連としての強い意志を示す必要がありました。私は「万が一の時は『離党』してでも矢野大和さんと生死を共にする」と本人に伝えておりました。幸い、私の単独行動にはならず、民主党県連の仲間達も、「矢野大和さん、吉良州司代表とともに自分達も戦う」と誓ってくれましたので、出馬記者会見では「民主党県連が全面的に支援していく」と力強く宣言することもできました。

【「私(わたくし)」を捨てての戦い】

今回の一連の民主党県連の判断・行動に対する強い反発と圧力、民主党本部との葛藤の中、それでも必ず勝たなければならないという使命感の下、さすがの私もベルトの長さを短くするほど痩せてきています。しかし、私は天に誓って「私(わたくし)」なく、ひたすら、日本と大分のことを思っての対応、闘いですから、精神的には全く動じることはありません。

しかし、「次のあなた(吉良)の選挙に影響するぞ!」との圧力は残念でなりません。なぜなら、私は社民党の各級議員の方々は人物的に立派で尊敬できる方々が多いと思っているし、教員や役所の職員など、本来社民党支持ながら、私と親しい、また私が敬愛する仲間たちがたくさんいるからです。しかし、私はこの圧力に対して次のように応えています。「誰も人から嫌われたくはない。自分の選挙の有利・不利だけを考えたら、何もしないほうが良いのかもしれない。しかし、自分は、『この参院選大分選挙区で必ず勝つ』という目的を達成し、責任を果たすことしか考えていない。自分の次の選挙などという私(わたくし)は捨てている」と。

「変革の時機は、何らかの既得権がある為に現状を変えたくないという組織・団体、個人の大きな抵抗にあうのは必定です。それだけに、選挙における支持拡大、または嫌われないことだけを意識するならば、そのような組織・団体が気に入らないであろう変革を唱えるには大変な勇気が要ります。しかし、私は、ひたすら『いい日本を創ってくれ』と願う草の根支援者の方々の支援のお陰で、誰はばかることなく発言し、行動することができます」と私は自著『選挙革命』の中で書いています。

今回の参院選は、これまでの私の選挙に引き続き、「既得権益者重視のしがらみ政治や古い殻を破ろうとしない政治土壌」と決別し、かけがえのない子孫の為、頑張る人がきちんと報われる為、新しい時代の『真に豊かな日本』を創る為の戦いなのです。

みなさん、お力を貸して下さい。これまで以上の力強いご支援を

お願い申し上げます。

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最後までお付き合い頂きありがとうございました。

このメールマガジンをごらんの皆さまにも、私たちの想いが伝わったとすれば幸いです。ぜひ、この「熱」を共有していただき、私たちの戦いにご支援をいただけますようお願い申し上げます。

吉良州司