吉良からのメッセージ

2020年12月18日

やっぱり涙が溢れました!小惑星探査機「はやぶさ」の感動の物語

12月17日の夜、南西方面の低い夜空に三日月と木星と土星が並んで見えました。綺麗な三日月の横で木星と土星がきらきらと輝く光景を見るのは生まれて初めてなので、しばらく見惚れていました。
同時に、満身創痍になりながらインポッシブルと思われた小惑星「イトカワ」の砂を持ち帰るというミッションを見事に果たし、地球への帰還時に大気圏突入により燃え尽きた「はやぶさ(1号)」と、つい最近、小惑星「リュウグウ」の砂を採取して戻ってきた「はやぶさ2」のことを思い起こしていました。小惑星群は、火星と木星の間に約16万個も存在するのですが、木星を見ながら「あの手前の広大な宇宙空間に小惑星群があり、はやぶさ1号、2号はあそこまで行ってきたんだ」と感無量になりました。

また、録画していた、松嶋菜々子が案内役を務めるNHK番組「アナザーストーリーズ」の「はやぶさ 奇跡の帰還 ~受け継がれた夢と志~」を偶然にも今日見ました。

またまた、涙が溢れだして止まりませんでした。「イトカワ」の砂を採取して地球に向かい始めた直後に音信が途絶え、あの広大な宇宙の中で行方不明になってしまいました。ようやく交信ができるようになったら、今度は推進力の源であるイオン・エンジンが止まってしまいます。このように満身創痍になりながらも故郷である地球に戻ってくるのです。そして、「イトカワ」の砂が入ったカプセルを発射して地球に帰還させた直後、探査機本体は大気圏に突入して燃え尽きてしまうのです。この燃え尽きる光景を見ると涙が止まらないのです。こうやってその情景を書いているだけで涙が溢れてきます。苦労に苦労を重ねた人の人生に思えるからかもしれません。

この満身創痍の「はやぶさ」を3億km離れた地球から治療したのは、JAXAのプロジェクト・チームのみなさんです。「はやぶさ1号」プロジェクトに新人として加わり、音信不通になった絶望的な状況でも決して諦めることなく、執念で交信を復活させるのは、「はやぶさ2」のプロジェクト・マネージャーになった津田雄一さんです。また、はやぶさプロジェクトのイオン・エンジンの生みの親である國中均さんも、エンジンが全滅した際にも修復して稼働させる秘策を出発前から用意しており、見事にその秘策が功を奏しイオン・エンジンの修復を成し遂げます。光栄なことに科学技術イノベーション特別委員会の視察でJAXA相模原を訪問した際に、津田雄一さんと國中均さんにお会いしています。津田さんは爽やかなすがすがしい人柄の中に強い意志を感じさせる方、國中さんは淡々としていながら人懐っこいユーモアのある方です。

「はやぶさ1」プロジェクトが人々を感動させるのは、いわゆる科学者ではない、金属加工の職人や、親から受け継いだ「裁縫」の達人女性が目立たないところで実は大活躍、大貢献していることです。採取した砂を格納するカプセルの重要部品は職人の執念、匠の技で創り上げていました。砂採取の際のクッション装置の中の布は裁縫名人の女性が手で縫い上げていました。このような職人技にプロジェクトを託す決断をしたプロジェクト・リーダー川口淳一郎さんの胆力、特に人を信じる力に頭が下がります。はやぶさプロジェクトは科学者だけではなく、日本が誇る匠の技も駆使して成功させたプロジェクトだったのです。
7年前、川口淳一郎さんが講師をされた「はやぶさプロジェクト」セミナーに参加して話を聴きました。川口さんは数々の名言を発していますが、「若い方々には、たとえむちゃでも、はったりでもいいので、とにかく思いっきり背伸びして挑戦してほしい」という言葉に託された思いを日本の全ての若者に理解し、実践してもらいたいと思います。

今日は夜空の星を見ながら、はやぶさプロジェクトの感動に浸った一日でした。

吉良州司