山 第22号 1978 人物短評

吉良州司

名前からわかるように九州男児が今期のリーダー。かの大分3賢(バカ?)人の一角を占めるその強力な求心力で、ある時は雀パイ、又ある時はアルコールを駆使して大所帯化した山の会をまとめあげた。「吉良落ち」と固有名詞までできた無数の滑落等、彼にまつわる逸話は絶えない。
一方、州児といえば酒はつきもの。「大分県人」「九州男児」と声がかかれば決して後にはひかない飲みっぷり。(後のことは考えないのです。)テントの中でのあの美声を再び聴きたいと思うのは筆者ひとりではないでしょう。
頼りになるリーダーでした。
昭和54年度リーダー筆

「山」 第22号 1978 巻頭言

昭和53年度リーダー 吉良州司

永年、山の会を御世話していただいた伊藤先生も来春はいよいよ御退官されることになり、現役一同遺憾の意に堪えません。去る10月20日、21日の「伊藤先生退官記念山行」には、多くの先輩諸氏に参加いただき盛大なる感謝祭となったことは随喜の至りです。来年3月の国際文化会館での退官パーティーも多くの方に出席いただいて盛大な催しとなることを期待してやみません。
さて、今年度の山の会活動に目を移してみましょう。この1年間、一人の犠牲者もなく全員無事で山行活動ができたことは、深く天に感謝しなければなりません。無料新人歓迎コンパに魅せられて入部した我々は、上級生との実力差を痛感し、駒場生活のほとんどを参考に費やし死に物狂いで実力養成に励みました。3年リーダー制が定着しつつある現在、駒場時代に多くの山行経験を積むことが、3年時のリーダー学年で自身を持つことになり、その自信は的確な判断能力につながって安全に寄与するものと信じて疑いません。(勿論、故人の名言「過ぎたるは及ばざるが如し」は肝に銘じなければなりませんが。)
我々は先輩たちに食い付いていくことによって山を知り我々の実力を知りました。分相応ではありましたが事故なく山を謳歌できたのは、先輩諸氏に負う処が大であると深く感謝しております。
しかし、我々もまた、山の会が現在の組織形態を続けていく限り永遠に存続すると思われる課題を残したまま、後輩にバトンを渡してしまいました。個人の実力差、山行姿勢の相異と合宿等パーティー行動における統率の問題です。各人の自主性が尊重され、各人の実力や志向に合致した山行を楽しめることが山の会の最大の長所ですが、最近のように雪山の比重が増し、岩登り隊も編制されるようになってくると、各人が一定レベル以上の実力を保持しなければ、合宿等に参加できない状況が出てきたわけです。山岳部のように目的至上主義的山行姿勢をとれば、山を愛し山を通じて友情を育み、豊かな人間形成を目指す法学部のオアシスとしての山の会本来の目的が失われる恐れがあるが、山行のレベルは山岳部に接近しつつあるところにジレンマがあるように思われます。結局は、そのリーダー学年が、どちらにウェイトを置くか、彼らの価値判断に依拠せざるを得ない問題かおしれません。もし、後輩諸氏が現在のレベルを維持しようとするならば、冬合宿等においては、隊員選択、入念なる計画・トレーニング・目標の段階設定等、統制力を強化した体質に変化させることが必要だと思います。私個人の意見としては、山は飽くまで楽しく登るべきで、危険克服の楽しさ(?)を追求してほしくない。
以上は、ここ2年間の合宿において深夜まで議論された「統制と自由」のジレンマ状況について簡単に触れましたが、後輩諸氏には、下界で十分な議論をし、意思統一をなした上で出陣することを切に望みます。最後に、未熟な私を陰に陽に支援してくださった先輩諸氏と、不徳怠惰なリーダーに協力してくれた同期生に深く感謝します。
伊藤先生、永年本当に有難うございました。益々のご活躍と御多幸を祈ります。