吉良からのメッセージ

バイデン氏の勝利を祝すとともに今後の課題を考える

米国大統領選挙はバイデン氏が勝利し、米国民の良識が示されたことを心の底から喜び、祝したいと思います。

根拠のある説明でなく恐縮ですが、最高裁は「いわゆる保守派判事」が過半数を占めるとは言え、それは、銃規制、人工妊娠中絶といった価値判断を伴う判決の行方を左右する可能性があるのであって、各州で法的に認められた郵便投票を無効とするような判決は出されないだろうと信じています。

あの英国ジョンソン首相が早々と祝意をバイデン氏に伝えたようです。また、ドイツ、フランス、イタリアなどの首脳も相次いで祝意を伝えています。我が国も一刻も早く祝意を伝え、世界の主要各国が今度の大統領選挙の有効性とバイデン氏勝利を認めていることをトランプ氏とトランプ支持者にも「目に見える形」で伝え、今後の訴訟などの混乱に終止符を打つ側面支援をすべきだと思います。

バイデン氏の勝利宣言は高齢を感じさせない非常に力強いものでした。そして、カマラ・ハリス次期副大統領の演説内容、何よりもその笑顔は最高でした。分断を乗り越え、差別を解消しながら良識ある米国を取り戻す道を歩み始めることを確信させるものでした。

バイデン大統領、ハリス副大統領により、米国の混乱、米国民の分断が解消され、再び世界から尊敬され、世界平和と人類の諸課題を解決する先頭に立つ国に戻ることを祈ります。

さて、今後、何故トランプ大統領を誕生させたのか、何故ここまでトランプの熱狂的支持者がいるのか、その根本原因を見極め、問題解決の一歩を踏み出すことがバイデン新大統領に課せられた課題です。

前回のメルマガで米国民の「理想と現実(本音)」について簡単に触れましたが、ある時期までの米国民は、内面に持つ本音をあからさまに言動に移すことを控え、理性と同じく内面に持つ「理想を追い求める建国精神」と経済的余裕からくるおおらかさによって、寛容性と多様性を体現する国民でした。私が5年半暮らした1995年から2000年半ばまでは、米国民の経済的、精神的豊かさを実感する日々でした。そのようないい思い出があるだけに、いつから、また、何故、こうも変わってしまったのか、その原因を見極め、容易ではないと思いますが、その課題克服に踏み出してもらいたいと思います。

米国の富の偏在と格差の拡大は日本の比ではありません。トップ富裕層0.1%が持つ富は国全体の20%、トップ富裕層1%が持つ富は国全体の39%、上位10%の富裕層が持つ富は国全体の74%を占めます。つまり下位90%の持つ富は国全体の26%に過ぎないのです。

この傾向は、ほぼ全ての先進国に共通します。日本ではその原因について、よく「小泉・竹中による新自由主義が格差を拡大させた」といった議論がなされます。しかし、私は、労働への評価、労働対価が「時間と労力の提供」から「成果の提供」に対する対価へと変化していることが根本原因だと思っています。つまり、「筋肉の投入量」から「頭脳の投入量」がより重視されるようになった結果だと思います。エッセンシャルワークといわれる対面仕事を除く、時間と労力を提供することが中心になる工場での労働などが海外に移転され、本社機能や研究開発機能だけが本国に残ることがそのことを加速させます。言い換えれば、海外の労働力や土地などを経営資源として利用できるグローバル企業と国内だけを相手にするローカル企業間とその従業員間の格差が拡大しているのが現実だと思います。この現実が「米国第一主義」「工場を、ジョブを、国内回帰させる」といったトランプ主張が熱狂的に支持される原因なのだと思います。

一方、米国のスーパーやデパートを見れば明らかなように、米国の消費者ほどグローバル化の恩恵を受けている人たちはいません。もはや、グローバル化自体を白紙に戻すことはできないのです。社会主義的政策を徹底して嫌うのが米国社会ですが、ことここに至っては、共和党支持者にも理解を得られる範囲で、再分配機能を働かせること、更には、多国籍企業による「脱税に近い節税」にもメスを入れる必要があるのではないかと思います。また、次期ファーストレディになるジル・バイデンさんが副大統領夫人であった時も教鞭を執り続けてきたコミュニティカレッジの充実など貧困家庭やマイノリティの人々も高等教育を受けられるよう、教育の機会均等を全ての国民に保証していくことも重要だと思います。

これらのことは我が国も含めすべての先進国に共通する課題であり、私が主張する「業界中心政治」から「(消費者や納税者も含む)生活者中心」の政治へと転換することが求められていると思います。

私は、民主党も共和党も支持する立場ですが、バイデン氏による民主党政権となったことを契機に、米国が生活者目線の政治に向かうことを切に望み、我が国においても「生活者主権の政治」の実現に向けて尽力したいと思います。

最後に今一度、バイデン氏の勝利を祝し、米国が世界から尊敬され、世界平和と人類の諸課題を解決する先頭に立つ国になってくれることを祈ります。

吉良州司

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