吉良からのメッセージ

TPP11の意義についての質問概要

本通常国会の各委員会で、私が取り上げた国家的課題について、質問要旨のご紹介をしているシリーズの第2弾です。5月11日外務委員会において取上げた「TPP11の意義について」の概要をお伝えいたします。詳細議事録はこちらに掲載しています。

1.TPP11の取りまとめを高く評価

国民民主党はじめ野党はTPP11に反対ですが、米国が離脱する中、日本主導でこれだけの短期間に取りまとめたことを大変高く評価し、外務省経済局を中心とする事務方の労をねぎらいました。TPPは反対論も根強いですが、大局的な国益の観点からの大きな意義があります。数ある意義の中で、他国への外交的配慮から、政府としては発信しづらい国益上の意義5点について、委員会の場で野党議員である私が発信しました。

2.TPPの意義(外交的配慮から政府が発信しづらい意義を吉良州司から説明)

一点目は、世界経済と日本経済は極めて強く連動していて、世界経済がよければ日本経済がいい、世界経済がよくなければ日本経済もよくない、という連関性があること。それ故、TPP11を拡大・利活用していきながら地域経済そして世界経済の向上に貢献することが必ず日本経済の成長に繋がるという意義です。

二点目は、地政学的国益です。中国を中心とする上海協力機構がユーラシア大陸全域をカバーする国家主導的傾向を持つランドパワーに対して、TPP加盟国は自由な貿易、投資、海上航行を希求するシーパワーである。TPP11は、アメリカをも再度巻き込み、更に拡大することによって、わが国の国是である「投資、貿易、航行の自由」を希求する国々との連携を深めるシーパワーとしての地政学的な意義があります。

三点目は、TPPは日本の産業構造、産業生態系の変化に対応できるという意義です。日本企業が海外に投資をして国外へ出ていく背景は、日本の国内マーケットが人口減少、少子高齢化もあって、先行き縮小してしまう可能性があるからです。そうなると、国内での投資意欲が欠けてしまい、国内事業拠点を閉じてしまう。すると、ますます日本経済がシュリンクしていく。しかし、日本国内での需要こそ少なくなったが、世界の中には、まだその製品を必要としている国があります。このTPP11の大事な意義の一つは、ベトナムに象徴されるように、発展段階が違う国々も入っていることです。このことが非常に重要で、日本での需要が小さくなっても、製品にしろビジネスモデルにしろ、まだまだ必要とする国があります。だから、発展段階の違う国々がこの枠組みに入っているということは日本の国益上極めて重要な意義を持ちます。

四点目はISDS(企業が国家を訴える制度)についての意義です。多くの国民、そして国会議員は、ISDS制度はアメリカなどの企業の訴えによって日本が窮地におとしめられる、またそれによって日本の大事なルールの変更を余儀なくされるとの危惧を持っています。しかし、ISDSは日本企業が、政権交代等によってルールが大きく変更されるおそれがある途上国に投資するときに、日本企業の利益を守るために、日本が締結している全てのEPAに盛り込まれている内容です。

五点目はTPPの取決めの中でも原産地累積制度が最も大きな成果だということです。日本企業は、苦労しながら、どういう状況になろうとも生き延びていけるというような世界的なサプライチェーンを面的に構築してきました。この面的サプライチェーンを生かすためには、面の経済連携でなければ効果がありません。原産地累積制度は、「メード・イン・TPP」を可能にしました。特に重要なのは、日本において主要部品をつくっている場合、他加盟国の部品とを組み合わせた合算で「メード・イン・TPP」の付加価値率をクリアできればTPP加盟国の関税のメリットが得られますので、日本の工場、事業所、雇用を維持できるという極めて大きな意義があります。

また、中国リスクに対して、中国に代わる投資先国を、日本政府が支援するチャイナ・プラスワンという戦略との関連で、中国リスクを回避するための投資先は、この原産地累積制度があるため、TPP加盟国が圧倒的に有利になると思います。ベトナムはこのことを意識しているからこそ、発展段階が違うにもかかわらずTPP11への加盟を決断したと思っています。タイのTPPへの加盟意向表明は、今までタイに投資をしていた企業がベトナムに移転してしまうという危機感を抱いたからだと思われます。そういう意味でも、TPP加盟国はチャイナ・プラスワンの対象国として非常に有力になることを指摘しました。

3.TPPとRCEPの優先順位と環太平洋インド洋経済連携協定(TPIP)構想について

TPPとRCEP(日中韓、ASEAN、インド、豪州、ニュージーランドの経済連携協定)について、私はTPPを優先すべきと力説しました。中国の国力を考えたときに、カンボジアやラオスやフィリピンも中国にぐっと引き寄せられてしまっていて、そういう情勢の中でRCEPが成立してしまうと、中国の影響力によって低いレベルの協定で満足してしまうリスクが高いと思っています。だからこそ、高いレベルの協定であるTPPに参加できる国をまずは引き込んでいく、そして、中国は少し時間をかけてTPPに招き入れていく、こういう本音の優先順位が必要だと思っています。
今は環太平洋経済連携(=TPP)ですが、政府が力を入れている「インド太平洋戦略」の延長上に、インド洋も含めた「トランス・パシフィック・アンド・インディアンオーシャン・パートナーシップ(環太平洋インド洋経済連携協定=TPIP)として、インド、インドネシア、フィリピンも巻き込み、地政学的、シーレーン防衛も含めた戦略的枠組みに発展させるべきだと主張しました。

4.TPPへの米国の復帰を促す説得の際には、米国産業構造の勉強をしておくべき

米国のTPPへの復帰を促す際には、米国の産業構造、貿易構造、投資構造に基づく米国のメリットを説明することが重要だと指摘しました。
実は、私自身が米国の世界的産業構造について誤解をしていました。例えば、米墨間の貿易は米国の赤字かもしれません。しかし、米国資本でメキシコに工場をつくり、米国がその製品を輸入すれば、米国に輸入業者:流通業者・小売業者のビジネスや雇用や配当収益や税収が生まれるので、米国の方が圧倒的にプラスになるじゃないかと思っていました。日本の場合、貿易収支は、石油の値段がどうなるかによって、最近はマイナスにもなり若干のプラスにもなるという状況がずっと続いています。しかし、第一次所得収支という対外的な投融資からの配当・金利収入が最近は20兆円前後あるので、常に経常収支を高いレベルで維持できています。一方、米国の場合は、GDPが日本の4倍もあるのに、米国の第一次所得収支は日本と同じ20兆円程度しかありません。例えば、中国四川省成都に工場をつくって米国に輸出していても、それは委託生産なので米国への配当はありません。日本の構造と違って米国の場合は、特許料はじめサービス収支のプラスの方が第一次所得収支よりも大きいのです。そして、貿易収支のマイナスが圧倒的に大きいというのが米国の国際収支構造です。米国のTPPへの復帰を促す際には、このように、米国の産業構造、貿易構造、投資構造に基づく米国のメリットを説明することが重要だと思います。

この質疑の詳細は議事録としてこちらに掲載しておりますので、是非、目を通して戴きますようお願い申し上げます。

吉良州司

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