吉良からのメッセージ

2022年2月24日

ウクライナ問題について考える。その1 予算委員会・分科会にて質問に立つ

政府提出予算案が衆院を通過しました。同案に対し、有志の会は反対の立場で臨みましたが、去る2月22日衆院本会議において、自公・国民民主の賛成多数により可決されました。私は、予算委員会の締めくくり総括質疑にも立ち、反対討論も行いました。この内容については、別途報告させて戴きます。

本日のメッセージは、現在、我が国はもちろん、世界の最大の関心事であるウクライナ問題について、去る2月16日予算委員会の分科会において質問に立った際に私が問題提起した内容をお伝えしながら一緒に考えていきたいと思っています。かなり長くなる可能性がありますので、シリーズでお伝えします。

まず、上記質問に先立ち、国会内のルールに従い、政府側に次のような質問通告を行い、官僚たちがその真意を確認するために行う「質問レク」においても私の真意を伝えました。

質問通告 <テーマ:ウクライナ情勢と日本外交>

1.ウクライナ問題への対応次第で得られる国益、失う恐れのある国益は何か
2.イラク戦争と戦後統治に対する評価について
3.イラク戦争がISを産み出したという見方に対する見解
4.ロシアがウクライナのNATO加盟に拒否反応を示すことに対する見解
5.ウクライナのNATO加盟を当面凍結するか、同国に中立国となってもらうか、などの妥協案は事態鎮静化に有効と考えるか。妥協案は、クリミア併合や武力による威嚇を容認したと受け止められ、結果的に「力による現状変更、またはその試み」を容認することになると考えるか。また、そのことは、日本の領土問題や尖閣問題にどのように影響すると考えるか。
6.強権国家、独裁国家の主張は常に間違っているのか
7.ベラルーシへの制裁が同国の更なるロシア接近を促し、結果的に対EU・米国に対し先鋭化しつつあることのリスクをどう見ているか
8.ウクライナ情勢の緊迫化によって世界の天然ガス市場や穀物市場の需給ひっ迫が予想されるが(既にその傾向は出ている)、それでもNATOの東方拡大は、ウクライナの主権の尊重という名のもと、必要だと認識しているか
9.日本が欧州にLNGを融通することの是非と意義について

上記、質問通告項目の内、1の日本の国益、4と5のNATOの東方拡大、7のベラルーシの更なるロシア接近、8と9の天然ガス・穀物市場や我が国への影響、などについては、みなさんも容易に私の問題意識や期待する答弁などにつき想像して戴けると思います。
一方、2のイラク戦争、6の強権国家の主張については、一体何が言いたいのか、よくわからないと思われる方も多いと思っています。

実は、この分科会質問に先立ち、2月3日の予算員会一般質疑において「北方領土問題」を質問テーマとしましたが、この質問の冒頭にウクライナ問題に対する私の問題意識を提起しました。

 『北方領土問題を取上げるきっかけはウクライナ問題です。
1)ロシアの真意がどこにあるのか。
2)クリミアや東ウクライナは歴史的にはどちらかと言えばロシアの領土といえるのではないのか。
3)NATOは元々ソ連やワルシャワ条約機構の軍事的脅威から欧州を守るための同盟であったのに、ロシアとの武力紛争を引き起こす可能性があってもNATOの東方拡大を推進すべきなのか。
4)ウクライナ問題がロシアの東アジア戦略にどう変化をもたらすのか。
5)その結果、我が国にどのような影響を及ぼすのか。
6)中国はウクライナ問題を契機にどのような国益を追求してくるのか。
7)これを契機に中ロの接近が益々進むのではないか。
8)中国は、米国が中間選挙を前に対中国、対ロシアの二正面作戦を実行できるだけの余裕がないと判断し、一挙に台湾を狙うのではないか。
9)否、中国も習近平の今年秋の中国共産党大会での3期目狙いがあることに加え、まだ準備も万全ではないだろうから、それはないか。
などなど、商社マン時代の習性で、風が吹けば誰が儲かるのか、誰にどんな影響が及ぶのか、考えてしまいました。
 
また、我が国としては、米中覇権争いの中、中国とどう向き合うかが外交上の最大の課題ですが、ロシアとまでも事を構える事態になってはならない。ウクライナ問題への対応によってロシアとの決定的な関係悪化を招いてはならない。益々の中ロ接近が進むことへの対応も考えておかなければならない。と思い、北方領土問題を取り上げることにしました』と。

今の今、足下でロシアがやっていること、やろうとしていることは、「正義」に照らせば、決して許されることではありません。それは誰の目にも明らかです。

しかし、米国、NATO加盟国、旧西側諸外国が正義をかざして、何らの妥協点も見出そうとせずに武力紛争に至った際、犠牲になるのは何の罪もないウクライナの人々です。
米国も一切の妥協を拒否しながら、一方では、早々と米国ウクライナ大使館の米国人を退去させています。
アフガニスタン戦争も、イラク戦争も、理由はなんであれ、米国が仕掛けた結果、戦争に参加した外国軍人の何倍もの現地人が犠牲となり、戦後の治安統治には失敗して、更なる犠牲者が続出しました。そして、米国人犠牲者が多くなり、戦費負担に耐えられなくなると現地の協力者まで置き去りにして米国人だけ逃げ出してしまいました。

三流やくざ映画ではありませんが、相手組員に向かってさんざん悪態をついた親分が、自分だけは安全なところまで下がりながら「てめえども、やれぇ~!やっちまえ!」と言っているようにしか見えません。「てめえども」にされるウクライナ人はたまったものではありません。

何故、質問通告でイラクを取上げたのか。それは、イラク戦争の結果、フセイン政権下で政権を担ったバース党関係者がISに参加し、その組織化に協力し、イラク北部、シリア東部はISに支配される事態となりました。IS支配地域で暮らしていた、何の罪もないイラク人、シリア人、特にヤズィーディー教徒(特に奴隷化された女性たち)が被った悲惨さはとても文章にできるものではありません。

シリア内戦は元々アサド政権と反アサド勢力による内戦でした。しかし、ISがシリア東部に勢力を拡大することで複雑化していきます。元々ロシアはアサド政権支持を名目にシリア内戦に関与していましたが、IS掃討という更なる大義を得て、大規模に軍事介入した結果、アサド政権側勝利の立役者となり、中東におけるロシアの存在感を増大させました。一方、この間、オバマ政権時代からシリア内戦に対する消極的な関与、そして、トランプ大統領の米国第一主義を掲げて世界の警察官を降りると宣言した結果、シリアなど中東に対する、更には世界に対するロシアの(軍事力を背景にした)影響力拡大を、米国は事実上黙認し続けてきたのです。
 
ウクライナの主権と領土の一体性を守るという正義は、ウクライナの人々の命が守られてこその正義であり、外国人は正義を掲げて逃げ出せますが、そこで暮らす人々が犠牲になったのでは何のための正義かわかりません。

以上の説明から、質問通告の2と3の「イラク戦争」を取上げた私の問題意識をご理解戴けたと思います。
長くなりましたので、あらためて続きのメルマガを発信させて戴きます。

吉良州司