(159)「経済連携PTの取りまとめを終えて」
11月9日、1か月に及ぶ激烈な議論の後、民主党政策調査会の
「経済連携プロジェクト・チーム(PT)」が取りまとめた「
前原政調会長に提出しました。
私は鉢呂吉雄座長の下で、同PTの事務局長を務めましたが、
総会だけでも55時間、それに役員会を入れると70数時間に及ぶ
長く険しい取りまとめの任務でした。
本PTは「経済連携PT」という名が示す通り、
広く経済連携全般を議論し、
本日閉会したハワイAPECまでは、<1>
に向けて我が国がとるべき立場、<2>
ついて提言する、
ついて民主党として提言することを目的として議論を重ねたのです
上記<1>についての最終的な提言内容は下記の通りです。
・我が国として、
引き続き積極的に交渉に取り組まなければならないが、
停滞している現在、積極的に経済連携を推進しなければならない。
・アジア太平洋地域は、我が国にとって、政治・経済・
最重要地域である。FTAAPの2020年までの実現に向け、
国々と高いレベルでの経済連携を戦略的かつ多角的に進めていく。
アジア太平洋地域内において、二国間EPA、
とともに、EUをはじめとするアジア太平洋地域以外の主要な
貿易パートナーとの間の経済連携も推進し、貿易投資立国として、
世界の貿易投資の促進に主導的な役割を果たすべきである。
・APEC首脳会議の際には、「アジア太平洋地域の経済的繁栄を
目指すFTAAPの実現に向け、我が国が先頭に立って推進する」
高らかに表明すべきである。
一方、上記<2>についての最終提言は下記の通りです。
・TPPへの交渉参加の是非の判断に際しては、政府は、
対する事実確認と国民への十分な情報提供を行い、同時に幅広い
国民的議論を行うことが必要である。
・APEC時の交渉参加表明については、党PTの議論では、「
表明すべきではない」と「表明すべき」との両論があったが、
前者の立場に立つ発言が多かった。
・したがって、政府には、以上のことを十分に踏まえた上で、
慎重に判断することを提言するものである。
上記の<1>の提言でお分かり戴けるように、
ついては、「積極的推進」
ことTPPとなると上記<2>の提言が示すように、
時期尚早論や慎重論が多く、
結果として、野田総理は11月11日夜8時からの会見において
「TPP交渉の参加に向けて、関係国との協議に入ることとした」
発言しました。慎重論にも配慮しながら、
思います。そして、昨日、オバマ大統領に対しても米国との協議を
開始する旨伝えたのです。
私は個人的には経済連携一般は元より、
しかし、本PTの事務局長を引受けるに当たっては、
としての方向性を出すことなく「
を指示されていましたので、個人的主張は胸に仕舞い込んで、
公平中立なPT運営を心がけました。結果として、
提言を出すことになりました。
新聞・テレビ上は、連日党内議論が沸騰し、
対立している、そして慎重論がかなり強硬だというような報道が
為されました。
PT論議で明らかになったことは、推進論、
ように見えていても、双方の極論を排除して、
読み解くとそれほど大きな対立・相違がなかったことです。
以下はその代表的な具体例です。
(1) 慎重論が唱える我が国農業の壊滅・弱体化の懸念については、
推進論も「農業の保護、強化」を前提とした交渉参加を主張。
(2) 慎重論において非関税分野で懸念されている事項(食の安全基準、
資格制度、単純労働を受入ないこと、公的医療保険制度、
については、推進論も国益として「守るべき」と主張。
(3) 慎重論の中には将来的な「TPPへの交渉参加」
いるわけではなく、「
「懸念事項に対する判断材料が少ない上に、
議論がなされていない」との問題意識を持ち、
時期尚早と主張。
(4) 慎重論に根強い「米国の主張、圧力に押し切られてしまう」と
懸念する論も日米関係、日米同盟の重要性は認識していること。
(5) 推進論中の「日米関係の重要性」を強調する論も、中国への配慮の
必要性を認識し、日中韓経済連携、ASEAN+3、ASEAN+
ASEANとの経済連携もTPPと同時並行的に推進すべきと主張
(6) 慎重論にある「関税ゼロを追求するTPPより、今は円高対策が
重要ではないか」との論に対して、
円高対策の即時実施、
こと。
などなどです。
野田総理は会見で「世界に誇る日本の医療制度、日本の伝統文化、
美しい農村、そうしたものは断固として守り抜き、
支えられる安定した社会の再構築を実現する決意だ」
そうです。我が国として「守るべきものを守り」、「
勝ち取る」覚悟と交渉戦略を持ち、慎重論も推進論も国益として
守りたかった懸念事項については、その事実確認と国民への充分な
情報提供を行い、同時に幅広い国民的議論を行いながら、
活力ある貿易投資立国を目指し、
先頭に立つべきだと思います。