吉良からのメッセージ

2019年7月26日

安倍総理のトランプ大統領との蜜月ぶりに物申す

前回のメッセージでは、参議院選挙のお礼と同時に、野党共闘の苦悩について正直にお伝えしました。今日は、前回メッセージの最後の文章で紹介した、参議院選挙の応援弁士として訴えた内容の内、トランプ大統領に関する点だけに絞ってお伝えします。個人演説会という場の、一般参加者向けの応援弁士としての発言であることは前以て留意願います。

(1)トランプ大統領の存在が米国社会や世界の分断を生んでいる

トランプ大統領の登場により、差別的言動や自国さえよければいいという風潮が世界中に拡がり、米国社会は勿論、世界中に分断と対立を生んでいる。また、国際社会や国際経済を大混乱に陥らせている。

(2)米中貿易摩擦は日本経済と国民生活を痛めている

米中貿易摩擦も日本には関係ないと思っているかもしれないが、日本企業は中国に投資し、主に米国向け輸出製品を製造していることが多い。自分も商社時代、中国企業との合弁会社を設立し、その会社の製品はほぼ100%米国向け輸出だった。それゆえ、米中貿易摩擦により、日本から中国への基幹部品などの輸出が減り、また、投資先からの配当が減るので、日本経済と国民生活にマイナスの影響を与える。

(3)対イラン経済制裁と中東の不安定化は日本の経済と国民生活を悪化させる

イラン核合意について、イランは合意内容を忠実に履行しており、何ら責められるようなことはしていない。それにも拘らず、トランプ政権は一方的に核合意から離脱し、イランに経済制裁を課して中東の緊張を高めている。トランプ大統領がイラン核合意から離脱した理由は、トランプ大統領本人も語っているが、オバマ政権による合意であること、米国の同盟国であるイスラエルとサウジアラビアが米国製武器を大量に購入していること、の2点であり、如何に自国本位の理由であることか。
トランプ大統領はオバマケアの否定が代表例だが、オバマ政権がやったことを全部ひっくり返すことを目的化している。
また、イスラエルとサウジアラビアが脅威としているのがイランであることは、国際社会の共通認識であるが、その同盟国が武器を大量購入してくれたからといって、何の罪もないイランを一方的に経済制裁という形でいじめることは全く筋が通らないし、許されることではない。
イラン国民は、公の場で「イスラエルをこの地球上から抹殺する」とまで言い切っていたアフマニネジャド前大統領の対外強硬路線から、国際社会との協調を志向する現在のロウハニ氏を大統領に選出し、核合意を成立させたことからも明らかなように、国際協調路線に舵を切っていたにもかかわらず、である。

ペルシア湾から、ホルムズ海峡経由で石油の9割を輸入する日本にとって、中東の安定と平和は死活的に重要。つい先日も日本籍のタンカーが爆破されたが、犯人は確定できないものの、このイランと米国間の緊張関係の高まりが背景にあることだけは確かである。
中東の緊張が更に高まり、万が一紛争、戦争に至ることになって世界で一番打撃をうけるのは、他でもない日本。石油価格の高騰、日常生活にも影響を及ぼすガソリン価格の高騰など、日本経済と国民生活に多大なマイナスの影響を与える。

(4)トランプ大統領の退任後は、米国内は勿論、世界中で批判の大合唱が起こる

現在の米国は経済力といい軍事力といい、世界を圧倒しているので、どの国もその現職大統領に対しては面従せざるをえない。しかし、本音では腹背していることは間違いない。欧州のリーダーたちは、その人格や非常識さが世界を混乱させていることを憂慮しているがゆえに、トランプ大統領を本気で相手にしていない。

トランプ大統領の退任後、トランプ氏個人への批判、トランプ政権への批判が噴き出すことは間違いない。そんなトランプ大統領と個人的にべたべたしていたのはどこの国の誰だったのか、という議論も必ず沸き起こる。このことは、日本の将来、日本外交に大きな禍根を残すことになる。

(5)日本経済と国民生活を悪化させるトランプ大統領とべたべたすることは国益にならない

自分も家族とともに5年半米国に住んでいたこともあり、米国も米国人も大好きだ。日米関係、日米同盟が日本にとって最も重要であることも当然認識している。しかし、上記のように、米国社会を分断し、国際社会や国際経済を混乱させているトランプ大統領、日米貿易摩擦、イラン核合意からの一方的離脱と中東を不安定化させることにより、日本経済や国民生活を悪化させているトランプ大統領との過度な蜜月ぶりは、日本の国益にならないどころか、マイナスになる。

以上のように、トランプ大統領との個人的良好関係を日本外交の大きな成果のように誇る安倍総理に対する反論として、日本経済と国民生活を悪化させる同大統領との過度な蜜月ぶりは国益に反するという訴えを行いました。

もっとも、安倍総理もそれくらいのことは分かっていると思います。しかし、中国の南シナ海、東シナ海での挑発的な行動、尖閣をうかがう活動、一帯一路戦略を駆使した経済的覇権主義への警戒の必要性などを考えると、ポチと言われても今は米国トランプ大統領に付いていくしかないと判断しているのだと思います。
そのことも承知の上、それでも尚私は、安倍総理のトランプ大統領との蜜月ぶりは度を越しており、長期的視野にたった場合、日本にとって憂慮すべきことだと思っています。

吉良州司