96年12月 ニューヨーク便り追伸 ペルー日本大使公邸人質事件で大分舞鶴同窓の大親友が人質に!
年賀の挨拶状を書いた2日後にペルー・リマでゲリラによる日本大使公邸襲撃事件が起こりました。
人質の中には小生の無二の親友で、毎日ファックス、テレックス、電話をやり取りしながら一緒にペルーやエクアドルなどのプロジェクトを追求している会社の同僚でもある山本為之さん(“為ちゃん”と呼んでいます)が含まれています。また、小生がリマに出張する時いつもお世話になり、誰よりもペルーを愛する先輩・佐藤店長も、そして、この二人をいつも助けてくれる日系ペルー人社員Mr.Shiromaも人質になったままです。
この追伸を書いている今日現在まだ三人とも開放されておらず、正月までに開放されていれば本当に「新年明けましておめでとうございます」なのですが、長引く場合は「おめでとう」とも言っておれず、そのことを付記したいと思います。
自分は今、今度の事件に直面して、自分の人間としての弱さ(但し、人間らしい弱さ)を痛感しています。
ダッカの日航機乗っ取り事件の時は、その「超法規的措置」につき、連合赤軍を憎むが故もありますが、日本政府の弱腰(犯人の言いなりになってしまうこと)に疑問を持ったものでした。でも、あの事件の時は人質の中に自分の知人はいませんでした。
今回、家族ぐるみ生涯の友であり、また兄とも仰ぐ親友がその火中にいるとなると、ゲリラ500人規模の釈放という超法規的措置であれ、国家予算の半分、いや全部を身代金として払ってであれ、とにかく如何なる手段であれ、人質を一人も死傷に至らしめることなく解決してほしいと願わずにはおれません。
自分が今住んでいる米国の政府は「テロには絶対屈してはならない。ゲリラが報われてはならない」と一切の譲歩をするなと言っており強攻策にも備えているようですが、「余計なこと言うな!するな!アメリカは引っ込んでおれ!」と叫ばずにはおれません。北風と太陽の話ではありませんが、米国の「自分の価値観が世界の価値観であるべき」といった強気一辺倒の考え方、やり方がイスラム世界や中南米のゲリラをして米国を敵視し、テロを頻発させる原因かもしれません。その意味で以前「弱腰」と映っていた日本政府の「人命尊重」「人命第一主義」「人間の命は地球より重い」といった考え方、対応は素晴らしいものだと思い始めています。
今は一刻も早い人質の解放、佐藤さん、城間さん、為ちゃんの無事をただ祈るばかりです。
1996年12月21日 吉良州司