外務委員会での質問 その2 インドネシア新幹線プロジェクト
前回のブログでは4月1日の外務委員会質問に関して、食料自給率と食料安全保障に関する質問を踏まえた吉良州司の考えをお伝えしました。
今日は、2点目のインドネシアの新幹線プロジェクト(ジャカルタとバンドンを結ぶ140kmの高速鉄道計画)です。
昨年9月、インドネシア政府のソフヤン大統領特使が来日し、当該プロジェクトについて、日本の提案ではなく、中国からの提案を採用する旨を通知してきました。
当該プロジェクトは、日本のJICAが採算性調査も手掛け、安全性が高く、高性能の日本の新幹線システムを売り込んでいると承知していただけに、この報を受けて多くの国民が怒りや不満をあらわにしました。
「インドネシア政府はけしからん」「日本の外交当局や国交省は一体何をしているんだ」といった批判の声があがりました。
しかし、この不満の背景には「新幹線の車両やシステムをインドネシア政府に売り込もうとしていて、残念ながら中国に負けた」と思っている国民が多いと思います。
私は外務大臣政務官時代に在外公館長や外務省職員向けに「インフラ・プロジェクト」についての教科書のようなものを作成し、実際に全在外公館に配布されました。
その中で強調したのは「単に機器やシステムを売る買付プロジェクトと事業権を争うプロジェクトとは別物である」ということです。
事業権を獲得せんとするプロジェクトは、事業権入札における競争は勿論ですが、「事業運営期間中、長期に亘りきちんと利益が出せる、採算性が取れるプロジェクトに仕上げる」という自分との戦い、採算性との戦いも必要になってくるのです。
今回のプロジェクトも単なる買付プロジェクトではなく、事業権獲得プロジェクトであり、長期に亘る事業リスクを取れるのか、取れない、取るべきではないのか、の判断が必要だったわけです。
実際問題としてインドネシア政府の対応は「裏切り」にも等しく、この点については、菅官房長官も会見で怒りを露わにしていましたが、それも当然のことだと思います。
一方で、当該プロジェクトも用地買収、鉄道敷設といった「下物」と、車両運行などの実際のシステム・事業運営の「上物」につき、どこまでインドネシア政府の責任で、どこまでが事業運営会社の責任か、など確認すべき事柄が多く、また、その資金調達と返済保証については誰が責任を持つのか、などもほとんど何も詰められていませんでした。
インドネシア政府が、資金調達の際に「財政負担が生じない案」、「政府保証を出さなくていい案」を希望し、中国がそれに応じたことで、中国が事業権を獲得した格好にはなっていますが、果たして、中国は本当にそんな莫大なリスクが取れるのか、取ったとしてもそのリスクが具現化する可能性は極めて高く、結局は採算が取れず国益を損なうだけの結果に終わると思われます。
その意味では、今回、中途半端な形で過大な責任を負わされ、事業参加者の利益、ひいては国益を損ねるリスクも高かったと思われますので、決して「負けた」といって落胆するべきではなく、「インドネシア政府と中国のお手並み拝見」という立場を貫けばよいと思っています。
吉良州司