主張・政策論

2008年11月14日

No.030 170回国会「衆議院 内閣委員会 3号」

①平成20年11月14日 内閣委員会
渡辺委員長 次に、吉良州司君。

吉良委員 民主党の吉良州司でございます。

佐藤大臣に質問をさせていただきます。

まず、きょう、私を含めて民主党の方から三名が質問をさせていただきますけれども、トップバッターでもありますので、再度、大臣の口から、今回の銃刀法改正案を提出される背景とそれから目的とするところ、決意も踏まえてお聞きしたいと思います。

佐藤国務大臣 さまざまな事件がございまして、この事案についていかなる方法をとったらいいかということになれば、一つ一つ解決をしていかなければいけないということになろうかと思います。

したがって、ダガーナイフ等々についても、そういう事案をなくすという観点から規制をさせていただいて、それを取り締まるということがまず一つだと思います。また、銃砲等についても、先ほど申し上げましたように、やはりその規制が日本の治安を守っているということは間違いないことでありますし、その運用について、時間がたったものですから、そういうことについてもそごを来さないようなことで、しっかりとした規制をした上で治安を維持していくということが大切ではないかということで、今回の法案の趣旨にのっとっているということでありますので、よろしくお願いを申し上げたいと思います。

吉良委員 今回、いろいろ時代背景を考えてみたときに、一つは、先ほど田端委員の方からも御指摘ありましたけれども、悲惨な事件が起こっているということ。それから一方で、過疎化に伴って山間部において鳥獣による被害が出てきている。それは、裏を返せば銃砲使用の頻度、需要が増しているということであろうかと思います。山間部においては、特に、鳥獣をどう駆除していくかということ、それにかかわる銃砲の使用の問題。都市部においては、痛ましい事件を中心として、精神的にかなり追い込まれた人または突発的に異常な行動をするおそれのある人、この人たちの潜在的な加害に対する防止。このような二つの点があろうかというふうに思っております。

今、私ども民主党は、基本的に、行政改革という中で、無駄を省け、省けということで大合唱させてもらっているわけでありますけれども、事この警察行政に関する限り、国民の了解が得られて、唯一、安全のためなら人員増とか場合によっては経費増も仕方がないと思われる分野は、この分野かというふうに思っております。

そういう意味で、私、細かい点も幾つか聞かせていただきますけれども、同時に、今回のこの改正案、欠格事由の追加であるとか調査の徹底だとか、もろもろの追加修正がなされているわけでありますけれども、それをきちんと実行できる、そういう体制がなければ意味をなさないというふうに思っているわけであります。

ちょっとその観点から、幾つか、大臣または政府参考人にお聞きしたいと思っております。

今回、実包の所持状況、所持している実包また消費した実包等について記録化する、帳簿づけをしていくということが義務づけされているわけでありますけれども、まず第一点、お聞きしたいのは、この帳簿づけだけで、今言った実包の増減について、警察当局としてもきちんと把握できるというふうに考えておられるのかどうか、その辺についてお聞きしたいと思います。

巽政府参考人 実包の所持状況につきましては、これまでは、特段、帳簿等の記録をつけるという義務づけがなされていなかったものでございますので、そういう観点において、もちろん、警察に来て実包等の許可を得るというような場合には把握できるわけでございますが、その後、どのように消費したのかあるいは廃棄したのか、こういったことについては必ずしも把握はできていなかったということでございます。

今回の法案は、長崎の事件等を踏まえまして、実包の所持状況についても帳簿を各人がつけることによりまして、具体的な譲り受けから消費からあるいは廃棄に至るまでの経緯をきちっと書いていただく。これによりまして、警察としては、それぞれの人の実包の所持状況を把握できると考えておりますし、また、実際に立入検査等をやる際に、銃砲のみならず、実包が現実にどのくらい保管されているのか、そしてそれが帳簿の記載と照合して適合しているのかどうかといった点についても確認することができるようになる、こういう意味で、この制度によりまして、実包の所持状況の把握が可能になるというふうに考えております。

吉良委員 まず、帳簿づけをさせることで個人的な、個人的にというかある意味では正確性を期するためのプレッシャーをかけることは評価をしておりますけれども、一方で、それだけで十分なのか、本当に実態と帳簿が一致しているのかというような問題ですね。

ですから、私が考えるに、先ほど言いました、ある程度、体制、人員等が充実されるならば、届け出をさせる、または、今おっしゃいました立入検査ももう少し頻繁に、今どの程度やろうとしているのかちょっとお聞きはしていないんですけれども、今想定しているよりももっと立入検査等を頻繁に行えるのではないかというふうに思っております。

ただし、さっき言いましたが、体制強化につきましては予算なりまた人員増の問題もありますので、一つ、大きな人員増なり予算増を伴わない形でやる方法として、届け出義務、帳簿づけとそれにあわせて届け出をさせるということが考えられると思うんですが、その辺について、銃砲行政の総点検のプロジェクトチームの中でもそういうことについて検討がなされたのか、検討がなされた中で今回届け出義務をこの改正案に入れていないことの理由は何なのか、それについてお伺いしたいと思います。

巽政府参考人 検討会におきましても、この実包の所持状況をいかにして把握するかということについては熱心な御議論をいただいたというふうに承知しているところでございます。

そして、今回、届け出につきましてはあえて改正案には書いていないところでございますけれども、これにつきましては、先ほどもちょっと申し上げましたけれども、記載された帳簿の内容と実際に保管されている実包の保管状況、これを照らし合わせるということで確認をする、そして、そのために、改正案においては、警察職員が実包の保管場所に立ち入って、実物の、実包の現物や帳簿を検査できるように措置しているところでございます。

また、この改正によりまして、実包等を保管する者に対し必要な報告を求めることができるということにしておりますので、そういう意味で、銃砲の検査等の機会に帳簿の提示を求め、閲覧し、確認できる、このような形のものができるというふうに考えているところでございます。

吉良委員 今おっしゃったように、確かに、行政検査、立入検査を頻繁に行うことで帳簿と実態とを当局として確認できるわけでありますけれども、その検査がどの程度の頻度でなされるかによって大きく違ってくると思いまして、ある意味で、警察の方に届け出をしてくれれば、仮に人員がそれほどの体制にならない場合であっても、ある程度網羅できる。それに加えて立入検査をすることによって、それをもっと確実なるものにできるというふうに思っているわけであります。

その意味で、ちょっと体制の方にいきなり移らせていただきたいと思うんですが、報告書によっても、まず、県警の中でもこの銃砲を担当する方は非常に人員が限られている。限られた上に兼務をしている。ですから、ほかの大きな事件等入った場合に、なかなかこれに手が回らない。小規模の警察署は比較的郡部が多く、先ほど言いましたように、鳥獣被害があって銃砲を使用する頻度が非常に高まっているところが多い。したがって、所有者も、実際使用している人も多い。そういうところには、警察署自体の人員が少ない上に担当する人も少ないというふうに思われるんですが、今後、改正した後の、この法律の中で書かれていることを実効あらしめるための人員強化、または、今言った、少ない人員で今やっていることに関して、警察としてどう体制的に整えていこうとしているのか。現状の、例えば佐世保事件があった佐世保署でどのような陣容でやっているのか等含めて、お聞かせいただきたいと思います。

巽政府参考人 ただいま議員御指摘のとおり、各警察署における銃砲行政担当の職員は決して十分とは言えない状況でございます。

今お話のありました、長崎県の佐世保警察署の人員でございますけれども、この佐世保警察署の生活安全課において猟銃等に関する許可事務を担当している職員、三名おりますが、これは銃刀法専従ということではございませんで、風営適正化法でありますとか、古物営業法とか、こういった事務もあわせて担当している、こういう状況でございます。

それで、今御質問のありました、今後どのような体制で警察として銃砲行政の強化に臨んでいくのかという御質問でございますけれども、これは、平成十三年から平成十九年にかけて、全国で約二万三千人の増員をいただいているところでございます。それぞれの各都道府県警察において有効に活用されているところでございますが、こういった人員につきましては、その時々の事務等に応じまして、ある意味弾力的に運用をいたしまして、必要なところに必要なときには人を配置する、あるいはそちらの方で使うというような運用の仕方、これが必要になってくるんだろうというふうに思っております。

そういう意味では、より一層効率的な人員の運用、それからまたさらに、それ以上に必要な体制につきましては、今後とも引き続き検討していく必要があるだろうというふうに思っておりますので、今回のこの改正法が成立いたしましたら、やはり、それに伴う事務を処理するための人員といったものについても、人事当局とも相談させていただきながら検討させていただきたいというふうに思っております。

吉良委員 交番があって、いわゆるお巡りさんが頻繁にパトロールをしているところは恐らく比較的犯罪が少ないと同じように、さっき言った、立入検査等含めて頻繁に調査に回ることができれば、帳簿と実態との把握を含め、また今回の欠格事由のおそれがあるような人を把握する、こういうこともできるようになると思っております。確かに、警察官自体の増員というのが、今、二万三千人ですか、認められたということでありますけれども、私も断言めいたことは言えませんが、例えば警察OB、警察事務員も含めたOBを、嘱託なのか、どういう形の雇用なのか、また契約なのか別にしまして、そういう方々をある意味ではこの銃砲刀剣取り締まりの専任として、さっき言いました、頻繁にパトロールできるような形で状況把握をしていく、立入検査をしていく、このようなことが考えられるんではないかというように思っていますけれども、その点についてはいかがでしょうか。

巽政府参考人 警察職員OBの活用につきましては、今、全国でトータル約一万人活用しておりまして、そのうち、内訳的に一番多いのは交番相談員というふうになっております。やはり、こういった生活安全部門においてもOBを活用しているということもございますので、そういう意味で、今先生御指摘のありましたように、猟銃等の所持者に対する監督強化というような観点で警察のOBを活用するということについても幅広く検討していきたいというように思っております。

吉良委員 次に、ちょっと細かくなりますけれども、調査を行う必要が出てきたと認められる場合に、当該銃砲を三十日間保管できるというふうに改正をされているわけでありますが、三十日ということで日数を区切った理由というのは何なんでしょうか。

巽政府参考人 これにつきましては、これまで具体的な条文はなかったわけでございますけれども、同種の事案が起きたときにも必要な調査というのはやったりしていたわけでございます。具体的な事案にもよりますけれども、現在の体制を考えてみますと、約三十日間程度の調査を行えば、銃砲所持者が他人の生命身体等を害するおそれがあると認めるに足りる相当な理由がある者に該当するかどうか、ほぼ判断ができるんではないかというふうに考えているところでございます。

そして、この改正案の十三条の三でございますけれども、この規定は、いまだ取り消し事由が発生しない段階において銃砲所持者に対して銃砲の提出を命ずるということで、銃砲所持者の権利を大きく制約する性格の規定でございますので、そういう観点から保管期間については必要最小限にとどめる、こういうことで考えまして三十日間にしたということでございます。

吉良委員 三十日にした理由ということはそれなりにわかりましたけれども、今回の場合は、もろもろ人の生命に危害を加える、または自殺をするおそれがある人たちも取り締まり強化の対象になっているわけで、なかなか目に見える人たちばかりではないということを考えますと、それからまた、さっき言った陣容にもよるというふうに思っていますので、三十日という原則を置くことはいいんですけれども、例えば、特別な事由、理由のある場合については六十日間さらに延長できるとか、というのは、その間保管できるわけですから。私も三十日という原則を設けることに異存はないんですけれども、特別な事由、それをどういう要件にするかというのは別にしまして、延長することができるとしてはどうかというふうに思っておりますが、いかがでしょうか。

巽政府参考人 御指摘のように、確かに延長をするという選択肢もあるんだろうというふうには考えておりますけれども、逆に申しますと、この疑いのある段階でいろいろな調査を行うわけでありますが、今回のこの改正案で、いろいろな権限規定を定めさせていただいておりますので、そういった規定をフルに活用して、調査は三十日で終わるものだという原則にして各都道府県警察が運用をしていく、これがやはり必要なことじゃないんだろうかと。延長の規定を設けますと、往々にしてなかなか三十日で終わらない、延びてしまうというようなこともあり得ることでもございますので、逆の言い方になるかもしれませんけれども、三十日を区切ってその間できっちりと与えられた権限を使いながら調査をしていく、このように考えているところでございます。

吉良委員 ごもっともな答弁で、それはわかるんですけれども、一方で、その調査をする体制と先ほど来言っていますけれども、これとのバランスだというふうに思っておるんですね。ですから、ずるずると調査期間を設けさせないというか、その辺、各県警に縛りを設けるという意味では趣旨には賛成しますけれども、ただ、それも体制次第だろうというふうに思っておりますので、今後その体制と延長事由、その要件を厳格化することによって、ただずるずると延ばすことはさせないということにもできるかと思いますので、その辺の検討もお願いをしたいというふうに思っております。

次に、インターネット等相対しない取引による銃砲の引き渡しについて、本人確認をどうやって担保していくのかということについてお聞きしたいと思うのですが、その前に現状、相対ではないインターネット等の取引でどの程度取引が行われているのか、その辺について、ちょっとまだ詳細についてまでの質問通告はしていなかったのですが、おわかりになれば。

巽政府参考人 経産省の調べでインターネットで販売をしている業者が数業者あるということは承知しておりますけれども、具体的に何丁というところについては私どもとしても把握はしておりません。

吉良委員 この前、インターネットでの取引については、売り手、銃砲店が許可証をきちんと提示を求めて、許可証を確認した上で発送するというふうになっていると承知しておりますが、ただ今度、受け取るときに確実に、その許可証を持っている、許可証対象者に渡るかどうかという保証が現在ないということが一点。

それからもう一点は、中古銃砲等で個人から個人へインターネットで取引をされるという事例があるやに聞いております。その際はなおのこと本人確認が難しくなる。この点について、確実に許可証を持っている本人に渡る、銃砲店での相対ではなくてネット経由で販売する場合の本人確認について、今警察庁の方でどう考えておられるのか、お聞きしたいと思います。

巽政府参考人 インターネットを通じての銃砲の売買の関係でございますが、私どもで今指導しておりますのは、まずその猟銃等を譲り受けたい旨の申し込みがあった場合に、氏名、住所、猟銃等の種類等を確認して許可証のコピーを作成しておくように依頼をする。それで、購入者にその許可証の原本を売る人のところに送付させる、そしてその申し込みの際の確認事項とそごとか矛盾がないかを確認していただく。

それから、実際に売る人が送るわけでありますが、猟銃等を引き渡す際には、運送事業者の配送担当者が購入者から、あらかじめ作成を依頼しておきましたけれども、その許可証のコピーとともに、運転免許証の原本の提示を受けまして、これによって本人確認をする、本人確認ができなければ商品の引き渡しはしない、こういうようなサービスを利用していただくということで、このような措置をとることによりまして購入者が許可所持者であるかを確認していただく。そして、このことにつきましては、業者と個人、あるいは業者と業者間だけでなくて個人間の取引についても同様の方法をとるように指導をしているところでございます。

吉良委員 これも規定はわかるんですけれども、本当に現場で必ずそういう照合が行われて引き渡しが行われているのか、その辺について、正直どこまでつかまれているのかというのはわかりませんし、ここに本当に悪意があった場合、それこそ、長芋か何かですと書いて、別に特別な引き渡し時の確認がなくても譲り渡したりするようなおそれもあるというふうに思っていますので、最後に引き渡すときは必ず相対にしていくという方法が一つあろうかと思っているんですね。

では、相対して直接本人確認をして目の前で引き渡すという方法として、一つ考えられるのは銃砲店でありましょうし、もう一つは今回の猟銃安全指導委員制度を設けましたけれども、この人格者、人望のある方のところに送ってその方からというようなことが考えられると思っているのですが、まず一番確実なのは銃砲店かと思っております。その意味で、現在、銃砲店が全国にどれぐらいの数があるのか、また、一つ一つの都道府県の大方の分布状況がどれほどなのか、お聞きしたいと思います。

立岡政府参考人 お答えいたします。

まず、数でございますけれども、全国の猟銃等販売許可事業者数、これは六百八十六でございます。それで、分布でございますけれども、すべての都道府県に所在してございますが、便宜ブロックごとにイメージを申し上げますと、事業者数は北海道で五十二、東北で八十七、関東二百四十七、中部五十二、近畿七十一、中国五十二、四国四十五、九州七十八、沖縄二というような分布になっているところでございます。

吉良委員 この辺は先ほど言いました、今数字を伺いますと、一県当たり十から二十ぐらいだと思いますけれども、山間部で鳥獣対策での使用頻度が増していくことを考えたら、郡部に需要が多くて銃砲店はそれほど分布していないということになると、負担をかけることになるかもしれませんけれども、通常は、銃砲店に行って購入するのが普通。インターネット等特別な取引をする人は、それなりの意図を持って、最初の申し込みが直接相対でない場合はそういう御足労をお願いするということで、先ほど言いました、最後の引き渡しは必ず本人を目の前で確認しての引き渡しにするという方法が必要ではないかというふうに思っております。その意味では、インターネット等の取引でも、必ず拠点、その代表格として銃砲店で引き渡させるというような取り組みも必要かというふうに思っております。

もう時間が参りましたけれども、私ども民主党としては、この法案については、とにかく、人の生命を守るということについては、多少ハードルを高くしてでも、多少不便をお願いしてでも安全を確保していくということを考えておりますので、この委員会での質疑、それからまた与野党での協議を通じて、人の安全を守る、それをどう担保していくかということを、議論、修正しながら進めていきたいというふうに思っていますので、そのことをお願いして、質問を終わります。

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