父の他界に思う ~昭和一桁生まれとともに繁栄し、引退とともに衰退に向かった日本~
昨日未明、昭和6年生まれの父が他界しました。自分にとって、背中の大きな、とてつもなく偉大な父でした。刑事畑の厳格な警察官で、胆力や正義感や信念が服を着て歩いているような父でした。戦前、戦中、戦後の筆舌に尽くしがたい厳しい時代を生き抜いてきた父の、何事にも動じない生き様を見ていると、いつも自分がひ弱に思えていました。そして、父の背中を見ながら、いつしか、日本の戦後復興とその後の繁栄は、戦前教育を受けながら、社会人としては戦後の社会で働き、焦土と化した国土の中で就いた職業を天職として受け入れ、戦後社会にも順応しながら、懸命に働き続けた昭和一桁生まれの、その不屈の精神と頑張りのお陰だと思うようになりました。残念なことは、その昭和一桁生まれの現役引退とともに日本社会は輝きを失いはじめ、長期の低迷が続いていることです。
私が、政治の道に飛び込んだ最初の大分県知事選挙時(2003年)、次のような文章を多くの有権者に届けました。昭和一桁生まれの方々が健在の内に「真の改革」を成し遂げたいと思っていたからです。父の生き様を念頭においた強い思いでした。
『戦中、戦後を生きぬいた高齢者の方々に感謝の念を!そして、その高齢者が健在の内に真の改革を成し遂げたい!
終戦直後、芋や大根の葉を食べながら気力だけを栄養として生き抜いてきた世代、家族には二度とひもじい思いをさせないとの一念から昼も夜もなく必死に働いて、働いて、働き続けた世代、焼け跡だらけの廃墟から驚異的な経済発展を成し遂げた世代、自分達は勉強したくても出来なかったが故に自分達は食わず休まずとも子供に高等教育を受けさせ、その子供に将来の夢を託した世代、古きよき価値観を決して失うことなく、常識ある、いや学歴に関係なく高い見識を持った市民であり続けた世代、愛すべき自分の父母の世代が、今、年老い、現役を退き、そしてこの世から去っていこうとしています。
いつも涙なくして見ることの出来ないNHK番組「プロジェクトX」は、この世代が我々に残してくれたものが、如何に大きく貴重なものであるかをいつも語りかけてくれます。これらの世代は農家、商家、サラリーマン、町工場、企業家、公務員かを問わず、その従事した職業を天職と考え、それぞれの持ち場で一所懸命働き、一人ひとりみんなが日本復興の立役者でした。昨今の日本の世の乱れを目の当たりにする時、古きよき時代の価値観の体現者が今ほど必要な時はないでしょう。それだけに、この世代を失うことが今の日本にとって、どれだけ大きな痛手であるか計り知れません。この世代が去り行く前の今こそ、日本の、そして故郷の古きよき伝統、文化、価値観を見直し、若い世代に伝えていかなければならないと思います。同時に、あの廃墟の中から不屈の精神で日本を復興させてくれた、その勇気と知恵と経験を今こそ現役世代に伝授戴き、その力を借りながら、今必要な改革を、たとえそれが痛みを伴う改革であっても、断行したいと思います。吉良州司』
自分は、偉大な世代である昭和一桁生まれを父母に持つ世代として、その引退とともに衰退に向かってしまった日本を再び復興、繁栄させる使命があると思ってきました。まだ、道半ばですが、父とその世代の思いを引き継ぎ、低迷する日本を再び復興させたいと思います。
吉良州司