「生活者主権の政治」、「将来世代優先の政治」、「国民の幸せ感を追求する政治」
自民党政治の本質は、業界の支援(選挙応援や献金)を受けて政権を維持し、その見返りに、業界への予算配分と要望される法律を制定する「業界優先政治」です。時には、将来世代の負担を増大(国債発行増)させてまでも業界を支援します。また、「改革なくして成長なし」という言葉が象徴するように、「経済成長」自体を目的化する「経済成長至上主義」の政治でもあります。私は、国際ビジネスの最前線にいたこともあり、経済成長を否定するつもりはありません。しかし、国全体の経済が成長しても、国民ひとり一人の生活が豊かにならなければ意味がありません。政治の目的は、飽くまでも国民ひとり一人の豊かさであり、幸せであり、幸せ感溢れる生活でなければなりません。
高齢者が全人口の5%で、多くの女性が専業主婦だった時代(専業主婦を夫の業界員と見做した場合)には、業界を支援し、業界が潤うことは、95%の国民が潤うことを意味しました。このことは、(高度成長やその後の安定成長の昭和時代までの)自民党の業界優先政治は間違っていなかったどころか、我が国を豊かにしてくれた恩義ある政治だと言えます。
しかし、平成時代の30年間、国内外の環境は著しく変化し、業界優先政治が機能しなくなった結果、我が国は先進国の中で最も貧しい国に陥り、多くの国民は生活が苦しくなったと感じています。今や4人に1人が高齢者、また、非正規社員が労働人口の4割に達する我が国において、業界が潤っても高齢者や非正規社員が潤うわけではありません。
国民一人ひとりの価値観が多様化している現在の社会では、政治は業界経由ではなく、生活者ひとり一人に直接向き合うことが重要です。
今回のコロナ対策では、雇用調整助成金が会社を助け、その会社の雇用は維持されました。健全な会社を支援し、その雇用を守ることは会社にとっても社員にとっても大事で重要です。しかし、生活者に直接向き合う政治は、会社経由ではなく、直接困窮する(フリーランスの方々なども含めた)生活者を支援することを優先します(生活者主権)。子供たち、将来世代には借金を増やさず、子どもや子育て家計への投資と大胆な支援を行います(将来世代優先)。多様化する国民の価値観にふさわしい「国民ひとり一人の幸せ感を大切にする政治」を追求していきます。
1.生活者主権の政治の具体イメージ、具体的政策
(1) 雇用調整助成金ではなく、「失業時の自分への投資を条件とする生活支援制度」
1) 守るべきは各個人の生活であり、現職場での雇用と生活だけが雇用や生活の安定ではない
2) 経済社会の環境変化にともない企業の栄枯盛衰は必至。環境変化にともない現職場からより安定した職場へと転職する際の、失業時・転職活動中の生活を支援する制度
3) 具体的には、転職に必要な技能の取得のための自己投資に対して生活保障する制度
(2) パンデミックや災害時などの緊急時に発動させる「緊急時生活保障制度」の創設
1) 行政のデジタル化(マイナンバー有効活用)により困窮する生活者に一定期間生活保証
2) 緊急時の生活保障があることで、固定費中の人件費負担が軽くなる企業支援にもなる
2.将来世代優先の政治の具体イメージ、具体的政策
(1) 少人数学級の徹底、高校の無償化、高等教育への機会均等拡充
1) 少人数学級実現のための教職員数の拡充、社会経験豊富な外部人材の有効活用
2) 高校無償化は民主党政権で構想、実現され、安倍政権にも引き継がれている
3) 高等教育の低所得家庭子弟の入学金・学費の減免、給付型奨学金の拡充、
(2) 大胆な子育て支援策
1) 予算の組み換えand/or消費税増を財源とする、極めて大胆な子育て家計支援策(約10兆円)
2) 具体策は第1子3万、第2子5万、第3子10万、第4子以降、15万円の月額支給制度
3) 高校卒業まで毎月現金支給(高校進学しない場合は18歳になるまで)
4) 子育て家計は、給付支援を含む収入のほとんどを生活費や子どもの教育費として支出するため、子育て真最中の家庭の家計支援になると同時に、個人消費がGDPの6割を占める日本経済の「最大の成長戦略」にもなる。
5)我が国最大の課題である「少子化」を克服し、社会・経済に活力を取り戻す、最善の社会・経済対策となる。
3.国民の幸せ感を追求する政治
(1) 国民ひとり一人の夢や幸せ感は多様化
1) 各人の幸せ感を尊重しあう社会の追求。経済成長が全てを解決するという発想からの決別
2) 物々交換による幸せ感の再評価、心の満足感をキャッチボールする地域コミュニティ再構築
3) 市場に出せない野菜や果物のお裾分けはGDPには反映されないが買うより満足感は大きい
(2) GDPと個人消費と幸せ感
「GDP=個人消費+民間設備投資+政府支出+純輸出」の項目中、設備投資や輸出が増えても消費者としての個人は幸せを感じない。しかし、欲しいものが買えた時には小さな幸せを感じる。国全体のGDPが大きくなっても個人の幸せ感には結びつかないが、GDPの6割強を占める個人消費の増大は経済成長と国民の幸せ感を両立させる。家計収入の増大こそが経済政策の柱
吉良州司