コロナ感染再拡大とGo to キャンペーンに思う
コロナ感染の再拡大を受けて、政府対応の軸が定まっていません。Go to キャンペーンに関するアクセルとブレーキの問題、お盆時期の帰省についての混乱しかりです。
今日は、「Go to キャンペーン」の開始時期を含む是非についての私の考えをお伝えします。
結論から言えば、時期尚早だと思います。今の政治の最大の問題は、与野党とも「やってる感」、「国民のために頑張っている感」を出すことが目的化していることです。その対応策が本当に国民のためになっているのか、足元の現在だけでなく将来に亘って国民のため、今苦境にある人の為になるのか、という視点が二の次になっているのではないかと疑問を持ちます。
コロナ感染が再拡大している最中に国民は、心の底から楽しめる旅行に出たいとは思いません。勿論、長く続いた自粛の反動として、久しぶりに羽を伸ばしたい、旅行に行きたいという若者や子ども連れの家族がいることは確かです。そして、決して責められる筋の思いではありません。しかし、まだ不安が残る時期に、それも日を追って感染拡大する時期に「政府がわざわざ音頭をとって、しかも補助金を付けてまで」旅に出ることを促すことが今必要なのでしょうか。
壊滅的な痛手を受けている観光関連産業を救済することは極めて重要なことです。しかし、迎える旅館やホテルは、感染対策から、収容人数の半分程度しか受け入れることができない場合がほとんどです。その場合、旅館・ホテルからすれば、受入人数が減少する分、単価を上げることにより採算を維持することが重要になります。その際、「Go to キャンペーン」による補助があるから旅行に出かける客層を相手にしていたのでは、宿泊料単価、宿泊施設内で落とす金額にも限界があります。
一旦、話を横道に逸らさせてください。緊急事態宣言が解除された後に地元に戻った際、よく行くお店数軒に飛び込みました。自粛期間中何とか持ちこたえていてほしいと祈るような気持ちでした。宣言解除後、少しずつ客は戻ってきてはいるものの、まだ平常に戻るには時間がかかりそうだとのことでした。私は、お店の方に、メニュー料金をこの時期だけは5割増しにしてはどうか、と提案しました。経済的に少しは余裕のあるなじみ客は、店を続けてもらうために、料金が割り増しになったとしても喜んで受けてくれるよ、と伝えました。実際その日は、いつもより単価が高いものをたくさん注文し、いつもより多めの会計となりました。
今の時代、経済的に余裕のある人が多いとは思いませんし、余裕のある人でも、通常の宿泊料や飲食代より単価が上がって喜ぶ人も決して多くないかもしれません。しかし、まだ不安が残る今の時期は、政府からの支援に頼って旅行に出かけたり、飲食する人を相手にしていたら、受け入れ人数を制限している宿泊施設や飲食店は採算が取れません。
また、ウイズコロナ時代にはインバウンド客に頼ることもできなくなります。星野リゾート路線のように、高いお金を戴くだけの質の高いサービスを提供することで活路を見出す、そのような宿泊施設しかウイズコロナの時代には生き残れないと思います。
政府が音頭を取り補助金を出してまで支援するのは、人々の不安がなくなるか小さくなった時に実施すべきだと思います。それよりも、今は感染拡大防止に比重をおきつつ、観光関連会社の固定費を補助する政策が必要だと思います。
いずれ、シリーズでお伝えしたいと思っていますが、平成の30年間、他の先進国諸国は大きく経済成長し、国も個人も豊かになっているのに、日本だけが、経済成長もできておらず、個人に至っては実質賃金がマイナスとなっていて、かえって貧しくなっています。
この厳しい経営環境や生活環境が続いた結果、会社も個人も自力で何とかしようという気概がなくなり、すぐに「国よ、なんとかしてくれ!」「国が何とかしてくれる」といったように「国や政府に依存する」会社や個人、逆に、政府が支援の手を差し伸べようとしなければ、国や政府を批判する会社や個人ばかりになってしまいました。「依存」ばかりしている国、社会に活力も明日もあろうはずがありません。我が国の会社、個人、地域に最も必要なのは「依存」から「自立」へと向かう覚悟だと思います。
吉良州司