アベノミクスは地方を切り捨て、国を滅ぼす!
前回のブログに引き続き、アベノミクスの問題点を指摘したいと思います。特に、参議院選挙を目前にしている今、安倍政権が国民との約束を反古にしたこと、消費増税延期の理由をアベノミクスの失敗と認めず、世界経済の下振れリスクに転嫁していることなど、厳しく指摘したいと思います。
1.国民との約束を反故に!「再び延期することはない」との約束はいずこへ!
安倍総理は通常国会の閉会日6月1日、「消費税の10%への引上げを再度2019年10月まで先送り」することを宣言しました。
安倍総理は2014年11月、最初に消費増税を延期し、解散総選挙に打って出る旨の会見を行った際、国民に対して次のように約束しています。
「来年(2015年)10月の引き上げを18カ月延期し、そして18カ月後(2017年4月)、さらに延期するのではないかといった声があります。再び延期することはない。ここで皆さんにはっきりとそう断言いたします。平成29年4月の引き上げについては、景気判断条項を付すことなく確実に実施いたします。3年間、3本の矢をさらに前に進めることにより、必ずやその経済状況をつくり出すことができる。私はそう決意しています。」と。しかし、安倍総理は6月1日の会見で「これまでの約束とは違う新しい判断だ」と苦しい説明を行い、国民との約束をいとも簡単に反故にしたのです。
2.またまた「アベノミクスの失敗宣言」!
「3年間、3本の矢をさらに前に進めることにより、必ずやその経済状況をつくり出すことができなかった」からこそ、今回、再度消費増税を延期することになったのです。事実、アベノミクスは誰もが感じている通り、国民生活を全く豊かにしていないどころか、将来世代も含めて国民の生活を苦しくしています。
安倍総理は、アベノミクスがどれだけ順調で成果を上げているか、強調しようとしますが、その成果は、一部の輸出関連大企業や大都市部の資産家にとって歓迎されるものであって、それは、地方を中心とした一般家計の(輸入関連物資の価格上昇により生活費が高くなった結果)可処分所得の減少、つまり、一般家庭の生活が苦しくなった犠牲の上に成り立っているのです。地方の一般家計から輸出関連大企業や都市部の資産家に安倍政権によって強引に「所得移転」させられているのがアベノミクスの本質なのです。
3.アベノミクスの失敗を「国際経済が下振れするリスク」にすりかえる強引さ!
安倍総理は消費増税再延期の理由を「新興国経済の落ち込みなどにより世界経済が下振れするリスク」があるとして、G7主要先進国がその認識を共有して、金融緩和、財政出動、構造改革を各国の事情に応じて総動員することが必要だとの声明を発出しました。そして、わが国としても「リスクに備えるため」に消費増税を先送りし、「アベノミクスのエンジンを最大にふかし、速度を最大限まであげなければならない。参院選の最大の争点は、アベノミクスをもっと加速させるのか、それとも後戻りするのか、だ」と豪語しました。
国際通貨基金(IMF)は、現在の世界経済を「(下振れ要素はあるが)ゆるやかに回復している」とし、先進国の2016年の経済成長率見通しを米国2.4%、日本0.5%、ユーロ圏1.5%、独1.5%、英1.9%、カナダ1.5%、同2017年を米国2.5%、日本-0.1%、ユーロ圏1.6%、独1.6%、英2.2%、カナダ1.9%としています。この見通しを見てお分かり戴ける通り、わが国経済だけが遅れをとっているのです。
アベノミクスの明らかな失敗を認めようとはせず、G7先進国サミットの議長国(他の先進国は議長国の顔をたてて、日本の提案に正面からは反対しない)の立場を利用して、世界経済の下振れリスクを理由にした消費増税の延期や、財政出動を正当化することは、決して許されるものではありません。事実、世界のメディアは批判的な論評をしています。
4.金融緩和政策は限界、財政出動は一時的なカンフル剤
最近、安倍政権は「株価の上昇」をアベノミクスの成果として強調しなくなりました。実際、株価は(2016年6月初旬現在)16000円前後の横ばい状態であり、継続的に上昇する気配にないので、成果として強調できなくなりました。アベノミクスの異次元金融緩和政策も株価の低迷や民間設備投資や個人消費の伸び悩みに直面し、もはや限界にきています。
それだからこそ、手っ取り早く「数字的成果が表れる財政出動」の必要性を強調するようになりました。大型補正予算などの財政出動は確かに出した金額分はGDPの押し上げ効果がありますが、それは、一時的なカンフル剤でしかなく、将来的に国を豊かにしていく経済成長とは直接関係ないばかりか、かえってマイナスになります。経済学的な詳細を説明する余裕はありませんが、将来的な成長につながる民間貯蓄と投資の機会を奪ってしまうからです。
わが国は自民党政権下が大半を占める1993年から今日まで、公共事業を中心に財政出動を繰り返し、その財源は1000兆円を超える国と地方の借金でまかなってきました。そこまで借金を積み上げたにもかかわらず「失われた20年」の経済社会が続いており、今だに脱しきれていないのです。
この成果の上がらない、借金のつけを将来世代につけ回すだけの財政出動をこの先も続けていいのでしょうか。もし、それが許されるとすれば、それは将来世代、若者たちへの人的投資だけです。
5.有効求人倍率の向上はアベノミクスとは全く関係ない!
安倍総理は、最近アベノミクスの成果として強調できなくなった株価などに変えて「有効求人倍率が向上した」と説明し始めていますが、有効求人倍率の向上はアベノミクスとは全く関係なく、人口減少、生産年齢人口が減少し始めた結果の話です。今、問題なのは、雇用のミスマッチなのです。正規社員を希望するのに非正規社員の働き口しかない、もう少し、給料の高い業種で働きたいと思ってもそのチャンスがない、などといった雇用のミスマッチが問題であり、人口減少のため、職を選ばなければ働き口は数的にはあるのです。
6.若者、将来世代、子育て世代への人的投資こそが真の成長戦略!
このように、時代環境は大きく変化しており、自民党のお家芸である公共事業は一時的なカンフル剤として選挙対策にはなっても、わが国を将来に亘って豊かにする真の成長戦略からはほど遠いものです。
金融緩和政策の限界を感じた安倍政権はアベノミクスの主軸を財政出動に移そうとしていますが、その財源はほとんど借金であり、将来世代から今を生きる人たちへの時を超えた仕送りでしかありません。それも将来世代の同意を得ることなく、今の大人が勝手に決めて強要しているのです。「経済成長」とは付加価値を増やすことです。その付加価値は人の能力が向上することと、人がつくりだす技術革新以外に産み出すことができません。今こそ、若者、将来世代、その世代を育む子育て世代への人的投資を最優先した政治を実現し、子々孫々に豊かな日本を紡いでいこうではありませんか。