吉良からのメッセージ

2020年11月2日

日本のエネルギー問題解決に貢献する核融合技術 ~核融合施設を視察して~

10月26日から臨時国会が始まりました。菅総理は所信表明演説において、2050年にカーボン・ニュートラル(二酸化炭素CO2の排出量と吸収量とがプラスマイナスゼロの状態)にすると宣言しました。中長期的なエネルギー政策については、核融合技術が現実的に発電への実用化を可能にするのか、また、実用化できるとすれば、それがいつになるのか、が大変重要です。私は中長期的なエネルギー政策には、是非核融合発電を組み込むべきだと思っています。核融合発電については、2018年に閣議決定された「エネルギー基本計画」にも盛り込まれてはいますが、その一刻も早い実用化に向けた研究と実証に国運をかけるほどの予算をつぎ込み、資源小国日本の自前のエネルギー源、電力源を確保すべきだと思っています。
上記のような問題意識を持ちながら、先日10月21日に国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構・那珂核融合研究所を視察しました。

高温ビーム装置の説明を受ける

トカマク型核融合施設JT-60SAの前にて

同研究所の栗原所長をはじめ大歓迎して戴き、多くのことを学ばせてもらいました。最近は我が国の経済力の衰え、国力の衰えを感じることが多く、正直言って将来に大きな危機感を持っていましたが、同所内で組み立てが完了したJT-60SAという核融合設備の世界最高水準の科学的・工学的技術を目の当たりにし、また、それを担っておられる研究者・技術者のみなさんと直接お会いして話を聴く中で、「技術立国」として生きていく限り、日本の将来は明るいと確信を持ちました。
私は、2019年11月27日の科学技術イノベーション特別委員会において、この核融合技術の重要性について質問をし、その中で、エネルギー安全保障が私のライフワークであることにつき、次のように述べています。
「自分は1980年に社会人となったが、その前年1979年は第2次石油ショックの年だった。また、大学在学中、世界の有識者の集まりである『ローマクラブ』から、数十年先に化石燃料が枯渇するとの衝撃的な報告書が出された。その時、資源小国日本の先行きが心配になり、仲間と勉強を重ね、資源小国日本のエネルギー安全保障について、どうあるべきか考え、その延長で商社を就職先として選んだ。その時から『エネルギー安全保障』は私のライフワークだ。資源を海外に頼らず、環境対策にも資する、更には核技術ではあるが安全性の高い、自前のエネルギー源としての核融合に期待している」と。
核融合技術とは簡単に言うと「地球に太陽をつくる」技術です。まさに「夢のエネルギー源」となりえます。
私は科学者ではありませんので、素人説明になることをお許し戴きたいのですが、核融合の原理について、簡単に説明します。
まず、太陽がエネルギーを創出する仕組みです。太陽は体積で地球の130万倍、質量で33万倍もある巨大な恒星ですが、46億年前に太陽ができた時には全て水素で構成されていました。現在は核融合反応により半分の水素(原子番号1)がヘリウム(原子番号2)に変換しているので、半分は水素、半分はヘリウムとなっており、太陽自身の寿命が約100億年と言われていますので、この先の寿命は約50億年です。太陽内で起こっている核融合反応は、太陽自身の巨大な圧力(中心核の圧力は2400億気圧)により、水素原子4つがヘリウム原子ひとつに変換していく反応です。水素ひとつの質量を仮に25とすると、水素原子4つが融合して100の質量のヘリウムとなってもおかしくないのですが、現実には、水素原子100の質量は融合する際に99.3はヘリウムとなり、0.7%の質量は消滅してしまいます。アインシュタインの「質量エネルギーの等価性」理論により、この0.7%消滅する質量が莫大なエネルギーを生じさせます。太陽の中心核では、毎秒5億4600万トンの水素がヘリウムになっていて、毎秒生み出すエネルギーは、適切な例ではないかもしれませんが、広島型原爆5兆個分にも及びます。
「地球に太陽をつくる夢の技術」とは言っても、地球上では、太陽の中心核の2400億気圧などつくりだせませんので、施設内に約1億度の超高温のプラズマをつくりだして、燃料となる重水素と三重水素の原子と原子を高速でぶつけさせることでヘリウムをつくる核融合反応を起こすのです。
このプロジェクトには日本を代表する企業や研究機関が携わっているのですが、日本の科学技術の素晴らしさは、科学的に計画されたアイデアを工学的、産業的に「つくる」ことができる点にあります。JT-60SAという核融合設備は、「ITER」という7つの国・地域が技術の粋を尽くしてフランスで建設を進める本格的核融合施設のミニ版になりますが、世界最高水準の技術であることは間違いありません。

トカマク型核融合施設JT-60SAの前で説明に聴き入る


核融合施設JT-60SA制御室前にて

少子化、人口減少が進む我が国が今後豊かな国となるためには「人財立国」「技術立国」の道しかありません。その技術立国の先頭を走る「核融合技術」「核融合発電の早期実現」に向け微力ながら尽力したいと思っています。そして、我が国の一番大きな課題である「自前のエネルギー確保」問題を解決し、同時に、「世界のエネルギー問題解決に貢献する日本」にしたいと強く感じた極めて有意義な視察でした。

吉良州司

視察を終えてお礼の挨拶