吉良からのメッセージ

2018年6月13日

米朝首脳会談に思う

歴史的といえば歴史的な米朝首脳会談が実現し、共同声明が発出されました。
この件は、報道でも詳細に取り上げられていて、多くの識者からも様々なコメントが出されていますので、本メルマガでは、事実関係や一般的な論評は割愛し、ごく簡単に私の考え方をお伝えします。

(1)トランプ大統領の中間選挙を睨んだパフォーマンスの域を出ない、極めて成果の薄い会談であった。
(2)成果が出ていない原因は、(時間的制約があったことは承知するも)北朝鮮がやはり非核化に本気ではなく、非核化に自分だけに都合のよい条件を付けようとしているから。
(3)北朝鮮は核を手放すはずがない。非核化を表面的に約束したとしても将来的には必ず反故にする。
(4)人の国に工作員を送り込んで平気で拉致をする国、自分の実の兄を毒殺する指導者、これまでも大韓航空機、ラングーン事件をはじめ数々のテロを主導してきた国や指導者をどうして信じられるのか。

米国GDPの1000分の1のGDPしかない最貧国の北朝鮮が米国と対等に渡り合えるように見えるのは、核を保有している、または核保有する能力をもっているからであって、「体制保障」が得られても核を実際上放棄することなどあり得ないと思っています。北朝鮮がこれまでの国際約束や合意を反故にしてきた歴史的事実があるわけで、「約束なんて、事情が変われば、いつでも反故にできる」と思っているはずです。そうだとすれば、「体制保障」を約束されても、将来いつ反故にされるかわからない、と思うのは当然でしょう。
核の放棄は、これまで核開発に携わってきた科学者、技術者の国外退去と退去先における事実上の軟禁まで徹底しなければ意味を持ちません。物理的な設計図を廃棄したとしても、科学者の頭の中に設計図が残っている限り、いつでも開発を再開できるからです。このような、徹底的な核放棄具体策を北朝鮮が飲むとはとても思えません。

我が国としては、表面的な融和ムードに流されることなく、北朝鮮の核放棄はありえないという冷徹な情勢認識の基で対処すべきです。米国の中間選挙が終わるまでは、融和を演出するトランプ劇場が続くと思いますが、その先を見据えながら、米国と国連(国際社会)に「圧力の継続」についての理解と協力を地道に得ていくことが肝要だと思います。

吉良州司