行き過ぎた円安是正こそ物価高対策の本丸と主張 予算委員会にて
11月24日金曜日の予算委員会締め括り総括質疑にて「行き過ぎた円安是正こそ最良の物価高対策」と主張し、その実現を岸田総理に迫りましたので報告します。以下は委員会における質問内容です。総理の答弁はお決まりの官僚答弁の域を出ないので割愛します。
1.物価高の根本原因である行き過ぎた円安の是正が必要
現在、物価高対策として議論されている所得減税も、給付も時間差を経て将来的には必ず国民負担となります。ならば、将来に亘って国民負担なしか、負担の少ない政策を追求すべきです。
財政演説の中で鈴木財務大臣は物価高の原因は輸入物価の上昇だと明言しています。ならば、物価高の根本原因である輸入物価抑制、その具体策となる、行き過ぎた円安の是正が本筋です。
2.行き過ぎた円安は交易条件を悪化させ、日本経済にマイナスの影響をもたらす
行き過ぎた円安が日本経済にどれだけマイナスの影響を与るか、データで確認したいと思います。
資料1ページは、交易条件と景気との関係を示した図です。
日本経済の体質とも言えますが、輸出に対する輸入比率が上昇し、「交易条件」が悪化すると不景気になります。グラフでは1979年の第一次石油ショック直後が典型です。現在のように世界的物価高騰と円安がダブルで襲ってくると、不景気下における物価上昇、すなわちスタグフレーションに陥るリスクが高くなります。そうなると、賃金上昇と景気回復・経済成長という好循環は夢のまた夢となってしまいます。
3.企業努力により円高には耐えうるが、輸入は企業努力の限界がある。
資料2ページの上段の表は貿易取引の決済通貨を表したものです。
<日本からの輸出>
米ドル49.6%、日本円35.7%、ユーロ7.02%、その他14.7%
<日本への輸入>
米ドル69.4%、日本円23.7%、ユーロ3.2%、その他3.7%
輸出総額に占める米ドル比率は約50%で、円建て比率が36%もあります。これは輸出企業の血のにじむような努力による現地生産、および、世界的サプライチェーン構築による親子間での円建て決済、また、高い競争力を持つオンリーワン企業による強気の円建て契約など、円高耐性、円高に耐えうる力を備えている証です。
一方、輸入総額に占める米ドル比率は約70%あり、原油などは円建てでは売ってくれませんので、企業努力では如何ともしがたく、米ドル決済を受けるしかありません。
このように輸入の20%分だけ米ドル決済が多くなるので、この分だけ見ても円高がいいのですが、現状はこの分が円売り、ドル買いになるので円安要因になります。
4.経常収支は決算上黒字だがキャッシュフロー上は赤字の可能性がある
あと一点注意を要するのは経常収支の現状です。資料2の下段をご覧ください。
<貿易・サービス収支>▲21兆3,881億円
<貿易収支> ▲15兆7,808億円 (輸出99兆円、輸入114兆円)
<サービス収支> ▲5兆6,073億円
<第一次所得収支> 35兆3,087億円 *海外投資から得た利子や配当等
<第二次所得収支> ▲2兆4,773億円 *政府や民間の海外資金援助等
<経常収支> 11兆4,432億円
貿易・サービス収支の赤字21兆円を第一次所得収支35兆円で補い、何とか経常収支を11.4兆円の黒字にしています。
ここで問題なのは、第一次所得収支の配当や金利収益は連結決算上、利益認識できますが、キャッシュフロー的には日本に還流していない可能性が高いのです。昨年は全体の64%相当が還流していないとの試算があります。
つまり昨年の第一次所得収支35兆円の内、22兆円は海外で再投資されており、キャッシュフロー上は国内への還流がないため、経常収支も10兆円を超える赤字である可能性が高いのです。企業でいえば黒字倒産です。通常、経常収支の黒字は円高要因ですが、実態は円安要因である可能性が高いのです。
5.電気代等の高騰の原因である化石燃料輸入は前年比増加分だけで15.4兆円増
資料の一番下の補足部分を見てください。
<補足> 輸入商品別では、原粗油(前年比 +6兆3,420億円[+91.5%]、数量:同+8.5%)、石炭(同+4兆9,902億円[+178.1%]、数量:同+0.2%)、LNG(同+4兆1,722億円[+97.5%]、数量:同▲3.1%。前年比増加金額15.4兆円)等が増加。
電気代、ガス代の高騰要因である原油、石炭、天然ガスの前年比・輸入増加分の合計15.4兆円、この増加分だけでGDP3%弱に相当するお金が対外支払に使われ、国内循環しないのですから景気がよくなるはずはありません。
6.政府と日銀が一体となって行き過ぎた円安の是正に注力すべき
総理は「政府と日銀は緊密に連携している」と答弁していますので、政府、日銀一体となって行き過ぎた円安の是正に注力すべきです。
為替レートが1割円高の135円になるだけで、国民負担なしで、補正予算の物価高対策費2.7兆円を大きく上回る国民の裨益があります。
7.現在の戦争を停戦にできれば、日本の輸入物価の価格抑制に繋がる
また、世界各地の戦争終結は、これ以上罪のない人々の犠牲をなくせることに加え、石油など我が国輸入物資の価格抑制に繋がります。
もちろん、現在の日本の国力、外交力、当事国への影響力を考えると、とても我が国単独で停戦の仲介役ができるとは思いません。それでも私は、G7広島サミットをウクライナ戦争停戦に向けた第一歩の場にすべきだと主張してきました。残されたG7議長国としての1か月、ウクライナ戦争、中東戦争の停戦に向けた旗振り役を本気でやってもらいたいと思います。
為替は生き物なので円安是正といってもそう簡単でないことは承知しています。しかし、異次元金融緩和を見直すことにより、行き過ぎた円安を是正すること、更には、停戦に向けて本気で旗を振ることを総理に求めます。
吉良州司