問責決議案について

あけましておめでとうございます。今年も宜しくお願致します。

早速ですが、新年を迎える一方で、臨時国会はご承知の通り最終盤を迎えています。11年ぶりの越年国会の目的、争点は言うまでもなく“新テロ特措法”です。この法案をめぐり、与党は衆議院の優位性を保証する再議決権を行使し可決させようとし、一方野党は、再議決の対抗策として参議院での“問責決議案”をちらつかせています。
あたかも野党側の「伝家の宝刀」のように報道されている「問責決議案」とはどのようなものなのでしょうか。今回はこの「問責決議案」についてみていきたいと思います。

国会は、憲法に基づき立法権を司ります。その他、裁判所の司法権、内閣の行政権があり、三権が分散して別々の機関に与えられているのは、それぞれが牽制しあい、権力の暴走を防ぐという趣旨からです。立法府たる国会で行われる行政権への「内閣不信任決議案」の審議は(内閣信任決議案の審議も)そのひとつです。内閣不信任決議は、憲法69条に定められているもので、不信任案の可決もしくは信任案が否決された場合には、内閣は10日以内に総辞職あるいは衆議院の解散を行わなければなりません。
 
一方、今回の話題の問責決議案ですが、憲法やその他の法律の規定に基づくものではありません。主に参議院で衆議院の不信任決議案の代替として提出されるもので、内容はたとえば、閣僚などに対してある事案(不祥事等)に対しての責任を問うというものです。当然ながら戦後これまでほとんどの時期は衆参ともに政権与党が多数を維持していましたので、これが可決されるということはまずありませんでした。逆に言うと、その戦後体制下で問責が可決されるということの意味は非常に大きかったということです。可決された例は、戦後提出された37例ある閣僚・委員長の決議案の中で、1例のみ(1998年に起きた防衛庁調達実施本部背任事件の際の額賀福志郎防衛庁長官〔当時〕に対するもの)です。このときは、ことの重大性を受け止め、額賀氏は長官を辞任しています。

しかし、現下のいわゆる「ねじれ国会」では、野党が可決させようと思えばいつでも可決できる問責決議は、従来と大きく質が変わってきているのではないでしょうか。問責を連発することでその威力を低下させることにもなりかねませんし、元来法的な拘束力がない決議なだけに、野党も提出には細心の注意を払う必要があるでしょう。
今回の再議決、問責決議を機に、衆議院のあり方、参議院のあり方、そして国会運営のあり方について、国民全体で考える必要があるのではないでしょうか。