予算委員会 質疑の文(あや)と裏事情
12月14日夕刻の予算委員会で行った私の質問に対して、地元大分のみならず、全国各地から激励の電話やFAXやメールを戴きました。応援、激励戴いた全てのみなさんに心から感謝致します。想像をはるかに超える好意的反響に正直言って驚いています。中には下記のような激励メール(抜粋)を戴きました。
『本日の吉良先生の国会での質疑を見て大変感銘を受けました。国会中継で質疑される吉良先生を見て、日本の政治も、日本国もまだチャンスがありそうだと希望が湧きました。この調子でぜひ日本を立て直してください。』
とても嬉しく、もったいないくらいの激励です。
質問時間が18分と短い中で、新会派「有志の会」の紹介もしたかったし、日本経済を米国ドルベースで示したグラフを見て戴きながら、国民のみなさんに「日本経済の真の姿、実態」を認識してもらいたいという目的を持っていました。
更には、私の持論中の持論であり、先の総選挙の理念・スローガンにも掲げていた「生活者主権の政治」「将来世代優先の政治」の重要性を岸田総理に訴えるつもりでもいました。
岸田総理の「成長と分配の好循環による新しい資本主義」の「分配先」の優先順位を将来世代とし、教育の充実と子育て支援策を最優先に「分配」すべきと迫ることも大きな目的でした。
ある程度、その目的は果たせましたが、残念ながら、分配の優先順位を明確にすべきという議論については、時間の制約と米国ドルベースで見る日本経済の実態に対する岸田総理答弁があまりに長く、時代遅れの内容で、それに私が反論してしまったこともあり、充分な成果は出せませんでした。
時代遅れの岸田総理答弁とは、『(民主党政権時の米国ドルベースがよく見えるのは)、大変な円高の中にあったからで、ドルベースで評価すると成長しているというグラフになるわけですが、あの当時は、倒産も多く、雇用も厳しい、日本経済六重苦と言われていた時代です。<中略> 国民が、景気、経済の実感ということを感じるとした場合、やはり、生活は、円でもらっている、給料は円でもらっている、こうしたことを考えますと、円建てのGDPを増やしていくという点が大事であると思います。』というものです。
実は、総理の答弁要領を作成する官僚たちに向けての質問通告の場(「質問レク」といい、私から質問の内容と趣旨を官僚たちに知らせると同時に、官僚たちは総理に恥をかかせてはならないと、質問の真意をとことん確認しようとする場)において、私から官僚たちには次のような要請をしていました。
「データという事実をグラフで示すので、為替がどうのこうのという答弁はしないでもらいたい。米国ドルベースの評価には当然、為替が関わってくるが、そのようなことは百も承知であり、その議論について総理からの反論があれば、私は、国民が納得する十分な事実と理論を持っており、あらゆる観点から反論できるし、するつもり。総理に恥をかかせないためにも、そのような答弁はしないでもらいたい。そのような答弁をさせないためにも、また、長い答弁をされると時間切れになるリスクもあるので、日本経済の実態の説明のところでは敢えて自分から総理への質問という形はとらず、自分の説明だけの言い切りにする」と。
時代遅れの答弁を用意する官僚の質の低下(「為替のマジックですよ」といった幼稚な説明により私やビジネス界を含む国民を説得できると考えている、その発想と認識があまりにお粗末)は憂えるばかりです。
ところが、この官僚作成の答弁要領に基づいて、総理はやってはならない時代遅れの上記のような反論答弁をしてしまいました。
そして、大人気ないことは承知していますが、当然のように私は次のように反論しました。
『総理、円高、円安の議論、私は幾らでもしますよ。私はその世界で生きてきましたから。輸出企業を支援して、その果実がトリクルダウンして日本全体を豊かにする、このような時代はとっくに終わっています。(時間がないので)細かく言えませんが、ガソリン問題しかりです。業界主権、生活者主権。生活者主権から見れば、今や、無理やりに持っていく円高ではなく、自然な円高の方が、生活者にとっては可処分所得が増えて、GDPが六割を占める経済において、経済成長の要素になるんです。<中略>GDP世界二位だった、今は三位だと。何の通貨で比較しているんですか。日本円と人民元と米国ドルで比べているんですか。過去も、日本が二番だったとか、日本がこれだけすごい経済だった、全部米ドルなんです。都合のいいときだけ円高を理由にする、こんな議論は成り立ちません。この件は、もうとことんやらせていただきます。」と。
業界優先、業界主権の立場で、輸出産業を国民の生活よりも優先するとの観点からは「6重苦」に見えるかもしれませんが、生活者優先、生活者主権の観点から見れば、「自然な円高」の方が、国民生活を豊かにし、経済成長する時代になっているのです。
「6重苦論」は輸出産業の利益という「部分最適」の視点であって、1億2000万人の生活者の生活と利益を重視、優先する「全体最適」論には及ばない議論なのです。
実は、私が質疑の締めくくりとして描いていた理想は、岸田総理が所信表明演説の中で、『人への分配は、「コスト」ではなく、未来への「投資」です』と演説していることを取上げ、岸田総理にエールを送ることでした。
私が「人への分配が未来への投資」との考え方を素晴らしい哲学だと持ち上げ、「未来への投資」は、将来世代への投資であり、教育の充実と、子育て家計への支援に代表される「将来世代優先の政治」を実現してほしい、と締めくくりたいと思っていたのです。時代遅れの総理答弁により、私も反論し、残念ながら、エールを送る締めくくりはできませんでした。
因みに、「6重苦論」「円安国益論」に関連し、私自身は、商社時代にずっと輸出ビジネスに関わってきた経験があり、日本が世界のなかで豊かに生き抜いていくためには、誰かが必ず外貨を稼ぎ続けなければならず、輸出企業、輸出産業の維持と国際競争力の増進は我が国にとって死活問題である、との認識を持っています。
学生時代、「資源小国日本」が世界の中で豊かに生きていくためには、必ず外貨獲得が必要であり、それを経済、ビジネスの最前線でやっているのが商社だ、との思いから商社を就職先に選んだのです。
元々、現地生産化や世界中に展開するサプライチェーンの構築は「円高対策」であり、「輸出企業の生き残り策」、「国際競争力の維持増進策」なのです。
それゆえ、私は今、全体最適論では国民生活を豊かにする「自然な円高」を推し進めていくべきだと信じていますが、一方では、自然な円高状況の中で、どうやって輸出企業、輸出産業を守り、支援できるか、を真剣に考えています。具体論を提案するために、データを収集し、勉強しています。そして、自分が考えている案に肉付けしているところです。
以上、予算員会質問に関わる「質疑の文(あや)」と「裏事情」をお伝えしました。長い文章にもかかわらず、最後まで読んで戴きありがとうございました。
また、予算委員会質問へのご声援、激励にあらためて感謝申し上げると同時に、これからもご声援よろしくお願い致します。
尚、上記予算委員会の議事録全文、
その際に使用した資料、
実際の録画(衆議院ホームページ) も時間があれば、是非ご覧ください。
吉良州司