No.025 169回国会「衆議院 内閣委員会 17号」 2008年05月21日
⑦平成20年5月21日 内閣委員会
○吉良委員 民主党の吉良州司でございます。
今ちょっとここで問題になっておりますが、我々民主党としては、今回出された法案、もちろん百点満点ではないと思っておりますけれども、それでも、これまで牙城とされた公務員制度にメスを入れていかん、より国家のために尽くす公務員を育てていこうという制度については多とする立場でもありますが、与党側がこれだけ欠席をして、成立させようとする意思をほとんど感じられないということについては、まず強く抗議をしたいと思っております。
その上で質問をさせていただきますが、きょう私の質問は、一つは、優秀な人材とは何か、本当に真に国家に尽くす人材の登用、育成とは何かというある意味では哲学的な部分と、それからまたかなり細かな実務的な部分と、二つに分けて質問をしたいというふうに思っています。といいますのは、同僚議員が問題点についてはかなり指摘をしておりますので、これまで余り指摘をされてこなかった点を中心に質問をさせていただきたい、このように思っております。
まず、この制度、この法案を提出する中で、優秀な人材、国にまた国民に奉仕するという高い倫理観を持った人材を採用、育成、登用していこう、こういうことでございますけれども、渡辺大臣が考える優秀な人材というその人材像は一体いかなるものなんでしょうか。
○渡辺国務大臣 日本の官吏制度は、明治の初期に当時の近代国家の最もすぐれたものを導入してつくったわけであります。まさしく、坂の上の雲を追いかける有能な若者を家柄や身分、門地にとらわれずに登用していく、大変すぐれた制度であったかと思います。
残念ながら、準戦時体制を通じて政党が否定され、政治が排除され、究極の官僚主導体制が一九四〇年前後にでき上がったわけであります。GHQの占領時代をくぐり抜けて、こうした官僚主導体制が戦後も続いてまいりました。高度成長時代には、こうした統制型、官僚主導型、中央集権型のシステムというのは非常にうまく機能したのでありましょうが、ベルリンの壁崩壊以降の世界が一体化をしていく中で、残念ながら、我が国官僚制度が相当時代おくれになってしまったものと思います。したがって、せっかく有能で知的レベルの高い官僚が公務の世界に入ってきても、システムそのものが相当時代おくれになってしまっているということも、今日の官僚制度、国家公務員制度に対する国民の不信の大きな原因ではないでしょうか。
したがって、我々は、時代に合わせた国家公務員制度を再構築することにより国民の信頼を回復する、まさにこのことは、公務の世界に高い志を持って入ってくる人々の誇りと情熱の基礎となるものだと考えるところでございます。
今回、時代に合わせた制度に変えるためのいろいろな柱を設け、プログラム法としての規定を御提出したところでございます。
○吉良委員 詳細な答弁、ありがとうございます。
私自身も司馬遼太郎先生の「坂の上の雲」が大好きで何回も読んでおりますが、今渡辺大臣がおっしゃったように、ある意味で、我々の先達が明治の国家をつくり上げた、それも国家に対する危機感を旺盛に持った人たちが、官僚中心にそれこそ厳しい国際社会の中で生き抜くための国家をつくり上げてきた。ところが、日露戦争で勝ったと、本当は勝っていないんだけれども勘違いして、その後せっかくつくり上げた国家を滅ぼしてしまった。
戦後も、ある意味では、私自身も実は今野党におりながら常々言っているのは、あの戦後の食べるもののなかったような時代を、きょうあす食べるに困らない国にする、そのために大貢献したのは自民党さんでもあり、それを補佐した官僚制度だ、ここまで言い切っております。ただし、今まさにおっしゃった、ベルリンの壁あたりから、本来変えていかなければいけなかったのを変え切れずに、今これだけの塗炭の苦しみを国民に味わわせているその原因が、申しわけないですけれども、また自民党であり官僚だ、このように私自身は申し上げておるんですね。
では、なぜある時期まで官僚が優秀だとも言われ、かつ高い倫理を持ってこの国をリードしてきたか。私自身は、ある意味で旧制高校というものの存在が非常に大きいというふうに思っているんです。旧制高校というのは、本当にただ頭がいいとか勉強ができるとかいうようなレベルではなくて、深い心の中までリーダーとは何ぞやということを教えられもし、徹底的に仲間と議論をし、そして国民に対するまさに奉仕者としての、エリートという意識は持っているんだけれども、その責任感に裏づけされて、必ず国民に恩返しをする、そういう高い志、倫理を旧制高校がはぐくんでいたというふうに思っているんですね。
ある意味で戦後の公務員制度がうまくいったのは、その旧制高校を出られた方が戦後のあの苦しい中でまさにリーダーシップを発揮されていた時代、また、新制の大学制度になったけれども旧制高校を出られた方から直接の薫陶を受けた人たち、この人たちが官の中心であった時代までは、私は、大きな問題もなかったし、この日本をうまくリードしてきたというふうに思っているんですね。
まず、この点についての、私の今の見解に対する大臣の感想を短くお答えいただければ幸いです。
○渡辺国務大臣 やはり国家の公務員として、モレールの高さ、能力の高さ、ともに必要であるかと思います。
今回の改革においては、一人一人の職員がその能力を磨きつつ、国民の立場に立って、責任を自覚し、誇りを持って職務を遂行するという姿が目指す国家公務員像であります。そうなり得るような高い気概、使命感及び倫理観を持った、国民に信頼される人物に公務員になっていただかなければなりません。そのためのいろいろな教育、また、任用後の能力を高めていく研さん、こういったことについても、大いに失敗の教訓と歴史を踏まえて検討をしていくべきものと考えます。
○吉良委員 まず、そういう高い、今モレールというかモラール、モラルとモラールと私はいつも言うんですけれども、それを持った人を採用する。
先ほど言いましたように、今、我が国に旧制高校のような仕組みを持ったところはもはやなくなったわけでありますね。そういう中で、本当に国家のため、国民のために尽くす高いモラルとモラールを持った人をどうやって選んでいくのか。総論でもあり各論でもあるんですけれども。
残念ながら、残念ながらといいますか、公務員になる方々というのは、これまで、ある特定の国立大学、また、ある一定の私立大学の方々が結果的に結構多かったわけですね。私は、リーダーというのは、ある意味では十八歳ぐらいまでに大方の資質というのが固まって、それからいろいろな薫陶を受けて、二十代半ばぐらいまでに大方その資質が固まってくる。それが開花するかどうかは努力ですけれども。 そういう意味で、そういう有名大学に行くような人たちというのは有名高校出身者が非常に多くなって、極端に言うと、有名高校というと、例えば、クラスの中で一度も学級委員長をやったことがない、生徒会長をやったことがない、野球部の部長をやったことがない、餓鬼大将はもちろんやったことがないという人が、ある日突然有名大学に入り、またそれから、総合職ではないですけれども、試験に通っていきなり、はい、リーダーです、これをやられるわけですよね。しかも、さっき言った旧制高校を出られたような方からの直接の薫陶を受けられなくなってしまう。
そういう意味で、どうやって高いモラルとモラールを持った人を発掘し、採用するのか。今言った、総論でもあり各論でもあるんですけれども、その辺については、大臣、どういうふうにお考えでしょうか。
○渡辺国務大臣 まさにこういうリーダー育成というのは、現在の日本において何が欠けているのか、そしてあるべき姿は何か、歴史を検証してみることによって、歴史を振り返ってみることによって、その中に答えが書いてあったりすることがあるわけでございます。そうした検証をしながら、新しい国家公務員像のもとに新しい制度をつくっていく必要性を私も共有しているところであります。
○吉良委員 哲学部分については以上のような形にさせてもらいたいと思っているんですが、この後は、かなり細かな点も踏まえて突っ込んでいきたいと思っています。
まず、私は、公務員制度といいますか、官と民を語るときにやはり一番問題なのは、どうしても、特に官の側に官尊民卑の発想が残っているということだと思っています。私も民間におりましたので、もう嫌というほどその辺のところを感じさせてもらっております。
例えば、それに恨みを持っているとかいうことではないんですけれども、某経済官庁から、ある地域のプロジェクトについてヒアリングをしたいということで、民間の方は常務を筆頭に担当部長、課長がざっと押し寄せてミーティングに出る、ところが、説明している最中、三十そこらぐらいの課長補佐とかが後ろを向いて向こうを見ながらうんうんと聞いている、こういうようなことが実際まかり通っているんですね。それでも民間は、このやろうと思いながらも、いろいろな形で官に支援をしてもらわなければいけないという中で、じっとこらえつつ、そういう対応にも耐えてきている。
こういう官尊民卑という風土がある中で、私は、民間との人材交流、公募も含めた民間からの登用、これは大変評価をしておるのでありますが、実際問題として、どうやって民間からそういう本当に優秀な、今までは民間だったけれどもこれからは国家に尽くすというような人を採用し登用していくのか、そこは大変重要なことだというふうに思っておるんです。
そういう中で、まずずばりと聞きますが、民間から来た人が事務次官になるという可能性は十分あるわけですね。
○渡辺国務大臣 今回の基本法においては、民間中途採用というコースからも幹部職員になれる道を開いておりますので、当然、民間中途採用者がトップに上り詰めるということは想定されるところであります。
○吉良委員 今大臣がいみじくも中途採用という言い方をされましたが、法案の中にも中途採用ということで出ておるんですね。細かなことですけれども、この中途採用という言葉自体が、新卒が正規採用であって、中途採用というのは例外採用なんだということにもなりかねないんですね。非常に細かなことですけれども、これは法案内の言葉遣いそのものも変えるべきだというふうに思いますよ。
これを見ますと、「係長以上の職への採用を目的とした採用試験」と書いていますから、幹部職員、また幹部職員候補の例えば採用だとか、そういう形にすべきだとも思っていますし、かつ、よく最近は、三年以内のことを第二新卒というような言葉もあります。公務員の場合は、相当長い間、ある意味での第二新卒的な扱いがあると思うんですね。たまたま、中途採用は係長以上というふうにこの法案の中には出ておりますけれども、まず多様な人材、特に民間で、ある意味では修行をしてきた人を今度はお国のために使えるわけですから、中途というような、何か例外採用というような考え方はやめるべきだと思いますけれども、いかがでしょうか。
○渡辺国務大臣 今回の基本法案におきましては、中途採用試験として、係長以上の職への採用を目的とした採用試験の区分を設けております。この趣旨は、これまでの採用試験が実質的に係員採用試験であることを踏まえて、民間企業などで勤務経験を積んだ人材が、その経験を生かして、公務の世界に入ってくるための多様な入り口を整備することにございます。
現在の採用試験では必ずしも新卒の採用を前提としているわけではございませんが、今回の基本法案においては、中途採用試験、言葉はほかに思いつきませんでしたのでこういう言葉にしてございますけれども、中途採用試験の創設、国の行政機関の内外からの公募による任用の推進、官民の人材交流の推進などを通じて、新卒採用にとらわれずに、多様な能力及び経験を持つ人材を登用し、育成することを基本理念としているところであります。
〔委員長退席、江崎(洋)委員長代理着席〕
○吉良委員 私自身が中途ということにこだわりますのは、この法案、これまでの審議の中でもいろいろ議論になっていますキャリア採用のよかった部分、それから悪弊の部分、役人の方にとってみれば年次というのは絶対でありますから、やはり新卒なりを重視したところに年次というのがあって、その年次を前提とした、いろいろな意味での人事管理、ローテーションが行われる。そういう中で中途という扱いは、まさにその年次を固定化するものである、こういう観点から申し上げておるんです。
だから、そういう意味で、大臣もこれまで答弁されていることからすると、今、私の思いに近い答弁がございましたけれども、本当に、年次、新卒、中途というような観念を取っ払う。特に、ここで言う中途というのは主に民間からの人が多くなろうかと思っております。そういう意味で、その人たちが役所に入って肩身の狭い思いをすることなく、また堂々と事務次官を目指していけるような仕組みというものをぜひつくっていただきたいと思っておるんです。
では、仮の話で恐縮ですけれども、民間出身者が係長以上の採用試験で採用されて、その後の人事管理、そしてその中でも、幹部候補育成課程対象者になっていく具体的な手続といいますか、イメージというのはどういうことになるんでしょうか。
○渡辺国務大臣 昨年、国家公務員法改正法の議論の中で私が時たま出した例でございますが、例えば、三十で民間から公務の世界に入っていきたいという有能な若者がいたといたします。いきなり課長補佐に任用をされる。幹部候補育成課程に乗り、そのプログラムをこなしながら、例えばもう三十後半には、幹部職員にしてもいいではないか、そういう評価をされ、幹部職員の任用、内閣人事庁の適格性審査も受けながら、あるいは内閣人事庁の玉として登録されて、幹部職員に三十代後半で既になる、四十そこそこで事務次官に上り詰める、こういうことも可能になるのが今回の基本法の発想でございます。
そういう時代がいきなり到来するわけではございませんけれども、各省の年功序列に基づいた仲間内人事を打破していこうというのは、まさに今回の基本法の大きな柱の一つであります。
○吉良委員 今答弁いただいた部分をもう少し各論で、本当にあり得るのかということでお聞きしてみたいと思うんです。
さっき言った幹部候補育成課程の対象者が、「民間企業その他の法人における勤務の機会を付与するよう努めるものとし、」というのが第七条であるわけですけれども、どれぐらいの期間の民間勤務を想定しているのか。例えば二年なら二年、三年なら三年、民間企業で勤めるわけですから、当然その間は、現場としての第一次評定というのは民間企業が行うわけですね。いや、もしくはそうしないということなのか、絶えず第二次評価者としての人事管理庁なり役所側がその人事評定を行うのか。
一定期間民間にいる場合、その期間の当該者に対する人事評価はだれがするんでしょうか。そして、その評価を、その人の役所内におけるキャリアまたは人事評価にどの程度反映されるんでしょうか。
○株丹政府参考人 評価の関係でございます。
特に幹部候補育成課程対象者につきまして、必ずということではございませんけれども、当然のことながら、いろいろな形での経験を積むということで、民間企業等での勤務についても努力をするということでございます。これにつきまして、民間企業等でございますので、そこでの勤務について受けた評価については、基本的には民間企業での評価ということになろうかと思います。
しかしながら、そこが民間企業での評価にとどまることなく、全体として、幹部候補育成課程の対象者としてのその後の人事評価につきましても、適切に活用していく必要があるというふうに考えてございます。
ただ、具体的な方法につきましては、基本法成立後に幹部候補育成課程を具体的に制度設計してまいります。その中で、さらに詳しく検討してまいるということになろうかと存じております。
○吉良委員 人の評価というのは、その現場、現場で、与えられた仕事の中でどれだけその目的を達成する意欲を持ってやるかというところで出てくるわけですよね。当然、サラリーマンである以上は、やはり上司といいますか自分を評価する人間というものをいやが応でも気にするわけですね。民間企業が役所から来た候補者に対して評価することを全く無視するのであれば、ある意味ではその人も本気にならない、腰かけにしかならないし、民間側としてもそんな人に来られても困るということになります。一方ではこの問題がある。
ところが一方で、自分は優秀な役人として入ったつもりなんだけれども、某民間企業に入ったら物すごい悪い点数をつけられて、それが将来的な官での出世の妨げになったということになれば、みんなが民間企業になんか行きたくない、こういうふうになる可能性もあるわけです。
ただ、ここで言われている官民交流だとか積極的な民間登用だとか、それから私が最初に言いました官尊民卑、やはり国家国民のために尽くす、しかも国民の目線で、国民の奉仕者として尽くすという以上は、役所にいようが民間にいようがきちっと評価をされる人間でなければいけない、私はこのように思っているんですね。
だから、そういう意味で、第一次評価、民間における評価というものがきちっと役所のトータルのキャリアの中で反映されるのかどうか、再度確認をさせてください。
○株丹政府参考人 再度のお尋ねでございます。
実は、基本法の射程といいますのは、全体として公務員制度につきまして大きな絵を描くということが一番大事なところだと思います。そういう意味では、今の委員の御指摘は大変重要な部分だと私も思いますけれども、必ずしも的確に、完全に答え切るというのは少し難しい部分がございます。
今の人事評価に関します基本は、あくまでもそこの職場で発揮をしましたもの、あるいはその本人が持っております能力について的確に評価をして、その後の昇格あるいはそのときの給与等への反映ということを前提としてございますので、そういう意味では、民間企業に出ておられるときの民間企業における活躍についての評価というのは、そこの場で行われ、そこの場で基本的には参考にされるということでございますけれども、他方で、委員御指摘のように、しからば、出ていってたまたま、必ずしも十全な成果を上げることができなかったのでその後に非常に大きな支障があるということであってはいけないというふうに存じております。
いずれにしましても、基本につきましては今申し上げたようなことでございますけれども、民間企業等で活躍をした際の評価についても適切に活用していくという必要があるというふうに存じておりまして、その具体の方法については基本法成立後にさらに詳細に検討させていただきたいと存じます。
○吉良委員 確かに、私の指摘はこの基本法が成立した後の問題かもしれませんけれども、先ほど言いました、やはりこの国が官主導、中央集権ということでいろいろ弊害が起こっているからこそこの法案も出てきているわけであります。そういう意味では、この法案を契機に官尊民卑の弊害自体を取り除いていく、そういう積極的な方向を出していく上でも私が指摘させてもらった問題は重要だと思っておりますので、細部にわたってはその次の段階かもしれませんけれども、この基本法の段階で、ぜひ大臣、踏まえた上での対応をお願いしたいというふうに思います。
実は、今申し上げた問題は、今たまたま民間と官という言い方をさせてもらいましたが、人事の評価でありますから、当然、現場の評価、よく言う一次評定と、二次評定というのがあるわけですね。 これまでの役所の人事、特に幹部候補の役所の人事というのは、年次が逆転するということはほとんどない。最後の、次官だ、審議官だとなったぐらいのときに政治的な理由であるぐらいで、それまで年次の逆転というのはほとんどないわけですから、その年次年次の中で、極端に言ったら、二十人の中でだれが一番、だれが二番、だれが二十番とつければ、おのずと全体の人事評価ができたと思うんですけれども、先ほど大臣の答弁にもございましたように、もう今後は、今までのキャリア制度とは違うんだ、総合職といえども幹部にならない可能性もあるということですし、逆に言えば、一般職からも、専門職からも幹部になる、こういうことですよね。
とするならば、評価というものが、現場の評価、総合職になったとしても上司がいて、そしてその上司の評価を受ける、と同時に第二次評価がある。今までは、今言いましたように、キャリア制度の中では、基本的に年次年次のキャリアの中での第二次評定が行われていたと思うんですが、大臣の答弁の延長からすると、恐らく職位に対しての、例えば課長職なら課長職の中でどうなのかという評価になるはずなんですね。そこには総合職もいれば、一般職もいる、専門職もいる、こういうふうになるわけです。
その一次評定と二次評定、私が心配するのは、一次評定は現場ですから、それこそありのままの評定をするでしょうけれども、二次評定の段階で、やはりキャリア制度の名残が残ってしまうのではないか。総合職ということ、また課程対象者ということで、それが残ってしまうのではないかと思いますけれども、この辺についてはどうなのか。そうではないというなら、決意をお伺いしたいと思います。
〔江崎(洋)委員長代理退席、委員長着席〕
○株丹政府参考人 具体の人事評価のありようにつきましての御質問でございます。
今御指摘ございましたように、具体の人事評価、まだ最終的に決まっているわけでございませんけれども、第一次的に評価をし、さらにその上で調整をして、最終的にこれでよしという確認をする二段階なりという形での評価が行われるというふうに存じておりますし、その場合には、その対象となる被評価者が総合職であろうが一般職であろうが、そういうこととは全く関係なしに、同じ職位なら職位のグループの中で行われるものというふうに考えてございますし、それについての人事評価の適正というのはきちんと確保されなければいけない。その際に、一次あるいは二次、どの段階におきましても同じように適切に評価されるべきものというふうに考えてございます。
○吉良委員 その評価にもかかわってくることなんですが、少し突っ込みまして、この法案の中には、幹部職員まで含めて各府省とそれから人事庁に併任をするということになっているわけですね。
細野議員は本国という言い方をしていましたけれども、私は本籍地、現住所という言い方をさせてもらいますが、本籍地が国であるべし、本籍地が内閣人事庁であるべし、これは当然いいことではあるんですが、現実問題として、先ほど言いました、私は理想を言えば幾らでも言います。けれども一方で、人ですから、人間ですから、やはり出世欲もあれば、出世をすることによる事業遂行欲、達成感を持ちたい、こういう思いが当然あると思います。そういう中にあって、やはり本籍地というのはおのずとその各個人が探していくことになるというふうに思っているんです。
ですから、内閣人事庁で採用されたとしても、この法案の中にもあるように、内閣人事庁でずっと戦略スタッフとしてやるとも限らない。ここにもあるように、他府省にも回っていく、しかも国の内外の機関にも回っていく、国際機関にも回っていく、そして民間にも回っていく可能性がある。こうなったときに、実際、本籍地というものが、いかに形式は内閣人事庁であっても、例えば二十年、幹部候補になるまで何年か知りませんけれども、幹部候補になったぐらいの時点で、いわゆる何とか省の長い人、人事庁にはほとんど行かない人と、その逆のケースによって、やはり本籍地の意識の違いが出てくるというふうに思っているんです。それが今除去しようとしている縦割りの弊害をまた呼び起こしてしまうことになる。
もちろん、それを除去しようという意図を持ってつくられているということは多とします。けれども、今私が申し上げたような現実に即したときに、一人一人そのキャリアを見たときに、キャリアディベロップメントを見たときに、どうしても本籍地ができてしまうであろうということについてはどうお考えかということと、さらにその弊害をなくすことについてどうお考えか、その辺をちょっとお聞かせいただきたいと思います。
○渡辺国務大臣 今回の法案では、幹部職員については内閣人事庁及び各府省の両方に所属すると規定をいたしております。具体的な制度設計は基本法成立後に行うという趣旨でございますが、基本的な理念としては、今の現行制度のように、採用から人材育成、幹部登用、そして退職後の天下りまでそれぞれ各省が面倒を見る、こういうやり方から出てくる弊害が非常に大きいのではないかと考えたわけでございます。
そこで、例えば総合職については内閣人事庁採用、内閣人事庁の仕事自体というのは人事をやるだけでございますから、そこにいるというわけではございませんけれども、要するに、内閣官僚ですよ、そういうDNAを埋め込んでいこうという趣旨でございます。
したがって、本籍、現住所という概念でいけば、内閣の採用なんだと。内閣というのは概念上、総理と大臣の合議体でございますので、内閣所属というぐあいにはまいりませんので、内閣人事庁採用というような位置づけにしたところでございます。
○吉良委員 その問題にも関連してくるんですが、先ほど細野同僚議員から天下りという問題について指摘されていましたが、五条の二になるんですか、「国家戦略スタッフ及び政務スタッフの任用等については、次に定めるところによるものとする」という中で、「給与その他の処遇及び退任後の扱いについて、それぞれの職務の特性に応じた適切なものとすること。」こういう内容になっているわけなんです。
恐らく、例えば三十代とか四十代のときには一時的には国家戦略スタッフとしているけれども、その任が終わったときに宙に浮くようなことはなくて、必ずきちっと受け皿がありますよという意図だと思うし、一方で、いきなりぽんと変えるわけにはいかないので、今の制度と理想とする制度との経過措置という両面をにらんだ記述なんだろうと私自身は理解をしておるんです。
一つ言えることは、退職直前の方が国家戦略スタッフなり政務スタッフにおられるとしたときに、この記述でいくと、その退任後の扱いについて、それぞれの職務の特性に応じ適切に処置をしていくということになると、これはこの法の中でその方々を退職後もきちっと処遇、処遇といいますか、だから天下りも踏まえて処遇するというふうに解釈できないことはないんですよ。そうではないということをちょっと確認させていただきたいと思います。
○渡辺国務大臣 今回の基本法では、まさに日本型政治任用とでも言えそうな分野というのを考えてみたわけでございます。講学上、政治任用というのは身分保障がつかないとされています。それに対して、いわゆるメリトクラシーという公務員制度のもとでは身分保障がつく。身分保障をつけながら政治任用的任用を行うのを自由任用と呼ぶ場合もございます。
今回の国家戦略スタッフというのは、内閣総理大臣の命を受け、内閣の重要政策のうち特定の企画立案を行う、内閣総理大臣を補佐する職でございます。一方、政務スタッフは、大臣の命を受けて、特定の政策の企画立案に関して大臣を補佐するものでございます。いずれも高度の専門知識、経験、能力が必要でございます。
こういう人材を確保するためには、公募を活用することなどによって行政機構の内外から、官民から人材を機動的に登用する必要がございます。また、給与や兼業に関する柔軟な勤務形態の保障なども、その処遇について適切なものにしていく必要もございます。
こういう観点に立って、退任後の処遇について、例えば国家戦略スタッフを特別職とした場合、その任を終えた後、再び一般職の国家公務員として勤務を継続するための仕組みを整備することなどが考えられるわけでございます。決して天下りの面倒を見るということを想定したものではございません。
○吉良委員 その点についてはわかりました。
ちょっと今まで触れていなかったことについて、細かくなりますが条文に基づいて質問をしたいと思っているんです。
「国際社会の中で国益を全うし得る高い能力を有する人材」、これは私も大賛成なのでありますが、具体的に、国際対応に重点を置いた採用とその育成というものは、どういうところを見て、何をもって国際対応、国際社会の中での国益を全うし得る高い能力というふうに判断をしようとしているのか、その辺についてお聞かせください。
○渡辺国務大臣 これだけ世界が一体化をしてまいりますと、当然、国家公務員の仕事の中に国際社会との接触が非常に大きな部分を占める分野がたくさん出てまいるわけでございます。そういった国際社会の中での国益を全うするための、国際的に十分通用する能力を有する人材を確保し、育成していくことについても、今回、基本法案の策定の中で検討をしたわけでございます。
国際的な視野、高度なコミュニケーション能力、語学、専門的な知識など高い能力を備えた人材、国際社会における交渉においても十分な能力を発揮し得る人材などを考えているところでございます。
○吉良委員 総論としてはわかりました。
すべて言葉で言えば今大臣がお答えになったようなことなんだと思うんですが、それをやるに当たって大事なことは、私自身の感想からいくと、コミュニケーション能力、語学だったり、国際的な視野とかいろいろおっしゃられていましたけれども、やはり一番大事なのは個人を出せるという要素、交渉能力だというふうに思っているんですね。
そういう意味で、またこれも総論にはなりますが、やはり役所の減点主義を排していく、出るくいをどんどん育てていく。それはもちろん国家の方針、政府の方針に逆らったような出過ぎたことをやられたら困るわけですけれども、一方で、減点主義、今言った出るくいをどんどん打っていくような形では、とてもでないけれども国際交渉の場に立てない。
ある意味でコミュニケーション、語学能力は大事ですけれども、それ以上に、まさに自分自身を表に出せるという人が評価されるのが国際社会でありますので、そういう意味では、ここのところは、語学とかいうような、これももちろん大事ですけれども、そこに重点を置くのではなくて、そういう、極端に言ったら、こいつ、くいが出そうだな、くいになりそうだなというような人を採るということと、やはりこの制度を機会に減点主義を排する。なさざるの罪を最も重い罪とするというような風土づくりが必要ではないかと思っておりますけれども、それについてはいかがでしょうか。
○渡辺国務大臣 国際社会で日本の国益を全うするためには、今御指摘のような資質を備えた人材というのは大変有用だと思います。
○吉良委員 最後になりますが、先ほど細野議員が独法に関しての話も最後にされたわけです。これは今度また基本法が終わった段階での議論になるかもしれませんが、官庁の人事というのは実際問題としては、独法だとか財団、社団だとか、先ほどの一時的に民間に行くだとかも含めて、もっと幅広い領域でやられているわけですね。
そういう意味で、いわゆる官周りといいますか、今言った独法、財団、社団、こういうところに対してのこの法案の及ぶところ、ある意味で、極端に言ったら隠れみのに、ここがきつければ一時的に避難とか、そういう直接範囲がどこまで及ぶのか。それによってまた一人一人の対応が違ってくるのではないかということを恐れるんですけれども、どこまでの範囲なのか、最後にお聞かせいただけますか。
○渡辺国務大臣 独法や公益法人改革につきましては、別途、今回の基本法とは別の形で今進めているところでございます。
今回の基本法案におきましては、定年延長等の公務の抜本的なシステムの整備によりまして天下りを構造的なところから断ち切っていこうという発想に基づいているわけでございます。したがって、昨年の天下り規制とワンセットで、天下りの抱えたさまざまな弊害を根絶できるものと考えております。
○吉良委員 もう時間が来ましたので、最後に本当に一言だけ。
私自身、民間出身として、冒頭に言いました、民間で鍛えられた人は本当に専門性を持って、かつ、民間企業といえども国益を考えている人は大変多うございます。そういう人を積極的に登用してほしいということと、その中で、その人たちを生かす意味でも、官尊民卑の風を、悪弊をなくしていただきたいということを申し上げまして、私の質問を終わります。
ありがとうございました。