吉良からのメッセージ

2017年7月30日

蓮舫代表辞任と民主党政権の評価

先週、民進党蓮舫代表が辞任を表明し、代表選挙が実施されることになりました。

蓮舫さんは、安倍政権の支持率低下に対して民進党がその受け皿になれない責任を取って
辞任しました。私は、辞任会見に先立つ両院議員懇談会において、「民主党政権への厳し
い評価がある限り、誰が代表になろうとも支持率を回復することは難しい」と、今回の代
表責任論に与しない考えを主張しました。

私は、民主党政権への再評価がない限り、誰が代表になろうとも現在の民進党に対する国
民の支持や期待を取り戻すことは極めて難しいと思っています。民進党には生まれ変わっ
たものの、国民の多くは民進党の前身は民主党だと思っています。
両院議員懇談会でも述べましたが、民進党がどれだけ鋭く正当な安倍政権批判をしようと
も、「お前たちにそういう資格があるのか。お前たち民主党政権は全て駄目だったじゃな
いか。自分ではできもしないくせに、人を批判するんじゃねえよ!」という反応があるか
らです。

この厳しい評価と批判は、「政権交代選挙」を経てつくった「民主党政権」による新しい
清新な政治を期待した多くの有権者に、期待の反動として大きな失望感を抱かせてしまっ
たので、そうそう容易に覆せるものではありません。その失望感と嫌悪感が、自民党をは
じめとする他政党の支持が下がったとしても、それが民進党への支持には向かわせないの
です。

以下では、期待を裏切られたと感じている多くの方々から大きな批判を受けることは覚悟
の上で、民主党政権の功罪両面について、私の考えをお伝えしたいと思います。

確かに、民主党政権は、政権運営の経験不足から、また、政権批判でしか生きていけない
与党議員による激しい与党内政権攻撃、その結果としての与党分裂により、本来目指して
いた政治、政策が実現できなかったことは猛省しなければなりません。また、鳩山総理の
普天間問題では「ど素人政権」との印象を決定づけられてしまいました。本来、役割分担
であるべき政治家と官僚の関係を人気取りを意識した官僚叩きによりその関係を悪化させ、
政策立案、法案成立、政策遂行などあらゆる面で支障をきたしました。その結果として国
民の信頼を失ってしまったことは言い訳のしようがありません。

しかし、少子化・高齢化が進み人口減少がはじまった社会、格差が拡大し将来に対する不
安感がぬぐえない社会、グローバル化の進展に伴い大きな産業構造変化が進む経済社会、
莫大な借金を抱える国家財政の中で増大する社会保障費の負担の問題、などなど我が国が
抱える諸課題とどう向き合い、将来に向かってどういう社会を新しく創っていくべきか、
という国家百年の大計について、民主党として打ち出していた方向性、政策の中には間違
っていないものも数多くあります。

その多くは安倍政権のよっても引き継がれています。小泉進次郎議員が打ち上げれば好意
的に評価される「子供保険」はばら撒きと非難された「子供手当」の本質部分の踏襲です。
「子育て支援」や「保育所の待機児童解消」などはそのまま引き継がれています。一億総
活躍社会は民主党が打ち出していた「誰にでも居場所と出番がある社会」の漢語訳です。
一般にはあまり知られていませんが、現自民党政権の防衛大綱も民主党政権時代に大きく
方向転換した平成22年の防衛大綱内容を継承しています。最も引き継いでもらいたかっ
た、三党合意に基づく「税と社会保障の一体改革。消費税の10%への引き上げ」は、残
念ながら安倍政権延命のために反故にされました。再度、合意形成をして実行しなければ
我が国は安心と活力のある社会を創ることができません。

猛烈な勢いで少子化・高齢化・人口減少化する成熟社会・日本が、この新しい時代に向か
っていくべき方向性と政策については、自民党を含め誰も、どの政党も成功体験を持って
いないのです。自民党政権に対する安心感は「戦後焼野原となっていた発展途上国日本を
戦後復興と高度成長戦略により世界の経済大国に押し上げた実績」に対する安心感と信頼
感であって、現在進行形の成熟社会日本の舵取りや政策の方向性については、全ての政治
家・政党が素人なのです。国民の多くが初期段階で期待したアベノミクスも古い時代の政
策メニューをびっくりするような物量で実現しようとする域を出ないので、現在は挫折し
つつあるのです。

東京都議会選挙に見られるように、自民党のオウンゴールの連続や民主党政権への失望感
や嫌悪感が、既存政党への「飽き」や「批判」や「怒り」となり、その時は新鮮に映るポ
ピュリズム的新党に支持が糾合されてしまいます。さらに、その新党はど素人集団として
長くは続かずにブームだけで消えていく、という歴史が繰り返されることになるのです。

民主党の政権運営とその結果については猛省あるのみで言い訳をしてはなりませんが、新
しい時代の誰も経験したことのない成熟社会の目指すべき方向性を打ち出していた民主党
政権のそれを今一度見直してもらいたいと思っています。

私は民主党や民進党という政党にこだわる気持ちは全く持ち合わせていません。しかし、
「チルドレン・ファースト」「子育て支援」といった「将来世代最優先の政治」や「人へ
の投資こそが成長戦略」などの方向性や政策は間違っていないと思っています。民主党政
権時代に与党議員・政務三役として政権運営に関わった議員が中心となって、失敗経験と
猛省をバネにして、これらの理念・政策を実現していくことが望ましいと思っています。

その遂行集団に、政権運営経験豊富な自民党議員も含めて、同じような問題意識や目的意
識を持つあらゆる政治家に合流してもらうことが最善ではないかと思っています。

少し長くなりましたので、一旦ここで今日のメルマガを終わりますが、代表選に向けた状
況に応じて、適宜、メルマガを発信してまいります。

吉良州司