主張・政策論

2018年4月11日

2018年4月11日 経済産業委員会議事録

○稲津委員長 次に、吉良州司君。

○吉良委員
希望の党、吉良州司です。
質問に先立ち、広く言えば私の地元、選挙区的には自民党の岩屋毅先生、立憲民主党の横光克彦先生の地元である大分県中津市耶馬溪において、本日未明の土砂災害に巻き込まれ、昼どきの情報では、六人の方がまだ救出されていないということでしたので、一刻も早い救出を祈るところであります。また、災害に遭われた方々にお見舞い申し上げます。
さて、今日は生産性向上特別措置法と産業競争力強化法改正案の質疑をさせていただきますが、中でも生産性向上特措法に焦点を当てながら、生産性向上の先にある日本経済活性化にどうつなげていくのかということについて質問させていただきます。
<中略。生産性向上特別措置法には原則賛成ながら、問題点を指摘する質疑。割愛>

○吉良委員
大臣おっしゃるとおり、まさに革命と言われるような変化が起こったときには、一時的には雇用が失われるけれども、だんだん、より高いスキルを身につけて、それに順応していくということであり、また、それをさせるためにも人材育成、教育が大事だということは全く同感です。ただ、それはかなり時間がかかることでもありまして、そういう意味では、足元、それから、遠い将来、そこに行き着くまでの間というのが非常に重要です。ここからが今日の私自身の一番大事な論点になってきますので、委員の皆さん方とも資料を見ながら一緒に確認をさせていただきたいと思います。
まず、日本に限らず、アメリカを始め先進国で何が起こっているかというと、御承知のとおり、まず生産性格差というのが起こっています。ピケティではないですが、資本力のあるところが生産性をどんどん高めて、そして市場占有率も高めていく。当然、そこに勤める人たちの賃金は、生産性も上がりますから、上がっていく。けれども、一方で、生産性が上がりますから、今まで10人でやっていたことが、8人でもできるようになる、7人でもできるようになる。その結果、二人、三人が、その生産性が高く、高い賃金が得られるところからいなくなってしまう。雇用が失われる。一方、生産性が高くない企業は、市場のシェアを今言った生産性の高い企業に奪われてしまいますので、売上げと利益が減って、結果として雇用が維持できなくなっていく。その結果、その会社にいられなくなってしまうという状況が起こっています。私に言わせますと、生産性が高いところ、賃金が高いところから、より低いところへとトリクルダウンしていっているのが今の先進国の現状です。

資料1を見てください。これは、第二次産業の就業者数の比率の変化です。1991年から2021年、予測も入っていますが、現在まで見ても、ざっと10%減っています。ちなみに、今言ったように先進国共通の問題であるという意味で、G7諸国のグラフもつけています。次の資料二を見てください。じゃ、第二次産業にかわって何がふえているかといえば、三次産業です。これはもう自明のことですが、ざくっと10%強ふえている。これまたG7諸国においても同じ傾向があります。


じゃ、それぞれの産業の生産性と賃金はどうなっているんだろう。資料三を見てください。矢印をしている製造業、この労働生産性を見ていただければ、製造業は一人当たり年間1115万2千円です。表の一番右端は過去20年間の雇用者数の変化です。ここが20年間でマイナス253万人になっている。もう一つ、建設業。ブルーの矢印をしています。ここも一人年間601万円の労働生産性なんですが、それが159万人減っている。これらがどこに行っているのか見ますと、15番目の保健衛生・社会事業、主に介護等の事業です。ここは、生産性でいえば一人年間445万円。ここの就業者がプラス463万人にもなっている。これを見ても明らかなように、労働生産性がぐっと下がっている。生産性の高い産業、業種から、より生産性の低い業種へと就業者が移動していることがよくわかります。
安倍総理は、口を開けば、47都道府県で有効求人倍率が全てプラスになったとか言っていますが、何のことはない。選ばなければ職はあります。しかし、実際は、こういう職につきたいというところには就職できていないのが現状です。

資料四を見てください。先ほど来言っていますG7諸国、また米国でも同じ状況があるということを示した資料です。米国においても、製造業が10年間で88万人減り、下の方にある、介護を中心とした保健衛生・社会事業が317万人増えている。これは過去10年の数字ですが、20年であればもっと数字は大きいと思います。

資料五を見てください。先ほどは生産性という指標でしたが、生産性が賃金にどう反映されているかというのが資料五です。ここでも、製造業の雇用者一人当たり雇用者報酬が539万円。ところが、保健衛生・社会事業を見ると357万円。その上の、宿泊・飲食サービス業になると148万円になっています。生産性が低く賃金が低いところにトリクルダウンしていることが今の日本の実情でもあり、先進国の実情でもあります。遠い将来については、大臣が言ったように、教育により、人材育成により、より高い生産性のところに就業できる人を育てていくことがもちろん解決策だと思いますが、当面この状態が続く。これに対する政策としてはどういうことをお考えでしょうか、大臣。

○世耕国務大臣
いろいろな政策が考えられると思いますが、端的に言いますと、この資料でも出ていますが、同じサービス産業、同じ分野でも日米で相当生産性に開きがあるわけでありますから、まずはサービス産業の生産性そのものをしっかり上げていくということが非常に重要ではないかと考えております。

○吉良委員
確かに最終的には人材育成。先ほど、厚労省との、今までの霞が関の文化ではあり得ないという話がありました。ここは文科省とも一体になって、昨日の参考人質疑の中で冨山参考人からも指摘があったように、地方を活性化する、地方の経済をよくしていく一つの方法論として、地方の大学はもっともっと職業教育に力を入れていくべきだ、そして、その地域における基盤人材をつくるべきだと思います。ここは、日本経済を底上げしていくため、そして、黙っていればマイナスのトリクルダウンが起こっていく中で、とことん稼げる人材、その地域の経済を担える人材をつくるための教育が必要だと思います。そういう意味でも、経済産業省と文科省の連携を深めていただきたいと思いますが、この辺でいかがでしょうか。

○世耕国務大臣
今まさに、御指摘の点は、政府の中で人づくり革命ということで議論をさせていただいております。何か経産省は余り教育の話をしてはいけないみたいに思われがちですけれども、我々も積極的に議論に参画していきたいと思います。特に、これからの産業に必要な人材をつくっていくためには、学校にどう変わってもらわなければいけないかというところを、これは産業界の声を教育の現場にしっかり届ける、教育改革のメニューの中にしっかり入れてもらうということを、我々、役割を果たしたいと思いますし、大学が、さらに、社会人も学べる場になってもらうことが非常に重要だと思っています。今の、いわゆるリベラルアーツを中心にした、これはこれで重要だと思いますよ。学び直しでリベラルアーツをやった方がいいという人もいるんです。そういうことをやって、例えば、世界でのビジネスを考えるに当たっては、やはり世界の歴史を深く勉強すると、その後ぐっとビジネスの理解が深まるとか、元商社マンに申し上げるのはなんですけれども、そういう意味で、学び直しの場として、社会人でも学べる場として大学にどう変わってもらうかとか、いろいろな意味で、教育改革、大学改革をこれから進める上で、経産省としてもしっかり貢献をしていきたいと思っています。

○吉良委員
人材育成や教育が大事だというところ、それから文科省と連携してというところは全く異存はないですが、一つ物すごくひっかかった言葉は、産業界の声を聞いて、それを教育の場に伝えて、産業界が望む人材をつくる、これは考え方が違う。商社マンとしてやってきた私でも、それは違いますよ。人生を豊かにして、自分の夢をかなえていくために、より多くの教養を身につけて、かつ、生きるため、稼ぐための力をつけるのが教育であって、産業界の声を現場に反映するのが教育じゃないですよ。じゃ、弁解の余地を。

○世耕国務大臣
私も教育全体がそれでいいとは思っていませんが、経産省の役割としては、やはり産業界の声も反映をさせていくということが重要であって、そこはやはり、文科省は文科省で、今おっしゃったような姿勢も重要だと思います。それは、政府全体でバランスのとれた議論をやっていきたいと思います。
<中略。自営業者所得である混合所得が1994年度31兆円から2016年度10兆円と21兆円減少。家族経営的自営業者の生産性向上を含む支援策の質疑。事業承継制度の改善による支援との答弁。割愛>

○吉良委員
先ほど来言っている、国全体を底上げするという目標の中で、最後に、日本経済全体についてお聞きします。世耕大臣、アベノミクスが本当に日本経済をよくしていますか。アベノミクスのおかげで日本経済はよくなっているんでしょうか。

○世耕国務大臣
よくなっていると考えております。特に、三本の矢のうち一本目の矢、金融政策、これが、今までとは違った異次元の対応をとったことによって日本経済をよみがえらせていると思っております。私の担当している成長戦略のところも、まだこれから道半ばではありますが、しっかりと取り組んでいかなければいけないと思っております。

○吉良委員
安倍政権は、人口減少、人出不足が原因で有効求人倍率がよくなっているのに、それをアベノミクスの手柄にするなど、事実を事実として伝えません。言い方は悪いけれども、ひん曲げてまで自分の手柄にしようとするという傾向があると思っています。そこで、残りの資料を用意しました。

資料8を見てください。これは、世界主要国の実質GDP成長率の推移をあらわしています。太い赤線が日本です。青い太線が世界です。これを見ておわかりいただけるとおり、左の方の、日本がバブルで、日本が飛び抜けて経済がよく見えた時期を除いたら、ほとんどシンクロ(同じ動き、同じ傾向)しているんです。日本経済にとって非常につらいのは、ほとんどシンクロしているが、世界的なショックが起きたときは、世界の平均以上に日本が落ち込むという現実なんです。1997年のところに、ASEANと書いたところがぐっと落ち込んでいます。これは、もう言うまでもなく、1997年のアジア危機です。そして、2009年のところは、リーマン・ショック。傾向は似ているけれども、日本が一番大きく落ち込んでいる。よく、小泉純一郎政権時代は好景気が続いたと言われますが、このグラフを見ておわかりいただけるとおり、新世紀に入って、2007年ぐらいまでは全部が右肩上がりです。だから、何のことはない。日本経済というのは、世界がよければ日本がいい、世界が悪ければ日本も悪いという構造なんです。今、日本が多少よくなっているとすれば、それは、先進国を中心に金融緩和を一つの大きな手段として、リーマン・ショックから立ち直ろうとしている途上にあるからです。しかし、実際はバブル気味なので、そのバブルからの調整が今アメリカの株式市場等でも起き始めている。これが現状です。繰り返しますが、アベノミクスがうまくいっているわけではなく、世界がよければ日本がいいんです。もうちょっと言いますと、資料には出していませんが、日経平均とダウ平均の連関性について申し上げますと、安倍政権発足以来の5年ぐらい、1208日間の統計をとってみました。米国ダウ平均が上がって日経平均が上がる場合、ダウが下がって日経平均が下がる場合、つまり、完全にダウと連動している連動日が、日本円ベースでいうと、747日、62%、ドルベースでいうと、760日、64%です。つまり、三分の二はダウと完全に連動しているということなんです。アベノミクスのおかげで日本がよくなっているということであれば、このダウと関係なく、ダウが下がったとしても、日経平均がよくなっているという構図があっていいと思います。しかし、現実はこのように世界やダウと連動している。このことについて、コメントがあれば大臣にお聞きしたいと思います。

○世耕国務大臣
世界と連動しているところは否定いたしません。世界経済とやはり緊密に連動していますし、日米経済はやはり緊密に連動していますから、ダウとある程度連動するという面もあるだろうと思います。ただ、一方で、やはりリーマン・ショックからの立ち上がり期に世界が積極的に金融緩和を進めてきた中で、日本はなかなか進めてこなかった。その結果、物すごい円高になって、70円台までいっていて、日本の産業界は、製造業を中心に塗炭の苦しみを味わっていたわけであります。アベノミクスは、まさにそこを解きほぐしたと思いますよ。金融緩和をしっかりやることによって、これは日銀と連携をしてやることによって、極めて高かった円高の水準を今の水準のところまで戻したことによって、やはり日本企業にとっては一息つけた。それで、その一息をついてから、次、その一息をついて、キャッシュもふえた、そのお金をやはり設備投資に回してもらって、何とかOECD平均を追い越して、OECDの成長率を逆に引っ張っていくぐらいのポジションに持っていかなければいけない、それがまさに成長戦略の任務だというふうに考えています。

○吉良委員
今大臣が答弁されたことは、私自身も否定しません。ただ、資料10見てください。

これは、日本のGDPの推移を名目円ベース、それから実質円ベース、名目米ドルベースであらわしたものです。これを見ておわかりいただけるとおり、確かに行き過ぎた円高は是正しなければいけなかった。私もそう思います。しかし、ここまで過剰に日銀が介入する必要があったのか、問題意識を持っています。ちょっとここは、財務委員会でもないのでそこまではここでは問いません。しかし、世界から見たら、日本は安倍政権になってからGDPを大きく減らしているね、なんですよ。世界は、米ドルベースでしか見ませんから。さっき大臣が答弁された中で、一息ついたという言葉がありました。確かにそのとおりです。過度な円高は是正しなければいけなかったということについては、私も同感です。しかし、日本企業は、苦しかったけれども、あの円高でもバリューチェーンをつなぎ、サプライチェーンを面でつなぐことによって、それでも何とか耐え得る体力、地力をつけたということでもあるんです。だからこそ、少し息をつけたということではないでしょうか。ただ、アベノミクスの現在の金融緩和、黒田総裁の続投、それに伴う日銀の、出口まで全く見せようとしない、このあり方、やり方というのは、私は行き過ぎていると思っています。さっき言ったように、あの円高の中でも日本企業がサプライチェーン、バリューチェーンをつなぎながらそれだけの地力をつけていた中で、ここまでじゃぶじゃぶにして、もう政府の支援がなければ生きていけないような企業群にしてしまいかねない、というのが私の大きな問題意識です。これについては、大臣、いかがでしょうか。

○世耕国務大臣
金融政策に私があまり言及をするとあれなんですけれども、私は、やはり、黒田総裁を続投させて、今の金融政策を継続させるという判断、これは産業界からも強く支持をされていると思います。特に、2%、インフレをしっかり起こしていく、20年以上続いたデフレからしっかりと脱却していく、今、もはやデフレではないという状況になっていますが、道半ばでありますから、それをしっかりと進めていく。今のこのGDPのグラフでも、ようやく久しぶりに名目と実質が逆転しているということも非常に重要でありまして、ただ、それでもまだ幅は狭いわけでありますから、しっかりと今の金融政策を継続していくとともに、それに頼るだけではなくて、やはり成長戦略もしっかりと実行していくことが重要だと思っております。

○吉良委員
最後に、資料の九を見てください。この資料は、一番下の棒グラフはマネタリーベースの推移、そして、すぐ上にある緑色で横になっているのが個人消費である家計最終消費支出、そして、ブルーでジグザグしているのが株価、一番上のオレンジ色で横の線になっているのが名目GDPです。これを見ておわかりいただけるとおり、マネタリーベースをふやすことによって、確かに株価は上がっています。けれども、個人消費はふえていない、横ばいです。そして、個人消費が六割強を占める日本の名目GDPもほぼ横ばい。これが日本の現実です。私が先ほど、過度の円高はよくない、けれども、やり過ぎだと言っている理由は何かといいますと、今、何で個人消費が伸びないのかというと、円安によって輸入物資が上がり、生活コストが上がり、にもかかわらず賃金が上がらない、つまり、一般生活者の可処分所得が減少している分が企業へと所得移転しているのが今の日本経済の現状なんです。だから、個人消費が伸びないんです。だから、個人消費が一番大きな割合を占めるGDPがふえない。そういう中にあって、企業、企業と、企業だけを後押ししても、日本経済はよくなりません。私が自分で最初に申し上げた、どうやって底上げするかというのは、一方で、企業の生産性を上げていくことも大変重要であります。そして、その生産性向上によって取り残されないための教育、人材育成も重要であります。と同時に、経済をもう一回、生活者の懐をどう豊かにしていくかという観点で経済運営をしていかない限りは、日本経済全体の、また日本社会全体の底上げにはならないということ、そして、この各論はあらためて議論させていただきたいということを申し上げ、私の質問を終わります。ありがとうございました。

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