政治家も国民も消費税から逃げてはいけない(広報誌18号)
消費増税への立場の違い
本稿を執筆時点では、消費税が10%へと引上げられるのか、何らかの理由で再々延期になるのか、わかりません。野党も無条件に増税に反対する政党、消費税自体は否定しないが、景気の悪化局面での増税には反対する政党など、立場は各々違いますが、10月の増税はやめるべきとの主張では一致しています。
私は、予定通り増税すべきとの終始一貫した立場です。景気動向が判断条件となると、議論が百出し、結局常に問題を先送りしてしまいます。消費税は、子育て支援を含む社会保障財源ですから、国民のだれもが受益者です。それゆえ、政治家は決して逃げることなく、消費増税への国民の理解を求めるべきです。
(※広報誌のバックナンバーをご希望の方は、お問合せページからご請求ください)
何故、消費増税が必要なのか
税負担増となる国民は勿論、負担をお願いして票を減らす国会議員も、誰だって「増税」などしたくないのが本音です。しかし、消費増税なくして我が国はもうこれ以上「もたない」ところまで来ています。図1・図2をご覧ください。歳出の拡大が続く一方、税収不足は慢性化しており、国債(借金)で補い続けています。これ以上の現状放置は、年金・医療・介護、子育て支援など持続可能な社会保障の維持も、将来の飯のタネになる技術分野への投資や若者・子供たちへの人的投資もできなくなります。持続可能な社会保障を維持するため、将来世代への責任を果たすためにはどんなに苦しくとも避けて通れない道です。
財政健全化の具体的方策
財政不均衡の原因は明確なので、財政健全化の方向性も明快です。収入を増やすことと、無駄な歳出、優先順位の低い歳出を削減することです。収入を増やす方策は、増税すること、それも景気変動の影響が少ない消費税を増やすこと、及び、経済成長することです。経済成長すれば対GDP比の債務残高が小さくなると同時に、個人所得税収、法人税収が上がり、また、消費も活発になるので消費税収も上がります。アベノミクスの中身には疑問を持っていますが、この観点からの目的意識は理解できます。
低所得者対策
消費税率引上げによる低所得者対策については、詳細に説明する紙数がありませんが、「軽減税率」ではなく、格差是正のための低所得者優遇政策のひとつでもある「給付つき税額控除」が最も適しています。低所得者が収めたであろう消費税の全部または一部を現金で還付する制度です。
商社マン時代から消費税の必要性を力説
最後に政治家になる前からの消費税の必要性に対する信念についてお伝えします。
平成2(1990)年3月、大分県国見町の「国見町農業大会」で、大分県庁出向中の私が「国際化時代に対応した国内農業」と題した講演をします。その直前の参議院選挙で「消費税反対」が勢いを得ていた世情を憂える31歳の商社マンの訴えです。
まず下記講演録をお読みください。
31歳の若造商社マンの時代から、「子どもたち、将来世代が最優先」という考え方を持っていました。そして、税の直間比率を見直して間接税(消費税)を増やし、財政を健全化しながら、将来世代の負担を軽減し、国際的な信用を得る。同時に、社会保障を充実させることで将来不安をなくすべき、と信じて疑いませんでした。
私が政治を志した理由の1つは、鬼ごっこをして遊んでいる間に、大人たちの借金の連帯保証人にされてしまっているのに、選挙権を持たないため声をあげることのできない、子どもたち、将来世代の代弁者になるためです。
政治家には不利な消費増税でも、子どもたち、将来世代のためなら、決して逃げることなく、訴え続けます。
29年前の講演録の一部
「最近の消費税論議を見ていると疑問が湧いてきます。私は消費税を導入すべきとの意見です。免税品目など認めない単純明快な税にし、税率ももっと上げるべきだと思います。ご存じの通り、今、国債残高は160兆円(当時はなんとまだ160兆円でした)にも積みあがっており、1家庭当たり600万円の子孫に対する借金です。
私は21世紀の2千何年かから歴史を振り返った時、「1980年代後半から1990年代がフローの面ではもっとも豊かだった」と言われるであろう時代を今生きていると信じています。それ故、今、余裕のある内に社会の借金を返しておくべきだと思うのです。親は本来、自分の皿に肉があっても、自分は我慢してそっと子供の皿に移すものだと思います。しかし、消費税議論を聴いていると、全くその逆で、自分はまだ腹が減っているからと、子供の肉を取り上げているとしか映りません。現在はフローの面では豊かですから、消費をすることは現在の経済活動を活性化すると同時に国家の借金を返していくことになります。それに私は選択肢の多い社会が本当に豊かな社会だと信じています。何処でどう使われるか分からないのに選択の余地なく所得税でもっていかれるよりは、好きなものを買う為の一種のコストと考えられる消費税の方が目指すべき豊かな社会にはピッタリくると思うのです。税金を払いたくなければ買わないという究極の選択だってできるわけですから」