吉良からのメッセージ

2019年2月27日

北方領土問題の本質と対応 その8 中間報告

北方領土問題シリーズ第8弾です。

これまでのシリーズでは、次のようなことをお伝えしてきました。

(1)北方領土問題は、「北方4島は日本の固有の領土であり、主権は日本にある」という日本の主張と「第二次世界大戦の結果として、4島はソ連領になっており、主権は(ソ連を引継いだ)ロシアにある」というロシア側主張が真っ向から対立している。

(2)日本国民には、日ソ中立条約が有効なのにソ連が対日参戦したこと、日本降伏後に4島を占領したこと、日本軍民をシベリアに抑留したこと、に感情的しこりがある。

(3)外交には相手があり、相手なりの主張・正論もあるので、4島主権を主張し続ければ、1島たりとも返還がなく、平和条約が締結されない可能性が高い。

(4)あくまでも4島主権という正論を貫き通すことは、国家の矜持であり、わが国の毅然とした生き方である。

(5)一方、地政学的、戦略的、現実直視の観点から、何らかの妥協をして、平和条約締結に突き進む道も検討すべきである。

(6)第3回モスクワ外相会議、テヘラン会議、ヤルタ会談、ポツダム会談、ソ連による北海道分断占領・領有化の意図と米国の対応、日ソ共同宣言、ダレスの恫喝、その後の4島の帰属問題を解決して平和条約を締結しようと日ソ、日ロ両国の歴代首脳が会談を重ねてきたこと、などあまりしられていない事実を含む歴史的経緯。

私がこの北方領土問題シリーズでお伝えしたいことは、上記の(3)(4)(5)です。外交には相手があり、相手なりの正論もあるので、まずは、歴史的経緯を確認、共有して、相手の主張の背景に何があるのか、相手が絶対に譲れない条件は何なのかを見極める必要があると思っています。その上で、1島たりとも返還されず、平和条約締結がなくとも、わが国の正論である4島主権を主張し続けるのか、地政学的、戦略的、現実直視の観点から、何らかの妥協をして、平和条約締結を模索すべきなのか、読者のみなさんと一緒に考えていきたいと思っています。

このシリーズの後半は、この問題意識を共有しつつ、妥協する場合の問題点、妥協する場合の国民が納得できる説明や論理、具体的解決策、参考になる、大戦時同盟国だったドイツの対応、北方領土問題の真の本質などについて、持論をお伝えします。

吉良州司