吉良からのメッセージ

2020年11月15日

デジタル政府化を前提とした「緊急時低所得失業者生活保障制度」の提案

1.はじめに

前回のメルマガでは、コロナ禍のような経済全体が落ち込む時に弱者にしわ寄せがいくことの対策として、低所得の生活困窮者を救済する新たな制度「緊急時低所得世帯生活保障制度」を提案しました。
今回は、緊急事態によって失業を余儀なくされた低所得失業者に対する「緊急時低所得失業者生活保障制度」の提案です。
前回と同じく、支援対象の範囲、毎月の支給額、期間などを設定の上、その予算について大まかな試算を行い、一日でも早い政策実現のため、政府有力者、与党有力者に提案しています。

2.緊急時低所得失業者生活保障制度(仮称)

(1)コロナ禍などのパンデミックや大災害などの緊急時における低所得失業者向け現金給付制度
(2)月15万円以上20万円以下(年収180万円以上240万円以下)の所得者が緊急時に失業した際、失業保険給付を補てんする形で1年間の生活を保障する制度
(3)また、月15万円以上25万円以下(年収180万円以上300万円以下)の失業者の場合も試算
(4)上限240万円、同300万円どちらの場合にも、失業保険給付を含め、月々20万円を1年間支給(年間240万円の支給)
(5)失業保険給付は、日額平均約5000円、平均受給日数約100日ですので、5000円x100日=合計50万円が給付されますが、これで足りない分を補う形で1年間240万円を支給(失業保険給付を除く支給額は正味190万円)
(6)粗々の想定予算:
1)年収180万円以上240万円以下の場合 約9500億円
2)年収180万円以上300万円以下の場合 約1兆4250億円
(7)試算の前提と試算結果については、こちらをご参照願います

2.粗々の予算を導き出した前提条件と試算

前回のメルマガで提案した「緊急時低所得世帯生活保障制度」は、所得順の低位10%の低所得世帯(生活保護や年金給付など公的支援を受けていない世帯)に対する緊急時の1年間の生活保障所得(月15万円)でした。
今回の「緊急時低所得失業者生活保障制度」は、年収180万円以上240万円または300万円以下の人が緊急時に失業した場合の1年間の生活保障制度です。
180万円以上としているのは、180万円以下の世帯については、緊急時低所得世帯生活保障制度によって生活が保障される前提だからです。

上記の粗々の予算額を導き出した計算式については、こちらを参照戴きたいのですが、その前提条件は、令和2年1月1日現在の、年収180万円以上240万円以下の雇用者数が約1000万人、年収180万円以上300万円以下の雇用者数が約1500万人、現在の失業率は2.9%ですが、緊急時には失業率が上昇して5%になると仮定した前提条件です。

尚、対象を「低所得失業者」としておりますが、雇用されていた方のみならず、2019年7月の内閣府統計により最大341万人いるとされる個人事業主を含むフリーランスの方も対象にしています。<詳細は、こちら(フリーランスも今回の試算の対象としている理由について)を参照願います>

3.最後に ~まだまだ詰めるべき課題は多いが、大きな方向性を出すことが大事~

「緊急時低所得世帯生活保障制度」と「緊急時低所得失業者生活保障制度」により、経済全体が落ち込んで生活が困窮する低位10%の低所得世帯、および、年収240万円または300万円以下の方が失業した際の1年間の生活を保障できることになります。

これらの提案はまだまだ粗々のものであり、「『緊急時』の定義」、「181万円の低所得世帯が生活保障を受けられない場合は、保証を受けられる180万円世帯との間で年収の逆転現象が起こる問題」などを典型とする数多くの課題が残ります。

しかし、コロナ禍のような本人の努力ではどうしようもない事態の影響で生活が困窮する人たちを支援する制度を一刻も早くつくるためには、どの程度の予算がかかるのかを押さえておく必要があります。第2次補正予算の予備費が10兆円ですから、今回提案している二つの生活保障制度は、予算的にみても十分検討に値する提案だと思います。

粗々な予算と前提条件ながら、最終の制度設計に向けての詳細設計と課題解決に取り掛かるための土台にしてほしいと思います。

吉良州司