安全保障法制に対する吉良州司の考え方 その1
昨日(2015年7月16日)、衆院において政府提出安全保障法案が可決されました。
私は、本会議の討論まで出席し、採決時に退出しました。採決時退出しましたが、この法案には反対の立場です。
今回の安全保障法案の議論は、根本である法律内容もさることながら、その出し方、審議や採決のあり方など残念なことだらけです。
「社会保障と税の一体改革」もそうですが、国の根幹に関わる社会保障や安全保障は、政権が替わる度にころころと方針や制度が変わっていたのでは、安定性、継続性に欠け、国民や企業も長期的な生活設計や経営方針をつくることができません。安全保障については、現在、将来にわたる不安がぬぐえない状況に陥ってしまいます。それ故、社会保障と安全保障は主要政党による合意形成が必要だと思うのです。
今回の政府提出安全保障法案は、野党の合意が得られる部分もありながら、10本の現行法改正法案を束ねて「平和安全法制整備法」として、まさに「十把一絡げ法」として一本の法律として提出しているのです。
この10本の現行法改正案の中には、部分的修正を加えれば野党または一部野党議員も賛成する内容にできたものがあったと思っています。そうしていたならば、昨日の採決も「与党強行採決」ではなく、一部の野党が賛成にまわったり、一部野党議員が党方針に反して賛成にまわるという造反劇もみられたと思います。
安倍政権の人気が高いうちに「難題である安全保障法案を与党の多数をたのんで通しておこう」という思いが強すぎて、主要政党、または一部の野党議員の合意を得ようという姿勢に欠けていることが残念でなりません。
■吉良州司の基本的な考え方
私の安全保障法案に対する基本的な考え方は「『近くは現実的に』『遠くは抑制的に』『人道支援は積極的に』」という基本理念であり、具体的には以下のようなものです。
<大前提> 絶対に戦争はしない、戦争に巻き込まれてはならない。
(1)日本周辺という地理的制約を入れた内容に修正するなら政府案にも賛成。
中国の経済的、軍事的台頭が東アジアにおけるパワーバランスを大きく変化させており、中国の軍事的脅威に対する抑止力を高めるための日米同盟の強化は必然であり、そのための新たな安保法制が必要。抑止力を高めることなく日中の軍事力バランスが大きく中国優位に傾いてしまえば、尖閣など武力衝突や戦争に至る可能性が高くなる。絶対に戦争をしないためにこそ日米同盟の強化が必要。
国際法上「集団的自衛権」といわれる内容が含まれていたとしても、中国との戦争にいたるリスクを避けられるのであれば、それも容認すべき。
また、中国の軍事力に対しては自主防衛力と日米同盟の強化という「力には力で対抗できる体制」をつくっておくと同時に、同時に外交努力によって、将来にわたって中国と友好関係を構築・維持できるようにすべき。言い換えると、左手には強く剣を握り締める一方、右手で堅い握手を求めるべき、将来的には堅い握手だけで成り立つ日中関係にしたい。
(2)日本周辺以外の、いわゆる「世界のどこででも米軍などの後方支援ができる」という「日本周辺の地理的制約」をはずした地域における武力行使、後方支援には原則反対。これらを可能とする内容の政府案には反対。「原則」という意味はわが国が国際社会の中で生きてゆくためにどうしても必要と判断される場合には、そのつど「特別措置法」を制定して対応すべき。
(3)PKOなど人道支援を柱とする国際貢献は積極的に行うべきであり、政府案に賛成。これまでできなかったPKO活動時における関係者・在留邦人などの安全確保や駆けつけ警護ができるようにすること、その任務遂行のための武器使用権限の拡大なども容認。
以上が政府提出法案を踏まえた吉良州司の基本的考え方ですが、10本の現行法改正案がどうなっているか、それら全体を貫く政府方針とはいかなるものか、など一般の国民が理解するのは本当に難しいだろうと思います。法案自体の説明については右の内閣官房ウェブサイトを見て戴くことにして、国民の理解が得られにくいの は何故か、それは、外交や防衛に関する事項は、国会では必ずしも本音で議論ができないためであるという点について、次回のメルマガでお伝えしたいと思います。
吉良州司