吉良からのメッセージ

2018年5月16日内閣委員会での質疑 TPPと食糧安全保障

本通常国会の各委員会で、私が取り上げた国家的課題について、質問要旨のご紹介をしているシリーズの第3弾です。5月11日の外務委員会に引き続きTPP11が議題となる中、TPPの是非を議論する際、必ず課題となる日本の農業、食料安全保障について取り上げました。日本の農業を守りつつ、農業分野の更なる開放をし、結果的に、消費者、輸出産業、農業の三者がともにハッピーになる「三方一両得」の考え方を提唱しました。また、その際に懸念される食料安全保障の問題についても持論を展開しました。以下は質疑の概要ですが、詳細は委員会への提出資料も含め、こちらに掲載しておりますので、是非お目通し戴ければと思います。

1.全体最適と部分最適
TPPの賛成論と反対論は、TPP賛成派は大概が「全体最適」を求める派です。そして、反対する人たちは、多くの人が「部分最適」派です。農業のここが傷むからTPPを認めるわけにはいかないとの論を展開する傾向が強いのです。一方、部分的に傷むところはあるが、日本全体の国益が増進できるのであれば思い切って一歩踏み出し、増えた国益で痛む部分を手当しようというのが全体最適を主張する人たちです。私は、全体最適の立場です。
大事なことは、自分を含むTPP賛成論者全てがそうですが、この日本の中で、誰一人として、農業がどうなってもいいとか、農業従事者の生活がどうなってもいいと思う人はいないということです。誰もが日本の農業を守りたい、農業に携わる人を守りたいと思っていることが大前提です。

2.三方一両得(消費者、農業、輸出産業、みんながハッピー)
以下の提出資料3の図を見るとわかりやすいのですが、私流に「三方一両得」と命名している考え方をお伝えします。TPPを更に拡大する局面において、農産物関税の撤廃、完全自由化を柱とする農業分野の更なる開放が一方にあります。また同時に、米、麦、大豆、肉、酪農などの主要産品を中心に、農家に対して直接支払いを行います。生産コストと市場価格の差が実質的に埋められる支援です。三方とは、消費者、農業従事者(農業)、輸出産業です。農産物の関税がなくなると、輸入農産物が日本の市場に入ってきて、市場価格が下がる可能性があります。これは、消費者にとって、選択肢は増える上、外国産も、日本産の農産物も安く買えることになるので大助かりです。一方、生産コストと市場価格の差を(WTO上の違反にならない範囲で)農家への直接支払いで埋めることにより、実質的に農家の所得補償をします。農家は所得が保証される上、安全・安心でおいしい付加価値分だけ価格を高く設定でき、その分利益が増えます。輸出産業は、相手国の工業製品等の関税が下がるか、なくなりますので、輸出増、売上利益増となり、結果的に、法人税を通した国の税収増となります。全てを賄えるかどうかわかりませんが、私は、この輸出産業の利益増、税収増によって、農家への所得補償の財源として使うべきだと思っています。こうすることによって、消費者もハッピー、農業者もハッピー、そして産業もハッピーになります。

3.食料自給率
農産物の輸入関税をなくす際に問題となるのが、食料安全保障です。
以下の資料を見て戴きたいのですが、現在、世界の中で最大の食料輸入国は中国です。2番目は米国ですが、つい最近までは米国が一番の食料輸入国でした。米国は、世界一の農産物輸出国ですが、世界の農産物輸入額上位10カ国の内、米国、オランダ、フランス、カナダなどは農業大国です。これらの農業大国は、農産物輸出額も大きいのですが、同時に輸入額も非常に大きいのです。これらの先進国は、「国民に対して豊かな食生活を保障すること」が一番の主眼にあるため、農産物についても、比較優位の原則をとっているのです。その国の気候や土地柄からして、競争力がない農産物は積極的に輸入し、そして、気候、土地柄にあった競争力の高い農産物を輸出している。この意味で、農業大国は、同時に農産物の輸入大国でもあるわけです。

また、以下の食料自給率の図を見て戴きたいです。農水省のホームページに掲載されている穀物自給率の比較表を見ると、自給率が高い国は、パキスタン114%、マラウイ94%、カンボジア102%、チャド99%、マリ85%、ニジェール84%などです。これらの国々は、一人当たりGDP上も豊かではないし、食生活も十分ではない国々です。しかし、これらの国々の食料自給率、穀物自給率が極めて高いのです。
農水省が掲げる「カロリーベースの総合食料自給率計算式」で計算すると、仮に、輸出も輸入もゼロだった場合には自給率100%になるのです。つまり、海外から農産物を買うお金がない国は、輸入がゼロになって、輸出余力もないので、輸出入ともゼロ(か、それに近い数字になって)自給率が高くなるのです。

比較優位の中で、海外から農産物を買う経済力があるところは輸入も多くなりますが、米国、フランスのように、農業大国であればプラスマイナスして輸出が多くなるのです。日本の場合は、圧倒的に輸入が多くなっています。食料自給率を考えるときは、こういった要素も頭に入れておく必要があります。因みに、英国では「食料安全保障政策の基礎に食料自給の追求を置いてはならない。自由貿易によるレジリアンス(しなやかさ、回復力、弾性)の強化によって英国の食料安全保障は確保されると明記されています。

4.食料安全保障
また、HP掲載の「我が国の「食料安全保障」への新たな視座」という外務省・経済局・安全保障課が有識者に依頼した報告書を見てください。
この中で、「食料安全保障への新たな視座、平時、有事の分類と対応」として、平時における食料安全保障への対策、有事の際の食料安全保障への対策について書かれています。同じ趣旨のものが農水省のホームページにも出ていまして、見比べたんですけれども、こちらの方がより詳細に書かれていましたので、こちらを出させてもらった次第です。
食料安全保障の議論をするとき、輸入途絶の際には、国民への食料供給が不可能になるという漠然とした不安があります。しかし、平時において有事に備えておくべき事、有事の際にやるべきこと、など精緻に分析と備えをしておけば、実は食料安全保障は担保できるのです。

農業、産業、消費者がみんなハッピーになる「三方一両得」を実現し、食料自給率、食料安全保障についても、漠然とした不安感を冷静・緻密な分析と備えにより払拭し、我が国の全体最適のためにTPPに一歩踏み込むべきだと思います。

この質疑の詳細は議事録として掲載しておりますので、
是非、目を通して戴きますようお願い申し上げます。

吉良州司

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