予算審議の流れ

先週金曜日に、19年度予算案が衆議院を通過しました。未明までの攻防が行われましたが、今週は予算審議の流れをお伝えしたいと思います。

まず、予算を含めて法案の審議を行う場合には、提出者から趣旨説明を聴取します。趣旨説明は通常は委員会の場で行われることが多いのですが、重要議案は、本会議の場で行われます。その中でも予算案は、総理大臣の所信表明演説とともに、財務大臣が召集日もしくはその直後に財政演説を行い予算についての説明をします。また予算案は、国会初日に予算委員会に付託され、委員会での趣旨説明、審議となります。

委員会審議が開始されると、慣例として総理以下全閣僚が出席して「基本的質疑」が2日間ないし3日間行われ、その後は質問者が要求する大臣が出席して行われる「一般的質疑」が行われます。予算審議の過程では、予算関連の質問は本旨としてもちろんのこと、国政に係る全般についての質問がなされ、大臣や議員の資質を問うという名目においてスキャンダル追及がされることもあります。

審議が大詰めになってくると、2月20日過ぎには公聴会が1日半行われ、その後各分野についての詳細な審議を行うために、8つの予算分科会がそれぞれ1日半開催されます。これらを経て、最終的には再度総理以下全閣僚が出席して総括締めくくり質疑が行われ、委員会で、最終的に賛否についての討論、採決が行われます。

委員会で議決された予算案は、本会議で再度賛否について討論が行われ、記名採決(全議員が、記名した札を投票する方式。賛成なら白札、反対なら青札を投じる)が行われ、参議院に議案送付されます。

例年、1月20日前後に通常国会が開会され、そこから2月終盤~3月初旬までかけての審議で、土日休日や公聴会、分科会等の日程を除き、また残りの日程で、時事の重要課題に課題を絞っての集中審議が行われることもありますので、予算の議論は、衆議院では正味20日前後でしょうか。参議院での審議を含めても、実質的な審議期間は、1ヶ月強でしょう。

今回は、野党側から政治とカネの問題などについて、もっと委員会での審議を尽くせという要求をする中、与党側が既に昨年と同水準の審議時間を確保しているとして押し切り、いわゆる世に言う「強行採決」によって委員会採決をしました。

3月2日夜に始まった衆議院本会議での予算審議が、3日未明までずれ込んだのは、野党が全てにおいて(予算案の審議にも)優先して行われる解任決議を緊急動議として提出したためです。内閣や、大臣の不信任決議案や委員長などの解任決議案の審議は、緊急性を要するとして、全ての審議に優先して行われます。解任決議等は、趣旨説明、討論の上記名採決が行われるため、1議案提出すれば少なくとも1時間ちょっと程度は費やすことになります。それを連発すれば、当然その分予算案といえども審議にとりかかる時間が遅くなるということになります。金曜日には、予算案の審議の前に、予算委員長の解任決議案、総務委員長、財務金融委員長の解任決議案(財務金融委員長の決議は議場での協議により取り下げ)が提出され、さらに予算委員長解任決議案の提出者が長時間演説(フィリバスター。合計2時間弱演説しました。)によって、審議時間をのばしたことも審議が長時間化した原因でした。

憲法60条の規定で、「(予算案を)衆議院が議決してから30日以内に参議院が採決しなければ、衆議院の議決を国会の議決とする」という旨が定められているため、3月2日までに衆議院での採決が行われれば、もし何かあっても、年度内に予算が確実に成立(自然成立)するということになります。

とはいえ、通常の与党は衆参両院で多数を占めているわけですから、本気になりさえすれば何とでもなるのですが、確実を期そうとすれば3月2日中の採決にこだわることになります。

衆議院での採決が行われた後、参議院でほぼ同じ過程によって審議が行われますが、もし衆参で違う議決がなされた場合、たとえば参議院では野党が多数を占めていて衆議院で可決した予算案を否決した場合などには、両院協議会が開かれ、議院同士の話し合いが行われます。ここで話がつくことはまれですので、先ほどの憲法の規定にあるように衆議院の優越によって原案通り自然成立となります。

以下、おさらいとして流れを振り返っておきます。
1. 本会議での財務大臣による財政演説
2. 予算委員会付託
3. 予算委員会での趣旨説明
4. 基本的質疑実施(全閣僚出席)
5. 一般的質疑(質問者が要求する閣僚が出席)
6. 公聴会実施
7. 分科会実施
8. 総括締めくくり質疑実施(全閣僚出席)
9. 討論・採決
10. 本会議において討論・記名採決
11. 参議院へ議案送付
12. 参議院予算委員会での審議
13. 参議院での可決 →予算成立
14. もし参議院で否決された場合には、両院協議会を開催して協議
15. 両院協議会での協議が成立しない場合でも衆議院の議決後30日を経れば、自然成立