主張・政策論

2008年6月11日

No.029 169回国会「衆議院 内閣委員会 22号」

⑪平成20年6月11日 内閣委員会
○岡下委員長代理 次に、吉良州司君。

○吉良委員 民主党の吉良州司でございます。
きょうは、泉国家公安委員長とそれから大田大臣に質問をさせていただきたいと思っております。
まず最初に、今回起こりました痛ましい秋葉原での通り魔無差別殺人事件についてでございます。
冒頭、亡くなられました七名の方、そして負傷されました十名の方に、心から御冥福そしてお見舞いを申し上げたいというふうに思っております。本当に二度とこういう痛ましい事件が起こらないように、それこそ全国民一丸となって対応していかなければいけない、このように思っております。
そこで、まず、泉国家公安委員長にお伺いいたしますが、これまで、こういう事件、この事件に限らず事件が起こったとき、現場において警官がとるべき初動、そして検挙に至るまでのもろもろの過程の中で、警察庁なり各県警なり、指針があるのかどうなのか。特に、その際の武器の使用について、今申し上げました初動から検挙に至るまでの過程での武器の使用を含む指針があるのかどうなのか、その辺についてお伺いしたいと思います。

○泉国務大臣 けさほど来、大畠委員からも今回の事件について厳しいお尋ねがございました。本当に、お亡くなりになりました方々に御冥福を祈りますし、十名の負傷された方々に、御回復が一日も早いことを祈る次第でございます。
お尋ねの何らかの指針みたいなものがあるかということでございますが、基本的には、一つ一つの事柄、例示なされましたけん銃の扱い方とか、どういうふうに使うかというような事柄については、きちんと警察庁が定めたものがございます。全体について、包括的なものについては、警察庁が特に出しておるということではございません。そのあたりにつきましては、各都道府県警察において、必要に応じまして執務資料等の中で明快な規定を置いておるという理解をしておるわけでございます。
なお、具体的な内容としては、一般論にやや近いわけですが、緊急配備を発令するということがまず最初でございます。できるだけ早く警察官やパトカーが現場に向かうということでございまして、警察官が現場に到着することによって、負傷者を救護する。それから、被疑者の早期制圧、検挙。そしてまた、被疑者が所持する凶器の種類に応じた対応を念頭に置いて、けん銃であればけん銃への対応、刀剣類であれば刀剣類への対応という、持っておる凶器に対応した措置をする。さらに、交通規制、目撃者等からの事情聴取をする。こういうことを一般的にルールとして我々は持っておるわけであります。
今回のことについて、今日まで我々が承知しておる限りでは、お亡くなりになりました方には大変申しわけないんですが、早期の対応ができたのではないかというふうに思っております。しかし、これから検討する中で、教訓になるものがあればそれは取り上げて、今後の我々の警備のあり方に十二分に生かしていく。そのことが、負傷されました方、お亡くなりになりました方に対する我々の務めだと思っております。
念のためにちょっとだけ時間を申し上げさせていただきますと、十二時三十三分に最初の一一〇番をいただきました。その後一分置きぐらいに二つ一一〇番をいただいておりまして、十二時三十五分に緊急配備をかけております。そして十二時三十六分、第一報をいただいて約三分後には、万世橋署の方から、被疑者を確保した、五名が刺されているという連絡をもらっておるわけであります。警察官が三名で被疑者を確保し、五名が刺されているという連絡をとっておるということでございまして、一応この時点までの措置は、先ほど申し上げましたように、現場対応に抜かりはなかったというふうに思っておるところでございます。

○吉良委員 私が最初に今質問させていただいた趣旨は、私が中学校三年のときだったと思いますけれども、浅間山荘事件が起こりました。あのとき、それこそ中三ながら、あらゆる新聞、あらゆる週刊誌、ありとあらゆるものを私自身読んだ記憶があるんです。その後の情報収集を含めて、当時、警察として非常に厳しい状況に置かれていたと思うのは、故後藤田正晴長官だったと思いますけれども、ある意味では警察側がどれだけ被害を受けたとしても、もちろん、そのときは人質がいらっしゃいましたから、人質の人命というか解放が第一、それと犯人も必ず生かして逮捕しろ、こういう厳命であったというふうに理解をしております。
当時の社会情勢を考えますと、そういう指示、指令も仕方なかったのかなと。あの中で警察官の方が殉職されましたので、本当に私自身も気の毒というか残念でならないのでありますけれども、そのころの社会情勢から随分と変わってきて、特に昨今の無差別の殺人というものが、これは残念なことですけれども、多数発生するようになって、国民の意識も随分と変わってきているんだというふうに思っているんです。
軽々に申し上げることではないですけれども、やはり公の安全のために、場合によっては多少の自由が制限されてもしようがない。または、警官が、その現場において、まさに現行犯でやっているときに、被害の拡大を防ぐためにあらゆる手段を、あらゆる手段というと、もちろん武器使用については極めて限定的でなければならないというのはよくわかるんですけれども、このように無差別で、だれでもいいからということの被害の拡大を防いでいくためには、さっき言いました浅間山荘事件のときと随分変わって、被害拡大を防ぐための実力行使も十分あり得る、それを国民が理解する環境になってきているんだというふうに思っておるんです。
そういう意味で、今回の事件を含めて、そしてまた、先ほど大畠先生の方からもございましたけれども、茨城を含め多発しているこういう事件について、とにかく被害の拡大を防ぐという観点から、警察として、随分古い話ですけれども、後藤田さんがあの決断をされたときと違って、いろいろな意味で、初動から検挙に至るまでの警察の対応について違う考え方があってもいいのではないか、こう思っておるわけです。その点について、そういう検討が開始されているのか、またそういう指針を設けるようなことを考えておられるのか、お伺いしたいと思います。

○泉国務大臣 確かに社会的な背景が変わってきておりまして、浅間山荘事件の時代と今日とでは、私ども警察官に対する国民の思いも変わってきておると思います。
ただ、今、これまで守ってきたルールを変更するということは実は議論をしていないと私は思っておりますが、国家公安委員会の議論の場で、先日けん銃をある少年に向けたことについての議論がございました。それはそれできちんと処理をさせていただきましたけれども、やはり今委員御指摘のように、被害の拡大を防止する、そういう観点から、けん銃の使い方を従来のような、一回使うと必ず、正当であったか、法律にかなっているのかというようなことを聞かれるということ自体が第一線の警察官を逡巡させるということも事実だと思いますので、そういうままでいいのかどうかという議論が実は国家公安委員会でございました。これは突き詰めた議論までは至っておりませんけれども、我々としても、被害の拡大防止という観点からは、必要な見直しをさせていただかなきゃならないかと存じます。
まだ俎上に上っておるような段階ではございませんが、これから委員の御指摘も踏まえて判断をさせていただきたいと思います。
〔岡下委員長代理退席、委員長着席〕

○吉良委員 今回、私、報道で聞いたり見たりしている限りではございますけれども、あれだけ本当に罪のない人を殺傷しておきながら、警官が銃を向けた途端に武器を落として一種の降伏をしているということを思いますと、これは本当に許せないんですけれども、それでも、警官がその気になれば、その拡大を防ぐために実力行使もあり得るということを示すことによって少しでも被害の拡大が防げるのかなという思いを持っております。ただしそれが、それこそ流れ弾に当たってさらに罪のない人に危害を加えるようなことはこれまたあってはいけないので、慎重にも慎重を期さなければいけないんですけれども。
ただ、繰り返しになりますが、被害の拡大を防ぐために、国民のいろいろな意味での理解が浸透しているという中での検討をお願いしたいと思っております。
そして、第二点目は、今回、犯人が事前に、日記風といいますか、犯行を予告するような書き込みをしていたということでございます。
今回の事件が、この書き込みを事前にキャッチしていたとして防げたのかどうか、その辺についてはわかりませんけれども、私、最近のもろもろの事件を見て一つ危惧しておりますのが、これはマスコミにも問題があると思うんですが、マスコミが事細かな手口まで報道することによって類似の事案が頻発する傾向にあるということであります。
そういう意味で、こういう書き込み、特に一部報道されておりますように、書き込むことによって自分が世間に対して一種の公約をした、それを実行しなきゃいけない、みずからある種の使命感を書き込むことによって植えつけて、それを実行しなければならないんだというふうにみずから持っていくということがあったようにも思っております。
そういう意味で、こういう書き込みを発見するということ、そして発見した際の対応についてどういうことを今検討されておるのか、その辺について、出会い系サイトの際の議論でも出てまいりましたけれども、そういう事前のキャッチとそれに対する対応についてお伺いしたいと思います。

○泉国務大臣 この問題は、もう委員御承知のとおりでございますが、我々は、インターネット上で殺人等の犯行予告が行われた場合にはとにかく早く対応するということは警察の使命だと思っておりまして、情報をどうやって早期に把握することができるか、これが不可欠なことだと思っております。
そのために、警察において実施しておりますサイバーパトロールというものを通じて把握をしておるのが一つでありますが、そのほかに、いわゆるインターネット上に、それはそうなんですが、インターネット上には膨大な情報が飛び交っておりますことから、警察だけではすべて把握することは到底困難であるということでございます。
今回の例を見ましても、一般の方々に大変御協力をいただいた、一一〇番をかけていただいた。そういう多くの皆さん方の支援があってまた警察も活動がしやすくなるということを考えますと、これからも一一〇番通報をお願いして、早期発見に努める、そしてそれを都道府県の警察に通報する、あるいはインターネット・ホットラインセンターに通報していただく、そういうことを通じて犯行を事前に予防するということをやっていきたいと思っております。
この事件の後、警察からは、プロバイダー等にこの種の情報が通報されるということがあることから、生活安全局長から電気通信事業者四団体にお願いの文書を出させていただきましたし、きのうですか、総務省からも同種の文書を出していただいて、御協力方をお願いしておるわけでございまして、とりあえず打てる手は打っていく、そしてまた、我々としてできることがあれば取り組んでまいりたいと思っておるところでございます。

○吉良委員 この問題は本当に、具体的方法論になると非常に難しい問題だと思っておりますけれども、今大臣にお答えいただいたように対処していただきたいし、これは私ども国会においても、今後どういう形で事前のそういう一種の犯行予告的なものに対してそれをキャッチして未然に防ぐか。
資料の方をきょう用意させてもらって、もともと警察の方から出てきている資料でございますけれども、今現在、一種の犯行予告的な書き込みは有害情報という位置づけで、違法にまで至っていないというふうに了解をしております。今後それを違法と位置づけて、このような書き込みがあった場合には警察が捜査を開始できるような体制を整えることも必要かなというふうに私は思っています。
もちろん、先ほど具体的方法論で難しいと言いましたのは、オオカミ少年といいますか、いたずらが相当ふえてくると思っていますし、それを何千件とやっていたら、これまたマンパワーの問題、それからまた、プライバシーといいますか個人情報保護の問題でいろいろな法的措置、問題があるとは思っているんですけれども、先ほど申し上げましたように、やはりこういう無差別殺人の未然防止に対する国民の理解というのは深まっておりますので、今後国会でもその未然防止について突っ込んだ議論をしていく必要を感じております。
それと、もう既に閣内でも検討が進み始めたと聞いておりますけれども、刃物というのは日常、包丁として家事等に使うわけでありますけれども、刃物の携帯について、今後警察としてどのような対応を考えておられるのか。日常と犯罪、これは本当にすみ分けが難しいというふうに思っておりますけれども、いわゆる刀剣の所持について、刀剣といいますか、日常の、今回のサバイバルナイフ、それから包丁等の所持についてどういうふうに今考えておられるのか、お聞きしたいと思います。

○泉国務大臣 現在の銃刀法で所持が原則禁止されておるのは刃渡り十五センチ以上ということでございまして、あと、サバイバルナイフを初めとする刃物につきましては刃渡り六センチを超えるものは理由がなくて携帯が禁止されておる、こういうことでございます。先日改正をお願いしました銃刀法の改正で、この部分について、改正前は一年以下、三十万ということでございましたけれども、重たくしていただきまして、二年以下の懲役そして三十万というふうに変えさせていただいたところでございます。
今回の事件からこのことについてどう対処していくかということは、これから少し検討させていただきたいと思っております。いわゆる包丁類を見ましてもどうするのかとか、今回のようないわゆる凶器になるものについてはどうするかというふうに、少し具体的な議論をさせていただいた上で、必要があれば法改正も検討させていただかなきゃならないと思っておりますが、もうしばらく時間をかしていただいて対応を考えたいと思っておるところでございます。

○吉良委員 私自身も、個人的な見解ではありますけれども、法改正によってより強い規制にしていく必要があるのではないかというふうに感じております。
いずれにしても、今、何が国民の最大の関心事かというと、恐らくは治安の回復だというふうに思っておりますので、泉大臣の方でイニシアチブをとって、治安回復、社会の安寧について陣頭指揮をとっていただきたいなというふうに思っております。
ということで、泉大臣の方はこれで。ありがとうございました。
続いて、大田大臣にお伺いをいたします。
私、この内閣委員会の冒頭というよりも今国会の冒頭で、対日投資、対内投資について伺わせていただきました。今回、いろいろと話題になりました電源開発、JパワーとTCIのもろもろの確執についてお伺いしたいというふうに思っております。
まず、大田大臣、なかなか思い切った発言はしづらいかとは思うんですが、今回のTCIに対する政府による二〇%までの株取得中止命令、これについて、特にその中にございます理由というのは、ちょっと後で資料は持っていますから必要であれば言いますけれども、極めて抽象的な表現でもって中止勧告そして中止命令を出しております。このことについて、対内投資、対日投資の旗振り役である大田大臣がどのように感じていらっしゃるか、お伺いしたいと思います。

○大田国務大臣 Jパワーの問題ですけれども、これは対日投資ではありますが、やはり外資規制という中の一つ、外為法の中で議論されたことです。つまり、開かれた国づくりをして対日直接投資を日本に積極的に呼んでいくということは重要なことではありますけれども、一方で安全保障、これはやはり国として守らなくてはなりませんし、先生も御案内のように、アメリカでもエクソン・フロリオ条項ですとか、開かれた国と、一方で安全保障、国として守るべきもの、これをどう両立させていくのかというのは、どの国でも苦労しながらやっていることだというふうに思っております。
今回のJパワーも、Jパワーの中に原子力発電を抱えておりますし、プルサーマル計画というものも進めている、そういう中で、安全保障、公の秩序という観点から、やはりここは外為法の枠内で中止命令を出したという判断を経済産業省と財務省が行ったというふうに見ております。

○吉良委員 安全保障という観点が一番大きいと思いますけれども、それは十分わかりますし、おっしゃるとおり、世界各国がほとんど例外なくそういう規定を設けているわけです。
その前にちょっと、私、断っておきますけれども、この私の質問は、どっちに軍配を上げようというようなことではありません。ただ、私自身も、今後の少子化等を考えて、また高齢化等を考えていったときに、対内投資が必要だというふうに思っておる観点から、これを促進していくために、今回のこの問題が国内的に与える影響、また外資と言われる外国投資家に与える影響という観点からちょっと議論をさせていただきたいと思っているんです。
大田大臣も御承知かと思いますが、イギリスには大きな電力会社が現在六つほどございます。そして、六つある中で、実は三社がいわゆるイギリスからとってみれば外資であります。ドイツ二社、フランス一社。さっき言いました、どこでもやっているんだけれども、一方で、イギリスでは電力会社、日本でいうとそれこそ基幹、関西電力だ、中部電力だ、九州電力だ、そういうところなんですね、それが外資である。
今回、日本は、今九・九%のTCIの株を二〇%まで上げる、これが国家の安全保障等々から照らして疑念を払拭できない、それに対する反論の説得力がなかった、こういうことで中止させているわけですね。イギリスが、ウィンブルドン現象ではないですけれども、電力会社自体を外資が保有しているということにかんがみて、そのイギリスに本拠を置くTCIが日本の九・九%から二〇%の株の買い増しを阻止された、このことについてはどうお考えでしょうか。

○大田国務大臣 個別の事例についてどう判断するかというのは、やはりそのときの政府としてしっかり説明責任を果たしながら判断していくということで、Jパワーの問題は、外為審議会の見解を受けて経産大臣と財務大臣が判断したということでございます。
一般的な問題として、先生の御指摘の問題提起について申し上げますと、やはり説明をしっかりする、それから予見可能性を高めるというようなのは重要なことでございます。まず、私のところでも対日直接投資のあり方について専門家を集めて議論いたしました。その中で、外資規制については予見可能性を高めながら安全保障と両立させていく道をもう一度きちんと考えるべきだという御意見が出ております。
これから年内に外資規制の包括的なあり方を政府全体で検討することとしております。その中で、対日投資全体については、国内、国外無差別というのが原則だと思います。しかし、安全保障の理由ですとかでこの原則の外に置くケース、これが外資規制ですけれども、そういう場合は当然あるわけですから、それはどういう場合であるのか。それから、今度は、外資規制を置く場合であっても、外資規制以外の代替措置ではいけないのか、例えば株式の大口保有規制あるいは行為規制では対応できないのかといったところまで含めて、外資規制の包括的なあり方というものは、これから集中的に検討して、年内に方向性を出したいと考えております。

○吉良委員 私、先ほど言いましたように、どちらに軍配を上げるということでもないんですけれども、この問題の一番大きな問題は、会社はだれのものかという根本問題が実は日本と外国では全く違うということに起因しているんだと思うんです。昔よく貿易摩擦のときに非関税障壁ということが言われましたけれども、会社はだれのものかということの根本的な考え方の違いが残ったままであれば、残念ながら、いかに大田大臣が対日直接投資の旗を振っても、外資が今回のことをきっかけとして逡巡してしまう可能性があるのではないかということを私自身は懸念しておるわけなんです。
もうちょっと言いますならば、釈迦に説法になりますけれども、会社はだれのものかという問いに対する日本の一般的な考え方は、よく言われるように、株主のものであり、けれども同時に社員のものであり、そして同時に顧客のものである、このステークホルダーすべて大事なんだという考え方ですね。私自身、これは非常に大事な考え方だとは思っているんです。ただし、一歩外に出た場合には、会社はだれのものかといったら、明らかに株主のものなんですね。
今回の中止勧告に至るまでのTCIとJパワーのやりとりがあるのは御承知のとおりでございます。この中で、今回の、六月何日でしたか、株主総会前にTCIが議案の提示をしております。一部ちょっと申し上げさせてもらいますと、提案の一つが株式の持ち合い、そして株式投資に対する制限ということを挙げております。そして二としては、最低三名の社外取締役の導入。それから四番目は、ちょっとこれは細かいんですが、幾ら幾らと言いませんけれども、配当案ですね。要は、配当が少な過ぎる、配当額を上げろということであります。提案五が自己株式の取得。こういうことなんですけれども、時間があれば本当はここ自体に突っ込んでいきたいんですが、一言で言うと、TCIというのは物を言う株主なんですね。自分が筆頭株主であることもあり、株主の代表として、株主利益の最大化ということを次から次に提案しているわけです。
その際に、例えば株式持ち合いだとか、それからJパワーというのは基本的には電気事業を営んでいるわけですけれども、今、時価総額にして六百八十億ほどある株、それの半分が実は金融機関の株を持っている。こういうようなことで、TCIからしてみれば、昔ながらの日本の経営、長期に見て、長期に少しずつではあるけれども安定して株の配当ができる、そして経営の安定化が図れるということは理解していなくはないんでしょうけれども、やはり株主に対する早期の還元ということをTCIとしては主張しているわけですね。先ほど申し上げました提案のすべてに株主利益の最大化ということを主張しておるわけなんです。これに対して、Jパワーの方は、旧来の日本的経営を前面に出してそれを拒絶している、こういう構図なんですね。
見ようによっては、Jパワーとしては、これまで株主というのは、持ち合いも含めて、ある意味では株主総会はしゃんしゃんで終わって、経営者が提案することをただ諾々と承認してきた。これに対して、真っ正面から経営者側の提案に対して反論してくるグループがいる、これが煙たいということで、ここにこれ以上発言権を持たせたくない、こういう部分も見え隠れすると思っているんです。
繰り返しますが、私はどちらと価値判断をしようと思っていないんですけれども、この点、もう一度言いますけれども、物言う株主に対する一種の懸念、そして会社はだれのものかということの日本と外国の違い、これを抱えながら今後どうやって対日投資を促進していくのか、その点についての大田大臣の考えをお伺いしたいと思います。

○大田国務大臣 TCIが株主の比率を高めようとした企業が一般的な企業であれば、先生がおっしゃる株主利益の最大化あるいは物言う株主ということで、そこはまだ認められていったんだと思うんですけれども、Jパワーというものが国の安全保障にかかわる部分を持っているということで、今回は、株主利益の最大化の上位概念として、国として守るべき安全保障という案件で国として判断をしているということだというふうに認識しております。
その点が、JパワーとTCIについてはそうですけれども、先生がもっと大きい御質問として提起されている、株主の利益を守っていく、会社はだれのものかということと対日直接投資の関係で申し上げますと、それが端的にあらわれているのは敵対的買収の問題なんだと思います。買収防衛策をどうしていくのかという問題です。
これにつきましては、やはり、日本はいろいろなルールを整備してまいりましたけれども、まだ十分ではないところがありまして、防衛策が過剰に使われたりという点があるのは事実だと思います。特に、株主が、買収提案をされたときに、株主の立場でそれはどうなのかということをしっかり判断するようなチャンスと場が十分に与えられていないケースがございます。あるいは、現経営陣とは異なる第三者の立場、例えば特別委員会のようなところにその買収提案の是非を聞いて株主が判断の参考にするというような体制ができていない企業というものもございます。
こちらの方は、先生御指摘のように、株主の利益を守るという立場で買収ルールのあり方というのは見直していかなくてはならない、これは今、政府でもその方向で、経済産業省、金融庁、法務省が集まってルールの検討をしております。
敵対的買収は市場の問題でもありますので、経済財政諮問会議でこの問題を議論しましたときには、東京証券取引所の斉藤社長にもおいでいただいて、議論に加わっていただきました。東証でも、株主の立場を守るという観点で敵対的買収防衛策のあり方について検討を始めるということを聞いております。

○吉良委員 時間が限られているので、次の機会がいつか、本当に一時間でも二時間でも時間をいただいて議論させていただきたいと思っているんです。
今、敵対的買収に対する防衛策というお話がございました。これは重要なこと、必要なことだというふうに思っております。ただ、先ほど言いましたように、会社はだれのものかというところで認識が全く違っていれば、何の敵なのか。日本の場合は、えてして経営者。経営者は、これはある意味で日本のいいところでもあるんですけれども、基本的には長年社員を務めた人たちが、そこで実績を上げた人たちが最後は役員という形でボード入りをする、その人たちで構成している。したがって、本来ならば株主がおり、社員、また日本の場合はその延長である経営者がおり、そして顧客がいる中で、何に対する敵対なのかというと、経営者に対する敵対なんですね。経営者はあくまでも株主が選任しているのであって、そのときに、外国から見た場合に、株主と経営者がいつもいつも一体なのかという疑問もあるということですね。
この辺について、ちょっと残念ながらないんですけれども、やはり、繰り返しになりますけれども、会社はだれのものかという認識の違いを埋める何らかの手だてを講じないと、このJパワーの中止勧告、中止命令の影響は相当大きいというふうに私は思っております。
あともう一点は、では、九・九%、今でも筆頭株主、二〇%に上げた場合に、確かに、国の安全保障ということが一番大きな理由として出てきております。または、公の秩序の維持を妨げるおそれがあるという理由であります。確かに、大間原発があり、それから南北にわたる送電線がございます。これが、ある外資が二〇%に上がることによって、その原発と送電線の保有、維持管理にどういう悪影響を及ぼすという判断をしたんでしょうか。

○大田国務大臣 そこはまさに経済産業大臣の判断でございますので、ちょっと私からはコメントは控えたいというふうに思いますけれども、二〇%になることで、株主としての発言権がふえていく、あるいは原発を進めていく原資が損なわれていくといったような判断をされてのことだというふうに見ております。

○吉良委員 残念ながら時間が来てしまいました。
私の質問を聞いていると、何となく、TCIを一生懸命サポートしているように見受けられますが、必ずしもそうではなくて、冒頭言いましたように、対日直接投資を呼び込まなきゃいけない、そのためには透明性を確保して、日本政府自体が外為法の運用に当たってはきちんと説明責任を果たさなければいけない。そういう中で、会社はだれのものかという認識の違いを踏まえた上できちっと説明責任を果たしていくということが対日投資呼び込みに必要なことだということを申し上げたいと思います。
これで終わりますが、もし何かコメントがございますれば。なければこれで終わって結構でございますが。

○大田国務大臣 透明性を高めていくという観点から、外資規制の包括的なあり方をこれから集中的に見直して、年内に方向性を出していきたいと考えております。
それから、先生が先ほど来おっしゃっているように、やはり日本の中に外資アレルギーのようなものがあるのは事実でございます。ハゲタカという言葉があるように、それから、買収というのは実は買われてしまうというような根強い意識があるのも事実でございます。しかし、外国から新しい発想を受け入れ、すぐれた技術を受け入れていく、そして日本にある企業の価値を高めていくということは、株主の立場にとっても消費者の立場にとっても重要なことだと考えておりますので、その観点から、これからもルールのあり方、制度のあり方を、阻害要因になっているものを取り除いていくように研究を進めていきたいと考えます。

○吉良委員 終わります。ありがとうございました。

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