主張・政策論

2017年5月10日

2017年5月10日 衆議院財務金融委員会

○御法川委員長 次に、吉良州司君。

○吉良委員
民進党の吉良州司でございます。私は外務委員でありますけれども、きょうはこうやって財務金融委員会での質問の機会を与えていただいて、感謝を申し上げます。私が質問に立つときに必ず冒頭申し上げることなんですけれども、私自身がする質疑、提言というものは、私、吉良州司個人の責任においてやっておりまして、必ずしも民進党の正式な見解を代弁するものではないということは事前にお断りさせていただいた上で質問をさせていただきます。
まず最初に取り上げたいことは、成長戦略のかなめでもありますインフラ海外展開。政府は、質の高いインフラ投資、質の高いインフラパートナーシップを推進しています。民主党政権時代の二〇一〇年、私が外務大臣政務官に就任したときに、当時はインフラパッケージ輸出という言い方をしていましたが、これがやはり日本の成長のかなめだという問題意識を持って、かなり取り組んだつもりでいます。
資料の一をごらんください。資料の一は二ページにわたっております。本当は表紙があるんですけれども、この資料の一ページ目、二ページ目というのは、不肖私が大臣政務官のときに、インフラ海外輸出の重要性に鑑みて、政府全体でこのインフラ輸出に対する知見を深めなければいけない、特に外務省、現地の大使はトップセールスをやることになるわけですから、大使、そしてその大使を支える、当時でいえば経済班の方々に、インフラプロジェクトとは何ぞやということを徹底的に理解してもらいたい、その中でも、インフラプロジェクトで非常に重要なファイナンスの仕組みについて理解してもらおうと思い、二十ページぐらいの教科書をつくりまして、その目次を一ページ目に掲載しています。そして、二ページ目に、なぜ教科書のようなものをつくるのかという問題意識を掲げています。その二ページ目の「はじめに」をご覧ください。「新政府が打出した「新成長戦略」及び「インフラ・パッケージ海外展開」において、在外公館の戦略拠点化が明記され、後者については実需のある在外公館にインフラ担当官が指名されることになった。」。多少自画自賛になりますが、専門性を高めるためには、自覚を持ってもらわなきゃいけないということで、このインフラ担当官というものを置けという指示を出したのも私で、実際、担当官が指名されることになりました。そして、その次、「今後の成長戦略及びインフラ・パッケージ海外展開を推進するに当たり、在外公館長による現地トップ・セールスは日本企業支援の決め手になると言っても過言ではない。また、在外公館長を支えながら対企業窓口として現場で支援実務を担うインフラ担当官には高い専門性が要求されることになる。」こういう問題意識。そして、もうひとつの問題意識を披露させていただきます。それは、(3)のところに書いていますが、「新興国や中東など金持ち地域におけるインフラ商談は、」発電、高速鉄道、水、原子力、再生エネルギー等ですが、「国や政府機関がプラントや設備を直接購入するケースが激減している。代わって、「事業権入札」を実施しプロジェクトの建設、資金調達、運営を民間企業に任せる」、いわゆるPPPが増加している。そして、四番目の下段の方に下線を引いてありますが、「インフラ商談における潮流が「輸出から事業投資」に移りつつある今、事業としてのプロジェクトの仕組み、プロジェクトを資金面から支えるプロジェクト・ファイナンスの仕組みを理解することは、インフラ海外展開推進の実務者にとって必須条件である。」。こういう問題意識を持って、プロジェクトの仕組み、そして特に事業権入札、事業型のインフラプロジェクトのキーはファイナンスだ、このことを、現地でトップセールスを行う大使及びそれを支える経済班、後にインフラ担当官となりますが、同時に外務省の経済局の皆さんにこの辺を理解してもらおうと思って、これをつくりました。私自身は、昨年のJBIC法の改正、施行令の改正を高く評価しています。事業型プロジェクトの場合は、ファイナンスがプロジェクトファイナンスという手法になります。これは、借り手の信用力とか、または借り手の親会社の信用力を当てにしてお金を貸すのではなくて、プロジェクトが生み出すキャッシュ、そのキャッシュフローを返済原資として貸し付けるという仕組みがプロジェクトファイナンスです。そういう意味で、昨年のJBIC法の改正、そして施行令の改正によって、JBICが今まで以上にそのプロジェクトにかかわるリスクマネーを供給できるようになったからです。きょうは、それに加えて、新たな資金調達の仕組みを紹介、提案したいと思っています。
まずお聞きしたいことは、今、私が評価していると言いました、JBICが新たにプロジェクトに対するリスクマネーを提供できるようになった、これを含めて、JBICが事業型プロジェクトに対して提供できるメニューについてお答えいただきたいと思います。

○内藤参考人
お答え申し上げます。ただいま御指摘いただきました事業型プロジェクト、日本企業が海外事業投資を行うそういった事業型プロジェクトに対しまして、私ども国際協力銀行は、金融メニューといたしましては、投資金融というものを供与させていただいております。日本企業によるそうした海外における投資事業を後押しするために、まず、プロジェクト実施所在国等における方々との対話というものも活用いたしまして、初期段階から日本企業が参画するプロジェクトの案件形成支援というものも積極的に取り組んでいるところでございます。また、御指摘いただきました、インフラ事業向け融資手法の典型でございますプロジェクトファイナンスでございますけれども、当行の投資金融によるプロジェクトファイナンスというものの実績でございますが、過去五年間で三十件を超えまして、総額で約一・八兆円供与させていただいております。具体的事例といたしましては、例えば電力分野ですとインドネシアの地熱発電プロジェクト、あるいは鉄道分野ではイギリスの都市間高速鉄道プロジェクトといった例がございます。当行は、先ほど御指摘いただきました昨年五月の国際協力銀行法改正、これによりましてプロジェクトボンドの取得という新たな機能も頂戴したわけでございまして、引き続きそういった機能も活用しながら、日本企業の海外事業型プロジェクトを積極的に支援してまいる所存でございす。

○吉良委員
ありがとうございます。JBICが投資金融を通して積極的にそういうリスクマネーを提供するようになって、今お聞きしても、五年間三十件、一・八兆円、しかも電力、鉄道等に提供しているということは非常に評価できると思っています。先ほど申しました、新たに紹介したい仕組みというのは、後段で答弁いただきましたプロジェクトボンドの取得なんです。財務省、金融庁の方は御存じかもしれませんが、きょう改めてここで紹介をさせていただきたいことがございます。それは、米国の証券市場、その証券市場で発行できるルール144Aというボンド市場がございまして、そこにおける、プロジェクト実施者からすれば社債の発行、そしてリスクマネーの提供者からするとボンドの引き受けというマーケットがあって、これを今後日本のインフラ海外展開に活用できないか、そしてJBICの新しくできるようになったプロジェクトのボンド引き受けという形で拡充できないか、こういう問題意識で、きょうこの財務金融委員会で取り上げさせてもらおうと思っています。麻生副総理にお聞きしたいんですが、この質問通告をする前に、この米国証券市場のルール144Aという仕組みは御存じだったでしょうか。

○麻生国務大臣
これは御存じのように、セキュリティーズ・アンド・エクスチェンジ・コミッティー、通称SECと称するんですけれども、これで、いわゆる米国の証券取引法上の中でいろいろルールがあるんですけれども、詳しく知っているわけじゃないですけれども、これはたしか一定規模以上のキャパが要るんですけれども、一定規模以上の、プロの投資家ですな、いわゆる一般的な話じゃなくて。プロの投資家の投資ということをやる場合においては、別にそういうプロの登録がしてある人たちは、証券をあらかじめ当局に登録しないでおいても、少なくとも勧誘やら販売をやれる、可能にするという制度のことを、144Aの対象だとかいう言葉をよく使いますので、それでよく使われる言葉だという程度のことは承知しております。

○吉良委員
ありがとうございます。
実は、お答えいただいたんですけれども、資料二の方にもちょっと用意させていただいていまして、今、総理が御指摘いただいたように、本来、米国の証券市場というのは非常に開示義務のハードルが高い、これでもか、これでもかというぐらいに開示義務を課すことによって、一般の投資家が、これだけ情報公開している中で、きちっとリスク判断して社債を購入してください、というのが基本原則なんです。その例外として、今、総理おっしゃったように、一定の規模を持った、一定の要件を備えた機関投資家、専門的にはクオリファイド・インスティテューショナル・バイヤーズ、QIBといいますけれども、その人たちが相手であれば、要はプロですね、開示内容がさっき言った一般よりも低かったとしても、プロだからきちっとリスク分析できる、しかも一定の規模を持っているということで、信頼ができるということで、クオリファイド・インスティテューショナル・バイヤーズを対象にして、開示義務のハードルを下げた上で社債発行ができる、これがルール144Aです。これによって、非常に大きなメリットが出てきます。それは、米国以外のプロジェクト推進会社が発行した社債を米国市場で売りさばける、こういうメリットがあるわけなんです。次の資料三を見てください。これは各国におけるルール144A債の発行例ということで、これはほんの一部ではありますけれども、日本でも、三井物産、住友銀行、損保ジャパン。三井物産の場合は、プロジェクトファイナンスの一部でありますけれども、住友銀行あたりは、自己資本の充実。米国で幾つか例がありますけれども、やはりプロジェクトに対する資金調達としての社債発行、引き受けというものがここでごらんいただけると思います。
実は、このルール144A市場というものがどれだけ莫大かということを、資料としては載せていないんですが、口頭で申し上げると、一九九〇年から二〇一〇年、ちょっと数字は古いんですが、この二十一年間でどれだけの調達がなされているか一例を申し上げますと、オーストラリア、二千三百五十八億ドル、約二十六兆円。カナダ、千二百九億ドル、約十三兆円。ケイマンアイランドは、御承知のとおりタックスヘイブンの地ですけれども、ケイマンが千八百九十四億ドル、二十一兆円。フランスは千四百三十五億ドル、十六兆円。オランダが千二百五十四億ドル、十四兆円。先ほど鉄道プロジェクトの紹介がありましたが、イギリスでは四千百三十六億ドル、四十六兆円です。米国以外の七十六カ国の合計が二兆六百五十七億ドル、二百三十一兆円。そして、本拠地米国は、何と三兆三千七百十六億ドル、日本円で三百七十七兆円。二〇一〇年以降も拡大していますから、これだけの巨大なマーケットになりつつあるわけです。
ちなみに、日本は、先ほど言った九〇年から二〇一〇年まででは、十六社が二十二案件で発行して百九十一億ドル、ざっと二・一兆円。ドイツが二百四十二億ドル、二・七兆円。こういう状況であります。日本は大幅にこの市場の利用がおくれているということが御理解いただけるかと思います。
実は、かく言う私めが、この市場で、プロジェクトのボンドを発行して資金を調達した経験がございます。資料の四をごらんください。これは本当はもっと複雑なスキームですが、非常に簡略化したものです。メキシコのモンテレーという地がありますが、そこで天然ガスだきの四百八十四メガワットの複合発電所を建設するときに、スイスの大手重電メーカーABBと組みまして、当時私がおりました日商岩井とABBとで五〇%ずつ出資してプロジェクトの遂行会社をケイマンアイランドにつくりました。そこの右側に「クオリファイド インベスターズ」と書いてあるところに、百四十四Aボンド、US二百三十五ミリオンと書いていますが、これを発行しました。そして、一日でこの二百三十五ミリオンを調達できた、こういう経験を持っています。もちろん、一日で調達するにはレーティングの取得が必要ですから、私も、ABBと当時、ファイナンスアドバイザーをやっていた会社と一緒にS&Pとムーディーズに行ってこのプロジェクトのプレゼンテーションをやって、そこでレーティングを取得し、そのレーティングをもとに、社債を発行して、即日販売をしたのです。
ですから、アメリカ国内はもちろんですが、メキシコという地でもできる、三井物産がやったようにインドネシアでもできる。先ほどJBICがリスクマネーを提供できるようになったことを大変私は評価しているということを申し上げましたが、とかく、プロジェクトに協力するということは、何となく、自分が融資をしてリスクもとってあげるということが貢献のように感じられるんです。しかし、一番いいのは、リスクは他人にとってもらって、他人のふんどしでお金を集めてやるのが一番いいんです。だから、そういう意味で、このルール百四十四A市場を使わない手はないということできょうは紹介しているんです。もう一件、資料をご覧ください。次の資料五、これは同じくメキシコで、ロザリートというところで、もう少し大き目の複合発電を、同じくスイスのABBと組んで、全く同じ仕組みで資金調達をしようと思っていたんです。ところが、次のページ、資料六をご覧ください。これは米国のキルパトリック・タウンゼント弁護士事務所の実績表の一部を掲載しているんですが、上の段は「二百三十五ミリオン ルール 百四十四A ファイナンシング」と書いてあり、下の方には、ABBエナジーベンチャーズと日商岩井と書いています。これは144Aで調達できた。その下を見てください。今度は「三百三十五ミリオン ファイナンシング フォー ア 五百四十一メガワット パワー プラント」と書いていますが、これがさっき言った二例目のプロジェクトです。
ところが、これは、下の方に下線を引いていますが、三百三十五ミリオンファイナンシングで、「インクルーディング イクスポート クレジット エージェンシー」となっています。これは、JBICと同じ制度金融、ERGというスイスの制度金融を使いました。実は、ルール144Aをこのプロジェクトでは使えなかったんです。
副総理に聞いていいかな。なぜだか想像がつきますでしょうか。実は、わずか三カ月の間にロシアの金融危機が起こったんです、一九九八年に。金融危機前は、今言ったように一発で調達できたんだけれども、金融危機があると、当然、そういうリスクマネーを引き受けようとする投資家たちが引いてしまうわけです。それで、この仕組みでは調達できなくなりました。それで、急遽、主要な機器がスイスから出てきますので、スイスの制度金融であるERGを使ってファイナンスを完了したわけなんです。ですから、一方では、リスクはできるだけ他人にとってもらおうという意味で、この市場というのは非常に使い勝手がいい。だけれども、一方で、世界的な金融混乱によって成立しない場合もあるということなんです。
ですから、私自身が思うには、一方では、そういう世界的な金融混乱が起こらないときにはできる限りこのルール144Aを利用する。だけれども、何かあったときは、ボンドを引き受けることができるようになったJBICがこのボンドを引き受けることによって、例えば一億ドルなら一億ドルのうちの半分の五千万ドルをJBICが引き受けるということによって、残りのポーション
についてはほかが引き受けやすくなるというような環境をつくる、または、JBICの本来業務である投資金融含めて、JBICの制度金融としてのファイナンスを提供する、こういう仕組みを持っていれば非常に万全だというふうに思っています。そういう意味で、私がきょう紹介し、かつ提案をしたいことが、このルール144Aというものを政府としても、インフラ海外展開においてできるだけ利用できるような環境を整えていくことが一点。そして、JBICのボンド引き受けで、JBICが直接はできないかもしれません、米国に何らかの投資エンティティーをつくるのか、ツーステップローンみたいな形にするのか、いろいろな手法があると思いますけれども、ただ、ボンド引き受けができるようになったJBICがこのルール144Aに基づいて社債の引き受けを行う、こういうことを検討してもらいたい、こういう思いできょう質問に立たせていただいています。いかがでしょうか、大臣。

○麻生国務大臣
基本的に問題ないですよ。何か問題が起きるだろうと期待して言っているのかもしらぬけれども、別に問題ありませんよ、基本的には。御存じのように、日本企業によるインフラの設備輸出というのは、吉良先生のおっしゃるように、なかなかそういったような意識が日本の国内でまずないんですよ。もう議員なんかほとんどありませんしね。だから、この言っている意味をわかっている人は余りいないと思いますよ。これは本当になかなかおもしろい話だと思って、結構、海外にいた人ならわかっている話で、この種の仕事にかかわった経験がありますので意味がわかるんですけれども、これは別に普通の話で、特にそんな特殊な話でもありませんし、国家がかんでいるような大きなプロジェクト輸出、例えば超超臨界とか、そういったどでかい話だと大体この種の話は皆かんできていると思いますので、我々が従来の、間接金融というんですか、そういったような融資というだけではなくて、いわゆる直接金融と言われる、プロジェクトボンドなどもそうだと思いますが、そういったものを利用する、活用するという必要性は極めて高まってきているんだ、私どもはそう思っております。その理由は幾つかありますけれども、日本が持っている資金力もありますし、かてて加えて技術力というもの。例えば超超臨界の石炭なんというのは、御存じのように石炭というのは石油の何十倍も埋蔵量がありますので、そういったようなものを、少なくとも今の段階では使えないんですが、超超臨界にあの技術を使うと、安くて、間違いなく、いろいろな意味で、公害等々のものはきちんと対応ができる。オバマのときは反対でしたけれども、トランプになってから賛成に変わってきていますので。そういったものでは、少なくとも、資金調達手段というものの多様化というのは、これは当然のこととして、それに対する必要性に対応していくということが大切なので、あのJBIC法というものを改正させていただきました背景もそうなんですけれども、あのJBICがプロジェクトボンドというものを取得することを可能ということにした背景がそれであります。
したがって、今後、日本企業が参加するインフラのプロジェクトボンドというものの多様なニーズというものに、こういったようなものがあるんだということをもう少し多くの方々が理解をしていただいて、こういったようなものに、JBICにあるものに相乗りしていこうというような、金が余って貸出先が全然わかっていないような地域銀行なんていうのは大いに乗っかったらどうです
かと一回言ったことがありますけれども、そういったような話を含めて、いろいろな形のものがこれから出てきてもおかしくはない。
私どもは、こういったものは大いに、日本の場合も、銀行は金が余って金を貸す能力がないというんだったらこういうのをやるなり、また、融資先が国内に主にないというのであったらこういうのにやるなり、いろいろな形で、融資をするノウハウを持っているJBICの才能なり知識なり、商社の持っていますいろいろなノウハウは、大いに利用してしかるべきだと思っております。

○吉良委員
ありがとうございます。
全く問題ないということでありましたので、今大臣から御指摘がありましたように、ぜひ多くの人に知らしめていただきたいと思います。
私がこれを取り上げていること、また、二十ページ物の教科書をつくった原点は、ブラジルの新幹線プロジェクトの件で、国交省と私とで現地に乗り込んだんですが、国交省はブラジル政府に対して、新幹線というのがどれだけ事故がなく、そしてパンクチュアルですばらしいものかと一生懸命ブラジルの大臣に売り込んでいた。しかし、当時、ブラジルがやろうとしていたのは、ブラジル政府が日本の機器、システムを買うのではなくて、新幹線プロジェクトの事業権の入札を行おうとしていたんです。ですから、売り込む相手は、政府ではなくて、最終的に、機器、システムを買ってくれる事業権を取得した相手なんです。当時、インフラパッケージをやるぞと言って、政府みんなで行けとやったはいいけれども、現地が、単純な輸出と、事業としてのプロジェクトを支援する、この区別も全くついていなかったということなんです。
特に今後、事業型インフラプロジェクトが非常にふえてくる、そこに対して政府として全力を挙げて支援をしていく、その際のキーになるのがファイナンスの組成だ。そういう意味で、きょうもルール144Aを紹介させてもらっているところでありまして、ぜひ知らしめていただいて、JBICの活用ともあわせて、インフラ輸出をもっともっと前に進めていただきたいと思っています。
時間が大分押してしまいましたので、次の件については頭出しだけになろうかと思います。
外務委員会の方で、あしたから日印の原子力協定の審議が始まるんです。私自身は、この原子力協定だけを切り出したときには、極めて不十分な協定だと思っています。核実験をした際に即座にやめるということが盛り込まれていなかったり。しかし、交渉というのは相手から一〇〇%とれるものではありませんから、どちらがより強いのか、よりどちらがこの協定を結びたいのかによって、弱い方が譲る部分が多くなる、これはもう交渉の常でありますから、私自身はそれを了解しています。協定の中身は必ずしも満足いくものではないけれども、それでも日本がやりたいという理由は何なのか。それは、一に、ペルシャ湾からインド洋、そして南シナ海、東シナ海に至るシーレーンの防衛。それと、これから中国を抜いて人口世界ナンバーワンになるであろうインドの経済発展をやはり取り込んでいくということ。そして、外務省からはなかなか言いづらいことではありますけれども、対中牽制です。中国がしきりにインド洋への進出を狙っている。そういう中にあって、今、パキスタンが中国の影響がかなり強くなっている。そして、スリランカ、ミャンマーももともと中国の影響力が強いし、今、更に強化されようとしている。この上、インドまで仮に中国の影響下に置かれるようなことになれば、インド洋に突き出た地政学的な位置づけからして、我が国のシーレーン防衛というのは極めて脆弱になってしまう。こういう対中牽制というものがあろうかと思っています。そういう戦略的な意義に加えて、なぜ原子力協定を結ぶのかということは、実は、インドの要請に応えてインドが必要としている原子力発電の機器、技術を提供したい、これが背景にあるからなんだと思います。そして、もっとその背景にあるのは、米国が既にインドとの間で原子力協定を結んでいる。米国は、今、交渉中の案件がある。今問題のウェスチングハウスが中心になっています。けれども、米国は、実は自分単独ではもう原子力発電所をつくることができない、日本の機器、技術が要る、これが実態であります。それと同時に、事実上、インドをNPTに組み込んでいく、それを日本と米国でやっていかなければいけない。でも、その見返りとしては、インドの将来的な電力需要を見据えた上で、今言った原子力発電所の建設協力をしなければいけない。ある意味では、日印原子力協定というのは、日米同盟の延長にあると言っても過言ではないと思っています。ところが、私が心配しているのは、今回の東芝の問題、その原因となったウェスチングハウスの問題、それから三菱重工が組んでいたアレバ、そのアレバもフィンランド等で大損失をこうむって、フランスの中でも、アレバが窮地に陥っている、こういうような状況があります。この状態が続いていくと、実は、世界の中で原子力発電所を建設できるのが、ロシアのロスアトムと、それから中国の、二、三社です。韓国もありますが、韓国の場合は資金供給という意味でかなり限界がある。となってくると、日本、米国、フランスがある意味ではスクラムを組まなければ、世界じゅうの原発需要というものはロシアと中国に席巻されてしまうことになる、こういう問題が出てくると思っています。
そういう意味でも、日本の東電福島事故に配慮して、日本としても慎重にやらなきゃいけないことはもちろんですが、世界全体の、今言ったリスク等を考えたときには、やはりやらざるを得ない。そのときに問題になるのが、プラント一式を建設できる会社が、もはやなくなっていることです。日米とも。フランスも問題を抱えている。そして、何よりも問題なのは、資金供給の面で、原発はもともと四、五千億かかりますが、今、東電福島事故以来さらに高騰している。その資金供給というものが大きな問題になっています。私が申し上げたいのは、やはりJBICの対インドに対する資金供給についても、機器の八五%を金融するだけではなくて、原子力発電所については現地工事のポーションが非常に大きいので、そこも何とか手当てできるような方策を考えなければいけないのではないか。その際にネックになるのがOECDガイドライン、先進国の制度金融同士を縛っている。けれども、私は以前からずっと指摘しているんですが、中国がこれだけ世界じゅうで好き放題やり、かつAIIBというものまでつくってやっている。これに対抗するのに、先進国がお互い牽制し合っていたら、とてもじゃないけれども、今言った莫大な資金需要に対応できない。そういう意味で、まず大臣にお願いしたいのは、OECDのガイドラインを見直そうという提起をしていただきたいというのが一点。それから、ADBについても原発への資金供与も検討できないかということを提起していただきたい、それが一点。そして、それらを含めて、JBICの対インド・マーケットにおける、特に原子力マーケットにおける機能の拡充を検討していただけないか。きょうは頭出しだけになりますけれども、その点の問題意識、提案をさせていただきます。一言あればお願いします。

○麻生国務大臣
基本的には、今言われましたように、フランスのアレバ、アメリカのウェスチングハウス、ゼネラル・エレクトリック、それに対して、日本は日立、三菱、東芝、この六つです、できるのは。まともな原子力発電所というのは。あとの危なっかしいのは別ですよ。きちんとしたものができ上がるという能力というものが認められているのは、世界的にはこの六つだけ。その六つとも、いずれも日本の三つの会社と組んでいますから、だから、そういった意味では、今言った意味は非常に大きいんだと思っております。それが一点。もう一点は、巨大な金がかかりますので、その巨大な金をファイナンスできる力を持っているのはアメリカと日本、これもこれまたはっきりしておりますので、そういった意味で、これをうまく使うことを考えないといかぬということなんだと思いますので。少なくとも、今日本で、目下のところ、国内で金を借りたいという需要の絶対量が不足しておる割には、傍ら金融機関の金は余していますので、だから金利が零%しかつかないという話になっておるわけですから、少なくとも、そういった金を借りてくれる海外のプロジェクトというものがあるのであれば、それに金が出ていけるようなものにしてやる。JBICがそれをやる、例えばADBがそれをやる、いろいろなことをやれるのに対して、協調融資ができるような形にしておいてやる、いろいろな形のものを考えて、それを仲介してやる。うちは百のうち八十をやるけれども、残り二十は民間がとか、逆でもいいですよ、うちが五十やるから残り五十は民間でとか。例えばPPPで、インドが一番最近やった成功した例ですけれども、少なくともタージ・マハルまで昔は一日、一泊しないととても行けなかったものが、今は車で往復できるようになった。あの交通、あれは全て、全部、プライベート、パブリック、プラントで、三つ、スリーPで、結果的に民間資金だけで完全にやっていますから、それでみんなもうかっております、基本的には。だから、そういった意味では、インドにとっては非常に大きな観光資源にもなりましたし、また、つくった会社はもちろん非常にインカムが大きかったし。いろいろな意味で、PPPというものの使い方というのは、きちんとしたガイドラインというものをやっておきさえすれば、それはJBICやら何やら、今後とも物をやっていくに当たってクオリティーの高いインフラストラクチャーというものが求められているのに対して、安物を出して、イニシャルコストだけ安いからといって、後は何だか使えないというものを売っている国に対して、うちは違います、そのかわりちゃんときちんとやります、かつファイナンスもつけますというのが大きいというのは、日本側の持っているこれからの強みだと思っていますので、ここを十分に踏まえて対応していかなきゃいかぬところだと思っております。

○吉良委員
これで質問を終わります。ありがとうございました。

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