米軍によるシリアの空軍基地攻撃と3月17日外務委員会の質問要旨
重大なニュースが今朝(2017年4月7日)、飛び込んできました。
アメリカ国防総省の声明によると、トランプ大統領の指示により、米軍がシリアのシャイラート空軍基地に対し巡航ミサイルを発射(日本時間の7日午前9時40分頃)。
地中海に展開するアメリカ海軍の駆逐艦「ポーター」と「ロス」の2隻から、シリアの空軍機、燃料・弾薬施設、レーダー・防空施設を標的に合計59発の巡航ミサイルが発射されたとのことです。シャイラート空軍基地は化学兵器の貯蔵に使われていたとしていて、米国情報機関はこの基地を離陸した空軍機が化学兵器の攻撃を実施したと判断し、シャイラート空軍基地にある空軍機や設備に大きな損害を与えた結果、シリア政府による化学兵器の使用能力が低下したとのことです。
罪のない子供たちが犠牲になったことで、トランプ大統領がいち早く決断・実行したのだと思います。
現在、米中首脳会談が行われていますが、この素早い決断と実行は、対北朝鮮や東アジアにおける既存秩序への挑発的挑戦を続ける国に対しての大きなメッセージになります。
この件に関しては、事実関係情報を入手した上で日をあらためてお伝えすることにし、以下では時間が経ってしまい申し訳ありませんが、去る3月17日の外務委員会における質問要旨をお伝えいたします。
1.日米首脳会談
(前回質問の内容を要約すると断ったうえで)安倍総理とトランプ大統領の首脳会談は概して成功であったと評価するが、それは短期、中期、長期で見たときの短期での成功である。
いまだに反トランプの運動が全米でなされ、世界的にも、トランプ大統領に対する反発が根強い。そういう中にあって、政権と政権、国と国との関係はいいけれども、トランプ大統領個人に対して余りにも近づき過ぎると米国民の中の反トランプ感情を考えると、いかがなものかと問題提起する。
4年後、8年後、それ以降の大統領選挙を考えたときに、トランプ大統領個人と近づき過ぎることによって、米国内における対日感情が悪化をする、それが4年後以降の日米関係に悪影響を与える懸念があるので、トランプ氏個人に対して深入りするのは慎重であるべきだ。
短期的に見れば、トランプ大統領とも親密な関係を築かなければいけないが、同時に、今後の米国の世論に対しては日本としても極めて敏感であらねばならない。
その意味で、外務省として、米国における世論調査をきちっとやると同時に、対日好感度を増すような広報戦略を実施していくべきだ。
2.ティラソン国務長官への期待感
私自身は会ったことはないが、ティラソン国務長官は誠実、実直であり、信頼できる方なのではないか、また、エクソン出身ということもあり、地政学的、エネルギー地政学という観点から世界を俯瞰できる方だと思っている。
私自身の商社時代の電力プロジェクト分野での経験からも、米国のエネルギー企業、オイル・アンド・ガス業界は、世界のエネルギー地政学も含めて世界全体を俯瞰しながらプロジェクトを遂行している。その意味で、ティラソン国務長官はエクソンでの長年の経験があり、その方が国務長官になっているということは、トランプ大統領本人は心配であるけれど、マティス国防長官の存在とあわせ、安堵しているし、期待もしている。
この大物国務長官と国防長官を相手にする日米2プラス2、の我が国方の岸田外相はよしとしても、稲田大臣が互角に渉りあえるとはとても思えず、今議論されている疑惑、隠蔽問題も含めて、極めて心配をしており、一刻も早い辞任をしてもらいたい。
今回のティラソン国務長官との外相会談の中で、北朝鮮問題につき、ティラソン国務長官が「あらゆる選択肢を排除しない」と言ったということは、「軍事力の行使も排除しない」と言ったに等しいと思っている。対話と圧力の両方が重要だが、北朝鮮の過度なまでの挑発を見ると、圧力が非常に大事だと思っている。軍事的オプションは一切行使しませんということであれば、圧力にならないと思うので、圧力の一つの手段として、米国はもちろんのこと、我が国が敵地攻撃能力を持つことの是非について議論を始めてもいいと思う。
3.PKO活動の今後
PKOにつき、南スーダンからの撤収の決断は大変高く評価をしている。民主党政権時代に派遣を決定したが、派遣決定した時から環境が大きく変化しており、危険度が増したからだ。
南スーダンの司令部要員は残るとしても、部隊としてのPKOは世界のどこにも展開していないという状況になるが、これによって、世界を見回して、どこか早く派遣しなければならないなどと焦る必要はない。
湾岸戦争のときに日本は人的貢献をせずにお金で貢献しようとしたことにより、米国をはじめ世界から非難を受けたことからPKOの積極展開がはじまったと思っているが、これまでの我が国のPKOでの貢献・実績は世界に誇れるものだと思う。加えて、今、海賊対処もやっているわけで、日本としてこれまでも人的貢献を十分やっているし今もやっている。従って、部隊派遣がなくなったといって、焦って派遣しようとする必要はない、必要があれば派遣をするという姿勢で臨んでいただきたい。
以上が、去る3月17日の外務委員会における質問要旨です。
世界情勢は緊迫の度を強めています。引き続き、情報を整理して、冷静な情勢分析をお伝えして参ります。
吉良州司