生活者主権、将来世代最優先~再度の政権交代、その時に備えた基本構想~(広報誌17号)
去る通常国会中の5月7日に結成された国民民主党の代表選挙(8月22日告示)には玉木雄一郎氏と津村啓介氏のふたりが立候補を届け出て、9月4日の投票に向けての選挙戦が繰り広げられています。本広報誌が出来上がる頃には新代表が選出されていて爽やかに船出していることと思います。私が両候補に強く要請したことを以下に報告させて戴きます。
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次の総理を選ぶ選挙
第一に、人に笑われようが、何と言われようが、「この代表選挙は、日本の次の総理を選ぶ選挙だという自覚をもって臨んでほしい」「政党内部の問題や他の野党とどうする、こうするだの、内向きの主張には目もくれず、ひたすら政権を担うことを意識した国家ビジョンと柱になる骨太の政策を訴えてほしい」ということでした。
安倍晋三総理の自民党総裁3選が有力視される中、安倍政権の継続は、森友・加計学園問題、そのことを含む、いわゆる忖度政治の問題、根本的にはアベノミクスの限界など、攻めどころ満載で、東京オリンピック後に総選挙となった場合には、政権交代も起こり得る情勢になると思うからです。安倍一強体制の弊害については石破茂元自民党幹事長はじめ、竹下派からも声が上がり始めており、自民党内部も一枚岩ではなくなりつつあります。
今一度、政権を担う気概を
仮に、細川政権成立時のように自民党の一部が分裂するようなことがあれば政権交代の可能性は益々高くなります。民主党政権を担った一人としては、寂しい限り、悔しい限りですが、国民の多くは、旧民主党の遺伝子を引き継ぐ政党だけに政権を任せる選択はせず、どんなに自民党に膿がたまっていようとも、民主党政権よりはましだからと、野党には自民党の歯止め役だけを期待しているのです。だから、立憲民主党の支持率が高く、国民民主党には1%以下の支持率しかないのです。しかし、これは、見方を変えれば、国民民主党が「歯止め役」ではなく、自民党に代わって政権を担う政党たらんとしている証だと言えます。自民党政権の驕りが国民の許容限度を超えた場合には、野党共闘による連立政権が生まれる可能性があります。20人でも、10人でも自民党離党者が出てくれば、その離党議員たちとの連立政権(首班はその方々の誰かでもいい)が成立する可能性もあります。
その来るべき時に備え、今は政党支持率が1%未満であろうとも、政権を狙い、担う能力と気概を持った集団として、政権構想を打ち上げ、政権担当能力、政権運営能力を磨いていかねばなりません。新代表は勿論、国民民主党の議員やサポーターの全てがこの自覚を持つべきだと思います。
「生活者主権」「将来世代最優先」の政治
両候補に訴えたもうひとつのことは、私が目指すところ、私の信念でもある「生活者主権」「将来世代最優先」の政治の実現を掲げてほしいということです。
以下では少し長くなりますが、「生活者主権」「将来世代最優先」の政治についての、私の思うところをお伝えします。
優先順位の高い基本政策
現在の我が国にとって優先順位の高い基本政策は次の5つです。
①生活者主権の政治
②将来世代最優先の政治
③現実的な外交・安全保障・エネルギー政策
④人財と民間企業中心の力強い経済
⑤国民全体で支えあう安心な社会保障
現実的な外交安全保障・エネルギー政策
外交安全保障については現実対応と継続性が重要です。自民党と大きな違いがないことは、「大きな違いがない」と勇気をもって言える政党になるべきです。政権を担わんとする政党ですから、国家としてどうあるべきかを考えることが重要なのであって、自民党との違いを外交・安全保障において強調する必要は全くありません。
安倍政権が成立させた安保法制について言えば、海外での軍事的後方支援など断じて許してはなりません。しかし、我が国が直面する現実的脅威に対しては、自主防衛力の増強と日米同盟強化による抑止力の維持向上により国民の命を守り抜くことが国家の責務です。
国民は理想論だけの外交安全保障・エネルギー政策の政党に政権を任せる判断はしません。冷徹な現実認識と現実対応の外交安全保障・エネルギー政策を基本政策とすべきです。
自民党との違い
業界・現世優先vs生活者・将来世代優先
外交安全保障・エネルギー政策で自民党との違いを強調する必要がない中で、自民党と一体何が違うのか。それは、自民党が「常に供給者、業界の立場に立つ」「供給者目線の政党」、「業界優先政党」であるのに対して、国民民主党は「生活者の立場に立つ政党」であること、また、自民党が今を生きる人と企業の利益を中心におく「現世ご利益政党」であるのに対して、国民民主党は「将来世代を最優先する政党」であること、このふたつが一番大きな違いです。
かつてのよき時代は戻ってこない
戦後復興、高度成長、その後の安定成長時代の日本はまだまだ発展途上段階であり、国内産業の育成・保護・発展を最優先する自民党政権の基本方針は間違っていませんでした。それゆえ、戦後の自民党政権は一貫してものやサービスを供給する側の論理(業界の論理)で政権を運営し、役所も供給者・業界を応援する前提で成立っています。自民党政権は供給者、業界の言い分を政務調査会の各部会と族議員が聞き、その要求を法律や制度として実現し、予算配分を行う政党です。国内産業育成が至上命題であった発展途上時代としては、正しい政策、正しい優先順位だったと思います。
しかし、その時代の優先順位付けが成功し、産業として充分独り立ちできるようになってからも、業界を最優先することを自民党政治は継続しています。それらの業界が選挙時には、自民党の大応援団として、人とお金と票を出してくれるからです。保護や支援がなくても堂々と独り立ちできるようになってからも、既得権益者であるそれらの業界に国民の貴重な税金を優先配分するのが自民党政治です。言い換えれば、大多数を占める一般の生活者の立場や権利は常にないがしろにされ後回しにされてきました。
アベノミクスも相変わらず供給者の立場に立った経済政策であり、一部の大手企業は利益を得ていても、圧倒的多数の生活者は輸入物価があがるなど生活費の上昇により可処分所得が減少し、その生活が却って苦しくなっています。現在、一見好調に見える業界目線の経済指標(株価や企業業績)は、一般国民からそれら企業への「所得の強制移転」です。
生活者主権の政治
発展途上段階の日本を見事な外交政策、経済政策、社会政策によって世界有数の経済大国に押し上げた最大の政治的功労者は自民党であるといえますが、それは発展途上時代の、また、その時代特有の国際情勢、社会環境があってこその話であり、東西冷戦が終わり、グローバル化や人口減少・少子化・高齢化が進展する現在の国際的、国内的環境の中にあって、かつての発展途上段階に通用した政策が現在において通用することはありえません。
現在の自民党政治の最大の罪は、二度と戻ってはこない「かつてのよき時代を取り戻す」という幻想を追い求め、その過程において、取戻すことを実現できないばかりか、日本の将来と将来世代に対して、取り返しのつかない莫大なリスクとツケを負わせていることです。クロダノミクスはその典型です。先進国、成熟国となった日本は、供給者・業界優先ではなく生活者優先の政治が求められています。
自民党が供給者の論理で政策実現を図る、結果として既得権益者の声を代弁する政党であるのに対して、国民民主党は生活者を代弁する政党です。そして、人が持つふたつの立場(職業人としての立場と家庭人としての立場)では家庭人の立場の国民に訴えながら政策を立案し、実行していくべきです。
力強い経済と産業は重要
もちろん、アンチ・ビジネス(反経済界、反企業)であってはなりません。生活者優先は貫きつつも、日本の経済を支える産業を大事にすべきです。しかし、その具体策としては、国内的には徹底した規制緩和による自由度の拡大と起業の促進を、また、対外的には、TPPをはじめとする経済連携の積極的推進等で、日本企業が世界中で自由に活動できる環境を整備するなどの政策を打ち出すべきです。自民党の経済政策は社会主義政策です。国民民主党こそ、真の自由主義経済を標榜する政党であることを打ち出さなければなりません。
将来世代最優先の政治
我が国の内政上の最大の課題は、人口減少、少子化・高齢化、国民に蔓延する将来不安です。この問題解決のためには、大胆な少子化対策、大胆な教育投資、大胆な社会保障改革、何よりも国民の意識改革が必要です。
これらの問題に向き合おうとした民主党政権の「子供優先」や「子育て支援」など、将来世代や子育て世代に光を当てようとした政策の方向性は間違っていなかったと思っています。今こそ、「将来世代最優先」を国家の新しい価値観に据え、将来世代に投資することが必要です。本広報誌の8ページに詳細含め特集していますが、私は、大胆な子育て支援策(更なる消費税5%を国民に負担してもらうことを前提として、子育て中の家計に、第一子に3万円、第二子に5万円、第三子に10万円、第四子以上は、それぞれ15万円を高校卒業まで月々支給するというもの)を提案しています。国の宝としての子供たちを社会のみんなで育てていくことは、国家としての最優先の課題です。
これまでは年金、医療、介護などの社会保障を除く経済政策は、業界向け、特に公共事業が中心でした。しかし、「生活者」「将来世代」を優先する具体策の代表例がこの大胆な子育て支援であり、「急がば回れ」の最も効果的な経済活性化策です。
また、社会に出た後でも、何度でもやり直せる、社会人再出発教育への投資も必要です。一人ひとりが教養と職業的素養を身に着け、幸せな生活を送りながら、人口減少時代の日本を支えていってもらわなければなりません。それに相応しい投資をしていくことは国家の責任だと思います。
責任ある政治家集団として
自民党政権の最大の罪は、国と国民の関係、政治と有権者の関係を利害得失だけの関係に貶めてしまったことです。
その個人や会社・業界にとっては得になることであっても、国全体で見ればマイナスになってしまうこともあります。時には消費税増税など国民の一時的な不利益(とその時点では見えるが、中長期的には本当は利益になる)の享受をお願いしてでも国全体のこと、そして現在だけではなく将来に亘って日本で生きていく国民のことにも思いを馳せながら、今何をすべきかを考え、その優先順位を明確にし、そのことを国民に粘り強く説明し、国民の理解を得ようとするのが、責任ある政治家です。
今を生きる人だけを見て、次の選挙のことだけを考える政治家ではなく、今を生きる人はもちろん、将来を生きる人の生活や幸せを考える政治家が集う国民民主党として、生活者主権政治と将来世代最優先の政治を実現する使命感を持たなければなりません。
「生活者主権の政治」「将来世代優先の政治」を国家の新しい価値観とするには、既得権益者との壮絶な戦いが待ち構えていますが、良識ある国民とともに、その信じる道を一緒に歩いていきたいと思います。