英国ジャーナリストの方々との意見交換会(朝食会)を行いました。

英国ジャーナリストの方々との意見交換会を行いました。この意見交換会は経済広報センター(日本経団連傘下の財団法人)主催で在英国の有力ジャーナリストを招聘し首相や閣僚などの主要政治家、企業トップなど各界要人との面談・インタビューを通して、日本の経済や産業の実態、政治や社会の動向などについて理解を深めてもらうというものです。

今回招聘された英国ジャーナリストは、フィナンシャル・タイムズ紙 経済担当論説委員のマーティン・サンドゥブ氏、ガーディアン紙 エコノミックス・コレスポンデントのフィリップ・インマン氏、ウォールストリート・ジャーナル紙 欧州地域編集長のサイモン・ニクソン氏、デイリー・テレグラフ紙 副編集長のジェレミー・ワーナー氏の4名です。

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吉良州司も同僚議員の山口つよし衆議院議員と共にこの朝食会に招かれ、積極的な意見交換を行いました。その席で冒頭、吉良州司より基調挨拶を行いましたのでご紹介致します。

『皆さん、日本によくお越し下さいました。私は衆議院議員の吉良州司と申します。現在民主党の外務部門会議の座長をしております。
今日は外交と経済が中心の話になると思いますので、外交についてまずお話し致しますと、現在中国をはじめとする東アジアの中でパワーバランスが大きく変化していますので、この変化の中で日本及び東アジアの安全保障を如何に確保していくかということが日本にとっての最大の課題と考えます。
個人的な見解ですが、今、中国は飛ぶ鳥を落とすような勢いがある中では、日本と米国がきちんと日米同盟をより強化していくことで日本の安全及び東アジア及びこの太平洋地域の安定を守っていかなければならないと考えておりますが、個人的な長期的なビジョンとしましては、日本が自主防衛力をより強化していく、これはアメリカと離れるということではなく、日本自身の防衛力を強化する中で日本独自の外交の余地を確保していくことが重要だと考えております。その背景にあるのはパワーバランスの大きな変化がある中で、アメリカの相対的地位が今後も恐らく下がっていくであろうと予測されます。また中国は正に今が絶頂で20年経たないうちに、中国も13億人の人口が高齢化を迎えることに加え、中国の場合はまだ社会保障も行き届いていない中で下降線を迎えますので、そういう30年、50年それ以降を見据えた日本の外交防衛環境を整えることが重要です。短期・中期には米国との日米同盟をより深め、長期的にはもちろんアメリカとの同盟を維持しながらより自主防衛の比率を高めていくことが必要だと考えます。
経済について言えば、日本は高度成長時代が終わり、今は低成長というか先進国の中で唯一横ばいの経済を余儀なくされていますが、それを打開するためには国を開いてFTAやEPAは勿論ですがTPPにも積極的に参加をして、ここで日本自身が世界経済の中のルール作りに積極的に関与することが重要だと考えます。そういう中でTPPという枠組みは、環太平洋地域における経済版の常任理事国と言える、ある意味では経済的なルールを決めていく枠組みになっていくと考えますので、ここに参加することは極めて重要でここに参加することでルール作り及びアジアの活力を取り込んでいくことが必要と考えております。』

この挨拶の後、約1時間30分双方より、「中国の台頭、自由貿易、福島第一原発の収束について、日本政府の情報公開の在り方、震災後のサプライチェーンについて、行政改革、日本の財政運営、社会保障改革」と大変幅広いテーマに渡り質問があり、それらについて大変熱心な意見交換が執り行われました。
質問について感じたこととして、日本のマスコミは普段から政局に関する質問が多いことに比べ、英国ジャーナリストは現実を見据えた質問が多かったことです。加えて、特に新鮮だったことは、日本のマスコミは年金問題について年金支給額をカットすべきでは?などという質問自体をタブー視し、あまり話題に上がりませんが、英国ジャーナリストからは遠慮なく「年金支給額のカットはするのか?」という質問や、「ヨーロッパではオバマがリビア問題、ロシア問題でヨーロッパも負担をシェア―せよと言っていますが、アメリカのヨーロッパ離れが進んでいる面もあり、日本も防衛力を高めなければならないのでは?日本の防衛費はGDPの1%以下だったと思うが財政が厳しい中でさらなる防衛力を高めることは難しいわけですよね?」と外交安全保障分野に関しても日本のマスコミが追求しない様な質問が多くありました。 

やり取りの一例を上げますと、
Q『震災後、サプライチェーンの脆さ、同時にグローバルサプライチェーンでも日本の脆弱性が明らかになった。それが製造業の海外移転をさらに促す可能性に加え、チャイナ+ワンという考え方があるが、外国企業から見ればジャパンプラスワンではないか?下手すると、ジャパン抜きでプラスワンだけが1人歩きする可能性もあるが、そもそも日本はコスト構造が悪いモノづくり脱却する時代になっていると思わないか?』という質問に対して

吉良州司より、『そのコメントのかなりの部分を共有しますが、2007年の日本の貿易収支と所得収支を見ますと、日本は貿易収支より所得収支の方が大きい国となっている。07年の貿易収支が12兆円で所得収支16兆円です。海外投資に対する配当は、日本企業が海外に工場などの設備投資をしてそこからの配当なので、モノづくりを完全に脱したわけではないが、モノづくり貿易収入よりも投資による収入に少しずつ移行しつつあるということは事実だ。但し日本人のメンタリティは何かを自分で直接、手で作っていないと、それが日本民族のDNAのようになっているから、より技術中心になった上で、今後も日本はモノづくりにはこだわり続けるし、政府としても支援し続けるべきだと考えます。むしろ今回の震災でグローバルサプライチェーンの問題が出てきたが、それは言いかえれば、日本が世界のサプライチェーンの中で如何に重要な地位を占めていたか再確認されたことでもあるのではないでしょうか。』と答えました。
その他にも記者の方々から日本の政治、経済状況、財政状況、東アジア情勢にも精通している専門的な質問が多くなされ、その答えも含め全て紹介したいのですが、全部で1時間半にも及びますのでいくつかの質問のみ以下に列挙致します。

・ 民主党は家族に優しい政策を進めようとしていますね?子供手当ももっと支給したかったんですよね?保育所はどうするのか? でもその財源はどうするのか?
・ 財源問題ではどんな補助金をカットするつもりか?
・ 歳出削減できることは削減できればいいと思うが、一方で必要なことは支出も増やさなければならない。対GDP200%の財政赤字は危険な状態だが、今後どうすべきだと思うか?
・ 一般会計と特別会計は、毎年存在するのか?そもそも特別会計とは何か?
・ 若い労働者の賃金より高齢者の年金受給額の方が多いというのは、問題ではないか?
・ (医療問題では)例えば、健康保険の高齢者の自己負担を増やすことも考えられますよね。
・ (政治主導について)民主党はもはや統治が出来ないほど官僚を疎外してしまったと思うが、これからどのようにしていくつもりか?
・ (菅さんから)新しい首相に変わっても、また新たな問題が起こるのでは?
・ 日本では二大政党制がまだ成熟していないのではないか?
・ 中国は資源外交をやっているが、日本は資源がないことを考えると、貿易面で何らかの影響が出てくるのでは?
・ お金も日本国内にしか回っていないというのが不思議なのですが、どうやったら生産的な投資にお金が外に向かっていくようになるのでしょうか?居心地良く日本にしかいないお金が。
・ 中国はパキスタンやインドにそれぞれはカウンターバランスを考えていて、パキスタンに中国は港湾を作ろうと考えたりしておりますが、日本はどんな外交スタンス(カウンターバランス)をとるべきと考えるか?
・ 中国は人口的にも世界の3割であり、経済力も世界の3割まで目指そうとしているのではないか?ある意味そのことに理解を示してもよいのでは?
・ 東電に対してはどのような考えを持っているか?

早朝7:30スタートの9時終了予定だったのですが、予定終了時刻を過ぎてもジャーナリストの方々も興味津津という面持ちで、コーディネーターが終了ですとお伝えしても質問を続けておりました。既に予定終了時刻を10分以上過ぎた後、再びコーディネーターのスタッフの方が「Time is up!!副大臣を待たせる訳にはいきませんので終わりでーす!!」と叫んでようやく終了致しました。どうやら、そのまま副大臣との面談の時間が迫っていたということで強制終了させられ、最後に記念撮影を行い無事終了致しました。

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