国際協調主義と独立自尊主義を共生させる現実的外交
世界の中で、我が国ほど「国際平和」と「自由な経済活動が保証された国際環境」が必要な国はありません。
世界全体の平和追求と国際社会との協調と経済的連携は、我が国の国益そのものです。一方、米国はトランプ大統領の自国主義と分断路線により、国際社会全体を混乱に陥れ、一時は世界のリーダーとしての役割を自ら放棄しました。トランプ政権時代の後遺症とも戦いながらバイデン政権は米国の世界におけるリーダーシップを取り戻そうと必死です。しかし、アフガニスタンからの撤兵とタリバン政権の復活により、米国の威信と信頼が揺らいでいます。
一方、政治、軍事、技術等世界の覇権国としての地位を中国に脅かされている米国は、あらゆる分野において中国敵視、中国排除の具体策を推し進めようとしています。我が国は、この米中覇権争いに否が応でも巻き込まれざるをえません。股裂き状態を余儀なくされる悩ましい国際情勢ですが、日本外交の礎石である日米同盟の堅持は必要条件です。一方、世界経済における中国経済は圧倒的な影響力と存在感を示しており、日本の投資先、輸出入相手先、インバウンド観光客の第1位で、経済的相互依存関係にある中国との決定的摩擦はなんとしても避けなければなりません。
安全保障上、外交上は問題だらけの中国であるが故に、心の底から悔しいというのが本音ですが、経済的相互依存関係にあり、地政学的に南米や欧州の横に引っ越しできない以上、共存共栄を図っていくしかありません。 今後、「世界の工場」であり「巨大市場」でもある中国経済に惹きつけられる企業・経済界の立場と、安全保障上の懸念対象であり、南シナ海・東シナ海、尖閣、香港・チベット・ウイグル問題等、決して譲ることのできない政治的立場の狭間で葛藤が続く中、米中覇権争いの中、中国とどう向き合っていくのかは我が国にとって最大の課題です。
私は1995年から2000年半ばまでの5年半、家族とともに米国で暮らす中、真の豊かさとは何か実感させてもらいました。その意味でも恩義ある国、そして大好きな国です。しかし、トランプを大統領に選出してしまった米国、アフガニスタンに戦争をしかけ、ベトナム戦争のサイゴン陥落時のように、都合がわるくなると、米国への協力者を置き去りにして撤退、逃避してしまう米国、その米国を今やどこまで信用できるのか確信が持てません。 その意味において、日米同盟が日本外交の礎石であることは変わらないものの、日米同盟さえ守っていれば安全や繁栄が保障される時代は終わり、国際協調主義と独立自尊主義を共生させた極めて現実的な外交が求められます。