デジタル政府化を前提とした「緊急時低所得世帯生活保障制度」の提案
コロナ禍は「第3波」到来の感が強くなりました。これに伴い、再び観光関連産業、輸送業、飲食業を中心として事業継続が困難になる会社やお店、また収入減少や失業により生活が困窮する人々が増えてくることを心配しています。
今年6月9日発信のメルマガにおいて緊急時生活保障制度という政策案を温めていることをお伝えしました。
コロナ禍の緊急事態時など経済全体が落ち込む時には、どうしても弱者にしわよせがいくため、低所得の生活困窮者を救済する制度を早急につくる必要があります。
この具体的制度づくりの第一歩として、支援対象の範囲、毎月の支給額、期間などを設定し、その予算について大まかな試算を行いました。そして、一日でも早い政策実現のため、政府有力者、与党有力者に以下のように提案しました。
1.緊急時低所得世帯生活保障制度(仮称)
(1) コロナ禍などのパンデミックや大災害などの緊急時における低所得世帯向け現金給付制度
(2) 月15万円(年収180万円)以下の生活困窮世帯に対する1年間の生活保障制度
(3) 支給額は月々15万円、年間180万円(1年間)
(4) 公的支援対象(生活保護や年金受給世帯)を除く年収180万円以下の世帯を対象
(5) 粗々の想定予算:1兆4940億円(約1兆5000億円)
(6) 所得減少分の差額補償の場合の想定予算は半分の約7470億円
(7) 試算の前提と試算結果については、こちらをご参照願います
対象を年収180万円以下の世帯とする理由のひとつは、日本の令和2年の全世帯数5738万世帯を所得順に並べた場合、年収175万円以下が下位10%となり、この下位10%の574万世帯を「低所得世帯」と位置付けることには誰も異論がないと思われるからです。この下位10%の境界線上の175万円は180万円(月15万円)と近似するからです。
そして、対象者から生活保護世帯と年金受給世帯を除外する理由は、社会保障制度の一環として公的支援を既に受けているからです。また、下位10%の実に73%が年金受給世帯であり、既に公的支援をしているこの世帯にも支給すると7兆円以上の予算が必要となり、実現が難しくなるからです。従って、生活保護と公的年金を受けていない現役世代(生産年齢人口世帯)の低所得世帯に限定することが一番国民の理解が得られると思うからです。
結果として、減収か否かに関係なく低所得世帯に月15万円を1年間支給する大まかな予算は1兆5000億円、減収分補償の場合は7400億円となり、予算的に受入れられる範囲、つまり実現可能な範囲に入ったと思います。
迅速に給付するためには、デジタル政府化の徹底が必要不可欠です。具体的な設計については別の機会にお伝えしますが、国民に割り当てられているマイナンバーとマイナンバーカードを最大限有効活用し、所得把握と支給先口座の紐づけをすることが前提です。尚、私はマイナンバーカードを『ライフ・サポート・カード』に名称変更し、その名にふさわしい、ひとり一人の一生涯をサポートするカード・制度にすべきだと思っています。
次回はシリーズその2として、「緊急時低所得失業者生活保障制度(仮称)」について、お伝えします。
吉良州司