吉良からのメッセージ

2024年8月1日

パリ・オリンピック 阿部詩選手と男子バスケット対フランス戦敗北に思う

みなさん、猛暑が続いていますがお元気ですか。
しばらくのご無沙汰お許しください。
また、久しぶりのメッセージ発信なのに、政治や世界情勢関連ではなく、パリ・オリンピックを取り上げることについてもお許しください。

毎晩のようにパリ・オリンピックを見ています。柔道の判定への疑問など、お伝えしたいことは山ほどありますが、本メッセージでは、柔道の阿部詩選手の一本負けと男子バスケット予選リーグの対フランス戦の惜敗に共通する問題について、取り上げたいと思います。

この2つの敗北に共通するのは、「美しい柔道を追求した上での勝ち」「スポーツパーソンシップに則った、批判やブーイングを受けない美しいバスケットボール」を貫こうとして、結果的には「勝負に負けた」ということだと思っています。ある意味スポーツの世界では永遠のテーマ、課題なのかもしれません。

阿部詩選手は「技あり優勢」の状況でありながら、残り1分を切った段階でも尚果敢に攻めていこうとした矢先に一本を取られてしまいました。相手は、世界ランキング1位の実力選手、そして結果的には金メダルを取った強豪選手です。
勝負にこだわるなら、残り1分を切った段階では、守りに入れとまでは言いませんが、リスクのある攻めは控えながら守りを重視し、訪れるかもしれないチャンスが来たら一本を狙う、という姿勢で臨んでもよかったのではないかと思います。

日本の柔道は本当に美しい。日本選手の華麗な投げ技、素早い寝技は全ての人を魅了します。逃げまくりながら、訳のわからない「指導」なるものを相手に積み重ねさせて反則勝ちする「全くつまらない柔道」とは天地の差があります。
それだけに、圧倒的な強さを誇る阿部詩選手が「美しい日本の柔道」を貫き、「一本勝ち」にこだわったであろうことは容易に想像がつきます。しかし、技ありも取り、終始攻め続けていた阿部詩選手の3分間の素早い動きや果敢な攻めは充分に美しい柔道であっただけに、残り1分は「勝ち」にこだわってもよかったのではないかと思われて仕方ありません。

男子バスケットの予選リーグ対フランス戦も同様です。残り20秒切った段階で4点差開いていました。3点シュートを決められても勝てる状況だったので、「勝ち」にこだわるなら、残り20秒は日本選手間でパス回しを行い、時間稼ぎをしてもよかったのではないかと思われます。大量にリードされていながら決して諦めることなく、執念の大逆転に持ち込んだ日本選手の正確なシュートや硬いディフェンス(特に身長差がありながらリバウンドをよく取った)は称賛に値します。それだけに残り(正確には)16秒は勝ちにこだわっても誰からも後ろ指さされることはなかったと思います。但し、相手がフランスだったので、16秒間と言えども日本選手間のパス回しをして時間稼ぎをしていれば、大ブーイングを受けたであろうことは容易に想像ができます。

このように、一方では「勝ちにこだわるべきだったかもしれない」と言いながら、一方では、阿部詩選手も、男子バスケットも決して逃げることなく、卑怯呼ばわりされることのないように、最後まで美しい柔道を貫こうとし、また、あるべきスポーツパーソンシップや日本の美徳でもある武士道に則ったバスケットを貫こうとした姿勢には立ち上がって拍手を送りたい気持ちもあります。

それゆえ、人生をかけて勝ち負けを争うスポーツの永遠の課題だとあらためて考えさせられました。

吉良州司