一国2制度、3制度の必要性
   ――農業政策 民主党案か自民党案か――

仕組みの上で発展途上国と先進国の異なる二つの国が並存していること、各々の世代が生きてきた時代背景が異なることを踏まえ、既存制度を部分的に残しつつ、新しい制度も導入していく一国2制度、3制度につき、農業政策を例にとって説明を試みます。

どちらも正しい農業政策

昨年の参議院選挙時には民主党と自民党の農業政策が大きな争点となりました。民主党は全ての農家を対象に「戸別所得補償制度」を提唱、自民党は4ヘクタール以上の大規模農家(北海道は別)を対象にした支援策を打ち出しました。そして、民主党案に対しては「厳しい財政状況の中のばら撒き」、自民案に対しては「小規模零細農家の切捨て」との批判合戦が繰広げられました。私はどちらも正しいと思っています。65歳以上の高齢者農家に対しては民主党案が、若い世代の農家には自民党案がふさわしいと思っているからです。世代毎に別々の対応(一国2制度)をすることで解決するのです。年金制度も世代毎の対応が必要と思っておりますが、このことはキラキラ広報8号に記載しておりますので、そちらをご参照下さい。

高齢者に支えられる日本農業
 
現在の農業は65歳以上の高齢者によって支えられています。65歳以上の農業従事者は、戦後、米を中心に食料を生産し、都市部に供給し続けることで戦後復興を支えてくれた大恩人です。供給し続けたのは食料だけではありません。愛情と時間と労力とお金をかけて子供を3人も4人も育て、その子供達を産業戦士として都市部に送り出してもきたのです。現在も食料生産のみならず、保水や消防団機能の維持を含む災害対策や環境保全、お祭りの継承など古きよき日本の文化を守ることを通して、地方を住むことによって支えてくれているのです。過去のそして現在のこのような貢献に対して、恩返しをする意味も含めて、この方々の食料生産を通しての生活を、社会の構成員みんなで支える(所得補償する)ことは筋が通っています。

若い世代には競争力のある農業を

しかし、社会政策の要素を持つこの戸別所得補償制度を、若い世代にまで適用することは、産業としての力強い農業、国際的にも競争力を持つ農業の育成という観点からは逆効果だと思います。食料安全保障の確立はわが国の最も根幹の基本政策であるべきです。その意味で、現在の新規農業就業者は全国でわずか年間○○○○人(2006年)しかおりませんので、日本の食料自給率を向上させるためにも大規模化を支援し、競争力のある農業にしなければなりません。
このように、たとえば65歳以上の農業者には戸別所得補償を適用、40歳未満は大規模化政策を適用、40歳から64歳までは、その混合とするといった世代毎の政策対応が必要だと思います。この際、39歳と40歳の不公平、64歳と65歳などわずか1年違いで対応が違うなどの不公平が生じますが、これは、4月1日生まれと4月2日生まれの学年が違うように割り切るしかないと思っています。

あまりに早く急激な変化

食べるものもなかった戦後初期の時代から飽食の時代と言われる現在まで、わが国はあまりにも急速に成長し産業構造が変化してきました。発展途上国と先進国を一人の人生の中で経験してしまう状況が生まれたのです。それだからこそ、世代間の公平性の観点からも、新しい時代の最終制度の姿を示しつつ、それまでの道程は2制度、3制度の必要性を提唱するものです。