マイナンバーと消費税、そして吉良州司の原点
4回シリーズで持論をお伝えしたマイナンバー制度の利活用提案に関して、多くのご意見を戴きました。まずは、この場をお借りして、関心を持って読んで戴いたこと、また、ご意見を戴いたこと、深く感謝致します。
ご意見を参考にしながら、今日は、「マイナンバーと消費税」、より正確には「マイナンバーと低所得者に対する消費税納税額の還付」についてお伝えします。今後しばらくは、アフターコロナ、ウイズコロナ時代を念頭に置きながら、国のあり方、社会経済のあり方について、テーマ毎に、私の考え方をお伝えしたいと思います。
マイナンバーによる所得把握と簡易な確定申告の必要性を強調した際、緊急時に低所得者に迅速に給付を行うためだ、とお伝えしました。また、将来的な資産課税に言及した際は、その負担軽減と経済活性化のために、資産税納税額と消費税納税額を相殺する案についてお伝えしました。
私は、将来世代のため、子育て世代のため、また、税・社会保険料負担の真の公平性を担保するため、消費税率を大幅に引き上げるべきだと主張し続けてきました。今でも、消費税率は最低でも20%、できれば20%台半ばまで引き上げるべきだと思っています(注1)。但し、大幅な消費税率引上げは、低所得者に対する消費税納税額の還付が前提です。
買い物する際、強制ではなく任意を前提としますが、マイナンバーカードの提示か、または、同カードの提示はなくとも、その買い物客のマイナンバーが特定できる方法により、その買い物時にいくら消費税を支払ったかをマイナンバー上に記録し、消費税の年間納税額の全部または一部を所得に応じて還付するという仕組みです。
下記に例示する数字は現時点で政策的に考えている数字ではなく、この仕組みのイメージを抱いてもらうための極めて単純化した数字ですが、たとえば、年収150万円未満の人には消費税納税額の100%還付、年収250万円未満なら納税額の50%還付と徐々に還付率を下げていき、年収350万円以上は還付しない、といった仕組みです(注2)。
これらの場合、消費税率は10%だとしても、年収150万円以下の人は払った消費税全額が戻ってくるわけですから、消費税率はゼロ%と同じです。年収250万円の人は払った消費税額の半分が戻ってきますから実際負担する消費税率は5%と同じです。
従って、消費税率を上げるといっても低所得層を更に困窮させることにはなりません。一方、中間層、高所得者層には、高い消費税の負担をお願いすることにはなりますが(と言っても西欧諸国は20%弱、北欧諸国は20%半ばの付加価値税)、子育て支援や、高校授業料無償化、高等教育の負担軽減、手厚い失業時の生活保障、前回のメルマガでお伝えした緊急時生活保障制度、安定した年金給付など社会保障の充実のために充てられる、として理解を戴きたいと思います。また、所得は低いが、多くの資産を持っていて、金融所得などその資産から所得を得ている人には消費活動を通して、相応の税負担をしてもらうことになり、所得層、世代間の負担の真の公平性に繋がると思います。
よく、格差をなくすために「高所得者に対する所得税の累進性を強化しろ」という議論がありますが、格差解消にも税収増にもほとんど効果がありません。この問題については、別の機会に数字を示した上で事実と私の持論をお伝えしますが、上記のように、消費税還付の制度と併用することを前提に、消費税率を上げることが、格差縮小は勿論、安心で持続可能な社会保障のため、将来世代のため、財政の健全化のために必要です。
尚、これまでのメルマガでもお伝えしてきた通り、現在のコロナ禍下にあっては、消費税をなくす、消費税率を下げることには反対ですが、今足元で困窮している人と会社の救済こそ財政健全化よりも優先すべきであり、国債発行はやむを得ないと思っています。しかし、これから先は、財政健全化も念頭に置きながら、アフターコロナ、ウイズコロナ社会の有り様を構想していかなければならないと思います。
今次コロナ禍下、政府の支援策が後手後手に回り、スピードが最優先されるべきところを、あれやこれや条件を付けての支援策しか出せなかった最大の原因は、我が国の財政状況が極めて不健全だからです。この状況をつくったのは一体誰なのか、どの政権なのか、そのことを国民も自らの責任にも思いをはせながら、厳しく検証する必要があると思います。ドイツが、迅速な支援策を実行できたのも、付加価値税を下げる決断ができたのも、財政が極めて健全だからです。その背景を考えずに単に「ドイツも付加価値税を下げている」と例示しながら我が国の消費税率を下げる議論に与するのは如何なものかと思います。
現在の我が国において一番の弱者は、これから生まれてくる、まだ幼く無邪気にかくれんぼをしている、今一所懸命勉学やスポーツに勤しんでいる、子供たち、将来世代です。何故なら、声をあげる権利もなく、了承しているわけでもないのに、いつの間にか、大人がつくる負債の「連帯保証人」として莫大な借金を背負わされ、人生のスタート時点から厳しい環境に置かれるからです。今の大人の無責任さの犠牲者です。
私が政治家を志したのは、選挙権を持たないが故に声をあげることができない子供たちや将来世代の代弁者となり、彼ら彼女らに余計な負担を負わせることなく、よりよい人生の第一歩を踏み出すことができる環境をつくりたかったからです。そのためには、今の大人の耳に痛いこと、自分の選挙には不利なことでも、声を大にして訴え続ける、それが私の原点です。
吉良州司
<注1> 消費税を大幅に引き上げる際、住宅購入など生活に必要でありながら高額なものについては別途その負担軽減策を考える必要があります。「高額療養費(支給)制度」と同様の扱いとし、購入時には消費税率分全額を一旦払ってもらいますが、所得に応じて自己負担上限額を制度上決めておき、上限額以上納税した消費税額は後で還付する方法などが考えられると思います。
<注2> 消費税還付の有無と還付率をどの年収層によって区分けするかは、政策的に大変重要な課題です。ひとつの目安となるのが、国民を所得順(等価可処分所得順)に並べ、その中央値の半分に満たない人の割合である「相対的貧困」という所得水準です。詳細は複雑なので割愛しますが、厚労省によると、「等価可処分所得」とは、「世帯の可処分所得(収入から税金・社会保険料等を除いたいわゆる手取り収入)を世帯人員の平方根で割って調整 した所得」とのことです。相対的貧困の2015年の等価可処分所得はひとり世帯で122万円、4人世帯で約244万円、同年の相対的貧困率は15.6%となっています。
吉良州司(再度の署名ですが、注についても執筆責任を明確にするためです)