吉良からのメッセージ

2022年3月11日

ウクライナ問題を考える その6 米国とNATOの他人事対応

ウクライナ問題に関する私の主張は「過激派」の域に達しつつあるかもしれません。今回もかなり踏み込んだ意見を述べさせて戴きます。

1.ウクライナが「飛行禁止区域」設定をNATOに要求、NATOは拒否

ロシアの空爆を防ぐため、ウクライナはNATOに対して、同国領空に「飛行禁止空域の設定」を求めましたが、NATOは拒否しました。同国制空権を掌握・維持するためには、同空域に侵入したロシア空軍機を撃墜しなければならず、それを行えばロシアとの全面的な軍事衝突になるので、それを避けるための拒否です。
ゼレンスキー大統領は、「人道空域を設定することは、西側・NATOの人道的義務であり、それをしないなら、我々を見殺しにするようなものだ」と訴えましたが、NATOは拒否したままです。

2.ウクライナが、NATO加盟東欧諸国が持つ「旧ソ連製ミグ29戦闘機」供与を要請

絶望したゼレンスキー大統領でしたが、今度は、現在NATOに加盟する旧東欧諸国、具体的にはポーランド、スロヴァキア、ルーマニアが持っている旧ソ連製「ミグ29」戦闘機を提供するよう要求しました。ウクライナ空軍のパイロットも操縦に慣れているためです。NATOが飛行禁止区域の設定、領空を守ってくれないなら、自力でやるしかないとの悲痛な要求です。

この要請を受けて、米国は、ポーランドが「ミグ29」をウクライナに提供し、その穴埋めに米国の戦闘機をポーランドに供与する案を提示しましたが、ポーランドはこれを拒否。「ポーランドからウクライナへの戦闘機供与は『参戦』と見做す」とのロシアの脅しがあり、ポーランドとしても報復攻撃を受けることを避けたのです。
その代替案として、ポーランドは、ドイツの米軍基地にミグ29を提供し、同基地からウクライナに供与するよう求めましたが、米国がこれを拒否。やはり報復攻撃を避けるためです。

ゼレンスキー大統領も冷徹にこの現実を受け止めなければなりません。

米国、NATO、西側諸国は「力による一方的な現状変更を許してはならない。力に屈してはならない(吉良意訳)」と言ってはいますが、核使用の可能性も含め、何しでかすかわからないロシアを前に、自分たちこそ、「力に屈している」か、少なくとも「自分が攻撃を受ける口実を与えたくないと逃げ回っている」ようにしか見えません。
それなのに、ウクライナにだけ「力に屈するな」と求めるのは筋が通らず、無責任と言わざるを得ません。ウクライナの現状は、米国やNATO諸国にとって結局は他人事なのです。
犠牲者が拡大し続けるこの惨状を一刻も早く止めるため、「耐え難きを耐え、忍び難きを忍び」ながら、たとえ「力に屈した」と言われようが、停戦合意に持ち込まなければならない、と訴え続けているのです。
ウクライナの地政学的宿命として、西側とも、ロシアとも仲良くし、共存共栄することを追求していくしかないのです。

3.自分も他人事感覚で正義を訴えていた苦い経験がある

かくいう私も恥ずかしながら、他人事の時に正義を語り、自分事になった時に、正義より命が大事と思った苦い経験を持っています。南米ペルーのリマで1996年12月17日に起こった、武装ゲリラによる日本大使公邸襲撃事件です。

私の無二の親友が人質になったのです。しかも、この時期私はニューヨーク勤務だったこともあって、頻繁にペルーに出張し、親友ともよく会っており、首都リマの様子も手に取るように知っていましたので、この事件は他人事ではありませんでした。

この時私は、自分の人間としての弱さに愕然としました。1977年に日本赤軍が起こしたダッカ日航機ハイジャック事件の時、私は、「超法規的措置」で連合赤軍の囚人を解放しようとする日本政府に対して「犯人の言いなりになってはならない」と「弱腰」を批判していました。「テロに屈してしまうと、第二、第三のテロを生み出してしまう。犠牲を恐れてテロに屈してはならない」などと、威勢のいい、立派なことを言っていました。しかし、ダッカ事件の人質の中に自分の親族・知人はいませんでした。
しかし、生涯の友であり、兄とも仰ぐ無二の親友が人質となったペルーの事件では、ゲリラ数十規模の釈放という超法規的措置であれ、どれだけ身代金を払ってでも、人質を一人も死傷に至らしめることなく解決してほしいと神に祈りました。「テロに屈してはならない」と強硬姿勢を壊さない米国政府を恨みました。
この事件までは、「他人事として綺麗ごとや正義を語っていた」のだと、自分の他人事意識に深く恥じ入ったことを今でも鮮明に覚えています。

4.国民のいない祖国に意味があるのか

ウクライナ大統領も「どれだけの犠牲を払おうと祖国を守り抜く」などと威勢のいいことを叫ぶのではなく(国民のいない祖国の領土なんて何の意味もありません)、少しでも犠牲を小さくする方法で妥協し、国民の命を優先してほしいと思います。

今日も最後まで読んで戴き、ありがとうございました。

吉良州司

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