吉良からのメッセージ

2016年10月30日

外務務員会での「地政学的外交戦略」についての質問(3)

先週の外務委員会での質問内容報告その3です。

1.まず、コロンビアの地政学的位置づけを明確にするために、岸田外務大臣に「米国ニューヨークとアルゼンチンの首都ブエノスアイレスのちょうど中間点はどこか」と質問しました。地理に詳しい人でも、多くの場合、キューバとか、ドミニカなどとの回答が返ってきますが、答えは「コロンビアの首都ボゴタです」。コロンビアは米州全体の重心、ヘソにあたる大変重要な地政学的位置に存在します。

2.次に、「米国が本国派遣の外交官を一番多く送り込んでいる国はどこか」と質問しました。外交に詳しい方でもなかなか思い浮かばないのですが、コロンビアの可能性が高いのです(断言できないのは、この種の情報はどの国でも外交機密の範疇だからです)。少なくとも、私が日本政府の特派大使としてサントス現大統領の大統領就任式に参加した2010年当時は間違いなくコロンビアでした。

3.何故、そのように大量の外交官を送り込んでいるのか、私の見解を披露しました。
1)米州の重心に位置する地政学的重要性
2)南米第2位の人口(4700万人)を誇り、自由経済を志向していること、
3)国境を接するベネズエラがチャベス大統領以来反米主義であり、ボリビア、エクアドル(コロンビアに隣接)も追随しているため、コロンビアまでもが反米主義になることを防ぎたいこと、
4)反政府ゲリラ組織(FARC)との内戦を終結させ、治安を回復することが南米北部の安定に繋がるため、FARCとの戦いを米国が支援していること、
5)コロンビアから大量の麻薬が米国・メキシコに流れているので、麻薬の栽培、取引を終焉させたいこと

4.そして、日本が先頭に立って、コロンビアをAPECとTPPに招き入れるよう力をいれるべきだと政府の背中を押しました。APECやTPPは「環太平洋」と謳いながら、また、メキシコ、ペルー、チリ、コロンビアの4カ国で「太平洋同盟」という自由貿易・投資を推進する経済同盟をつくっていながら、4カ国中、コロンビアだけがAPECにもTPPにも参加していないからです。

5.また、岸田大臣には「原油の確認埋蔵量の世界一はどの国か」と質問しました。多くの人にとって意外だと思いますが、答えはサウジアラビアでもなく、ロシアでも米国でもなく「ベネズエラ」です。ベネズエラの原油は重質油であり、特に粘度の高いどろどろした油なので、軽質油や中質油の需要が高い日本にとって、今すぐ、中東の油にとってかわらせることができるわけではありません。しかし、政情不安が常であり不確実性が高い中東のリスクを考えると、エネルギー安全保障の観点からもベネズエラの原油を念頭においた隣国コロンビアへの支援も考えるべきです。

6.更には、日本が積極的にコロンビアを支援することは日米関係・日米同盟の強化にも繋がります。日米関係、日米同盟というと、とかく、太平洋を挟んで日米、米中、米韓や東アジアのことばかりに耳目が集中してしまいますが、米国が外交上一番重要と思っている(可能性が高い)国に対して日本が協力関係や支援を強化すること、米国と一緒になってコロンビアを支援することが、日米関係の強化に結びつく、その観点からのコロンビア支援も重要です。

以上、地政学的外交戦略の必要性という持論を展開した外務委員会での質問内容を3回シリーズでお届けしました(完)。

吉良州司