主張・政策論

2012年1月31日

180回国会 衆議院予算委員会 2号

平成24年1月31日(火曜日)予算委員会

 

○中井委員長 これより会議を開きます。

 

予算の実施状況に関する件について調査を進めます。

 

本日は、外交(TPPを含む)についての集中審議を行います。

 

質疑の申し出がありますので、順次これを許します。吉良州司君。

 

○吉良委員 おはようございます。民主党の吉良州司でございます。

 

本国会、予算委員会のトップバッターを務めさせていただきますけれども、野田政権の応援団として質問をさせていただきます。

 

まず総理、総理は首相、また財務大臣は蔵相、外務大臣は外相と、相という字がついておりますけれども、この漢字の相という意味を御存じでしょうか。お聞きしたいと思います。

 

○野田内閣総理大臣 相というのはまさに大臣という意味だというふうに思いますが、資料でヒントをいただいております。

 

もともとは、語源は木の上に目ということでございますので、これはかつて安岡正篤先生の本で読んだ記憶がありますけれども、要は、高いところから遠方を見ながら判断をしていく、遠い未来をしっかりと見詰めながら困難を乗り越えて物事を判断するというのが、いわゆる相、大臣の役割であり、平の相国だったら、国全体を、遠くを見通しながら判断をする、そういう意味と理解をしています。

 

○吉良委員 ありがとうございます。

 

この意味を安岡正篤先生の本で私も知ったわけでありますけれども、この意味を知ったときは目からうろこでございました。今総理おっしゃったように、もともとは、木の上に登って遠くまで見通すことができる、視野広く将来を見通すことのできるリーダー、これが相ということでございます。

 

その意味で、野田政権の使命というものは、まずは震災復興、そして原子力事故からの一刻も早い収束ということでございますけれども、同時に、日本の将来のために、将来を見据えた上で、逆算して今何をすべきかということを考え、その意味で、総理が安心で持続可能な社会保障を実現していくために消費税について不退転の決意で臨む、このような総理の姿勢について私どもは支持をし、とことんついていきたいと思っております。

 

同時に、とかく閉塞感漂う我が国の状況において、経済社会に活力を取り戻していくということについて、私自身は、TPPへの交渉参加、これは不可欠だと思っております。

 

一点だけ補足させていただけるならば、私自身は党内の経済連携プロジェクトチームで事務局長を務めておりますので、この運営については公平中立を期してまいる所存でございますけれども、一方で、総理が私どもの党の提言を受けた上で関係国との協議を開始するという決断をしていただきました。そのことによって、外交上、カナダが動き、メキシコが動いたということがございます。

 

関係国との協議を開始したということは、一歩ではないかもしれませんけれども、〇・五歩、〇・七歩前進したというふうに思っています。その背景には、TPPに参加することについてのメリットについて考えていただいていたと思っております。

 

その意味で、TPP参加のメリットは何かということについてお聞きしたいと思います。これは総理でも国家戦略大臣でも構いません。

 

○古川国務大臣 お答えいたします。

 

アジア太平洋地域に位置する貿易立国であります我が国にとって、世界の成長エンジンであるアジア太平洋地域の成長力を取り込むことの意義は極めて大きいと考えております。

 

特に、我が国は、FTAAP、アジア太平洋自由貿易圏を構築していく、そういうことを目標にしているわけでございまして、そうした視点からこのTPPというのはAPEC地域に拡大することが目指されておりますので、このFTAAPに向けた地域的取り組みの一つだというふうに考えております。だからこそ、このTPP交渉への参加というものが重要ではないかというふうに思っております。

 

さらに、このTPPは、アジア太平洋地域における投資、貿易のルールを定めるということにつながっていく。これは、日本がこうしたルールづくりにやはり主導的な役割を果たしていくということで、極めて重要だと思います。

 

私は、この週末にダボス会議の方にちょっと行ってまいりました。世界の方々ともちょっと意見交換をする時間がございましたが、特にアジアの方から、日本がもう少しアジアの中でリーダーシップをとってもらいたいというお話をいただきました。やはり、二十一世紀の成長エンジンでありますアジア地域において、そのルールメーキングに日本が主体的に取り組んでいくことの意味は非常に大きいと思います。

 

具体的なメリットとして、例えば、高い関税が撤廃されることで、日本の輸出競争力を強化して、産業の空洞化が回避される、すなわち、国内の雇用が守られるということにつながる、また、ふやすことも可能であるということがありますし、模倣品や海賊版の拡散や技術流出を防止する仕組みをつくることで、海外における日本の正規品の販売を促すほか、日本からの技術を、輸出を確保することができる。さらには、投資、サービスに関するさまざまな規制の制限禁止等によりまして、日本企業のより自由な活動を確保することにより、日本の所得収支が増大し、国内雇用の拡大に寄与すること、そうしたさまざまな具体的なメリットが考えられると思います。

 

こうしたことをきちんと国民の皆様方にもお伝えをしていくということが重要になっているというふうに思っております。

 

○吉良委員 ありがとうございました。

 

今、古川国家戦略大臣からTPPメリットということについての説明を受けましたけれども、国民の皆さんに私なりに整理をさせていただいたTPP参加のメリットというものをこのパネルに書かせていただきました。

 

今、古川大臣からルールづくりへの参画等説明ございましたけれども、私がぜひ国民の皆様にもわかっていただきたいことの一つが、今説明ございましたけれども、TPP参加は空洞化につながってしまうという懸念が多くの人から提示されます。しかし、今大臣まさにおっしゃっていただいたように、私は、TPP参加により、空洞化どころか、少なくとも、日本企業がこの日本に本社を置き続けて、その拠点を海外に出していくというビジネススタイルをとる限りは、空洞化よりも雇用創出、雇用の維持につながる、このように思っておるところであります。

 

ここにもまたパネルを用意させていただきましたし、皆さん方のお手元にも、世界地図の中で工場が海外にある、鉱山が海外にあるという図がございますけれども、これはもう言わずもがなでありますが、日本は、多くの企業が海外に投資をし、そこで海外の現地法人が頑張ることによってそこで収益を上げる、それを日本国内に還元する。その海外から日本に送られる配当、金利収益等の収益があることによって、たとえ日本の、例えば本社の業績が国内マーケットだけでは弱かった場合も、その海外の収益が本社決算を補い、結果として国内の立地を維持し、そして雇用をつくり、また維持をする、そのような効果がある。そのことをあらわしたのがこの図であります。

 

実際、我が国は七年前から、実は貿易立国から、投資による収益、すなわち、金利、配当の収益である所得収支の黒字の方が貿易収支を上回るという貿易・投資立国になっております。

 

ちょっとこれも国民の皆様にもぜひ御理解いただきたいんですけれども、上の青い折れ線グラフは貿易収支の黒字の推移でありますけれども、下のオレンジ色からだんだん上がってきております、このオレンジ色の折れ線グラフ、これがまさに所得収支でございまして、これを見て明らかなように、我が国は、いわゆる貿易立国のみならず、貿易・投資立国になったと言えるというふうに思います。

 

残念ながら、二〇一一年につきましては、震災の影響、それによるサプライチェーンの寸断等があって、貿易収支が赤字になるというふうになってしまいましたけれども、このことは決して我が国の衰え、経済的な停滞を意味するものではなく、所得収支、配当収入があることによって、今申し上げました、企業活力を維持し、雇用、それから人材育成、そして研究開発、こういったものにつなげていける、こういう国になっている。それをもっと促進していくためにも、TPPへの参加が必要だと思うところでございます。

 

それと、なかなか賛成論として言われないことについて、もう一点、私の方で補足させていただきたいと思いますが、それは安全保障上の国益につながるという観点でございます。

 

また世界地図で、ペルシャ湾から日本に至る海上輸送路を書いたこのパネルもごらんいただきたいと思いますけれども、今回のTPP、米国が交渉参加をしており、そしてオーストラリアが交渉参加をしております。そしてブルネイ、それからマレーシア、ベトナム。南シナ海で中国とある意味では領土問題を抱える国々もTPPに参加しようとしております。

 

我が国が、我が国の生命線とも言えるこのシーレーン防衛、海上輸送路の安全を確保しながら東アジアの安全を守っていくためには、米国との同盟の深化、強化、これが不可欠だというふうに思いますし、特にオーストラリアとの関係強化も極めて重要だというふうに思っております。そういう意味では、政、経、軍、この三つにおいての、特にTPP交渉参加国の中でも米国と豪州との関係強化が重要だというふうに思っております。

 

また、これに加えて、今後は、ASEANプラス6を追求していく中で、インドとの関係強化も極めて重要です。それはもうこの図をごらんいただければわかるとおり、先ほども言いましたけれども、我が国のエネルギー供給ということを考えますと、中東から南シナ海、東シナ海、我が国に至るまでのこの海上輸送路の安全保障、アジアの安全保障は極めて重要であると思っておりまして、今申し上げた安全保障上の国益を追求するためにも、TPPへの参加、それによる米国、豪州等との関係強化が極めて重要であるということを私の方からあえて国民の皆様にもお伝えをしたいと思っております。

 

この安全保障についてでありますけれども、御承知のとおり、つい最近、米国が新国防戦略というものを発表いたしました。この中で、米国は世界的な米軍兵力を削減する、これは財政制約があるからでありますけれども、そういう方針の中で、私たちの日本のあるアジア太平洋地域は重視するという姿勢を打ち出しました。

 

米国との同盟深化を踏まえ、この地域の平和と安定のために、米国とどのような取り組みを行っていくのか、田中防衛大臣の所見をお聞かせいただきたいと思います。

 

○田中国務大臣 お答えいたします。

 

我が国は、米国の新国防戦略につきましては歓迎をいたすところでございます。

 

米国がアジア太平洋地域を重視する、そしてまた、先生御指摘のように、地域におけるプレゼンスを強化されるということでございますので、地域の平和と安定にとって大変重要であると認識をいたしております。

 

今後、昨年六月の外交防衛の2プラス2で合意いたしました米国との内容につきまして着実に実施をしていきたいと思いますし、防衛大臣といたしまして、日米同盟の深化、発展に努力をしていければと思います。

 

○吉良委員 ありがとうございます。

 

今、私申し上げました、ある意味で、米国そして米軍が私たちの生命線であるシーレーンを防衛してくれているおかげで我々は安定した暮らしができるわけでございますので、米国との同盟をより深化させることによって、またそれを補完する意味でも、私たちはTPPに参加することにより米国との関係強化をしていかなければならないと思っておりますので、外務大臣、防衛大臣、その辺しっかりと、米国との協力、また、先ほど言いました豪州、インドとの協力の推進というものをお願いしたいと思っております。

 

総理、きょうは時間が限られておりますので最後の質問になりますけれども、TPPへの参加、私自身は強く支持するものでございますけれども、TPPに限らず、高いレベルの経済連携を推進していくことは、我が国の国益に直結するというふうに思っております。

 

そのことを踏まえ、グローバル化する世界、このグローバル世界の中で、我が国が力強く生きていくためにどのような道を歩むべきなのか、総理の御所見をお伺いしたいと思います。

 

○野田内閣総理大臣 TPPを含めて、またグローバルな展開についてのお話でございましたけれども、私は、何かにチャレンジすることによってリスクは生まれると思います。一方で、何もやらないことによるリスクもあるかと思います。

 

一昨年の六月に我々は新成長戦略をまとめましたけれども、その中では、高いレベルの経済連携を推進するということを明記させていただきました。とかく韓国等に比べると周回おくれでございましたが、この高いレベルでの経済連携は、先ほど来吉良委員やあるいは古川大臣が御指摘のとおりの意義があると思うんです。

 

やはり日本が、これからまさにアジア太平洋地域の時代が参ります。大西洋の世紀からアジア太平洋の、まさに繁栄の中心が移りつつある中で、その中で、やはりルールづくりを含めて主導的な役割を果たしていくということ、先ほど来貿易・投資のルールづくりのお話がありましたが、安全保障の観点も含めて、アジア太平洋地域において日本がイニシアチブをとっていくこと、それがまさに大きな国益になると私は確信をしております。

 

その意味で、貿易・投資の関連でいうと、FTAAPの実現ということが大きな目標でありますけれども、TPPはその中の一つの道筋。ASEANプラス6もありますが、FTAAPの実現、アジア太平洋地域において自由貿易圏をつくること、これは日本にとって大きな国益になるものと思います。

 

もちろんリスクもあります。課題、農業再生との両立、そういうことをしっかりと、国民的な議論を含めて、最終的には国益の視点に立って判断をさせていただきたいというふうに思います。

 

○吉良委員 ありがとうございます。

 

総理の発言の中で私自身も共感をすることの一つが、なさざるの罪、リスクを恐れて虎穴に入っていかない。虎子を得んとすれば虎穴に入らざるを得ない。残念ながら人口減少という時代を迎えた我が国にあって、世界に打って出なければ、残念ながら、座して死を待つといいますか、衰退を受け入れざるを得ない。逆に、リスクはないわけではないけれども、かち取るべきものをかち取りに行く、守るべきは守るという覚悟と交渉戦略を持って世界に打って出るならば必ず活路は開ける、このように思っております。

 

そういう意味で、TPPへの参加というものは、ある意味では、党内議論でもたくさん出ました、懸念事項がたくさんあります。これについては、私ども、党として提言したように、国民への十分な情報開示、そして国民的な議論を踏まえて最終判断をしていただきたいと思います。

 

特に、そのときに、農業について懸念する声がたくさんあります。農業の強化、保護というものもこのTPP交渉参加と同時並行でやりながら、私どもは、競争に立ち向かっていく、世界の競争の中に身をさらすことによって、我が国を、我が企業を、我が国民を強くして繁栄を永続してまいりたいと思っておりますので、総理の相としての、遠くを見渡し将来を見渡す国のリーダーとしてのリーダーシップを期待いたしまして、私の質問を終わらせていただきます。

 

ありがとうございました。

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