吉良からのメッセージ

2022年4月8日

ウクライナ問題を一度立ち止まって考える

これまで、ウクライナ・シリーズを11回までお目通し戴きましたが、私がこれまでお伝えしてきたことを一度立ち止まって振り返りたいと思います。

まず、私はこれまで次のようなことを主張してきました。
1.最優先は何の罪もないウクライナ国民の一人でも多くの命を守ること
2.そのために、ロシアに軍事侵攻させないこと、(軍事侵攻後は)1日も早い停戦を実現すること
3.停戦のためには、相手が残虐非道なロシアであっても、何らかの妥協をしなければならない。
4.何を妥協し合意すれば停戦できるのかにつき、具体的な停戦条件を提示。

これらのことを主張してきたつもりです。しかし、読者の方から「親ロシア」とか「プーチン擁護」という声も戴き、またロシア軍の残虐非道な行動が止まない現在、一度立ち止まり、現況を鑑みながら今一度私の真意をお伝えしたいと思います。

その上で、一度立ち止まって振り返りたい理由は相関連することですが、3つあります。

1.ロシア軍の残虐非道さのため、国際世論も国内世論も「妥協」を許容しなくなった

ひとつはロシア軍の残虐極まりない実態が明らかになりつつある今、「戦争を回避するためには、NATO非加盟や中立国化を受け入れるべきであった」とか「一刻も早く停戦合意を成立させ戦争を終わらせるためには、臥薪嘗胆を胸に秘めながら、妥協も必要だ」といった議論には国際世論も国内世論も聞く耳を持ってもらえなくなっているからです。
私は、シリア内戦に参加したロシア軍の残虐さについてお伝えしていましたが、この残虐さがあるからこそ、ロシアが軍事侵攻する前の妥協(当分の間、NATO加盟を諦めること+アルファ)の必要性を説いていました。

2.交渉成立は相互の妥協の賜物

ふたつ目、交渉の本質は、絶対に必要なものを勝ち取るべく、相手が求める条件の中の何かを譲るという(名誉ある)妥協なのですが、今となっては、ロシア相手に妥協することに対する厳しい声を戴いているからです。

これまでのメルマガ発信の一番大きな目的は、(軍事侵攻前は)「ロシアに軍事進攻させないこと」、(軍事侵攻後は)「一刻も早く停戦に持ち込むこと」により、「罪のないウクライナ人、ロシア人の犠牲者を出さないこと、最小化すること」につき読者のみなさんに深く共感して戴くことでした(です)。

何がなんでも勝ち取らなければならない大事なもの、それは今回のウクライナ紛争でいえば、ロシアに軍事侵攻させないこと、平和を維持することでした。そのための妥協案として、NATO非加盟(and/or中立国化)だけでロシアが納得するならそれでよし、それで納得しないなら、クリミアのロシア主権を認めること、ルガンスク州やドネツク州の(または両州内の)親ロシア派武装勢力支配地域の自治州化またはウクライナ共和国内の自治共和国化を認めること(主権はウクライナのまま)もありうる、とお伝えしてきました。

そして、これらの妥協案について、強権国家ロシアといえども、ロシアの立場に立ってみれば、ロシアなりの正論であることを、歴史的経緯やロシア系住民の数や志向などの事実を示しながらお伝えしてきました。

3.どんな相手であっても相手なりの正論がある 多様な物事の見方と考え方

私が一番強くお伝えしたかったことは、物事にはいろいろな見方、考え方があること、また、相手の立場に立てば、どんな相手であっても相手なりの正論があることということでした。
決してロシアの主張に正義があるとか、正しい、と言っているわけではないのです。

理由の3つ目は、報道内容がほとんど同じである結果として、世論がほとんど同じ方向を向いてしまっていることに対し、いつか来た道だとの危機感を覚え、歴史的事実を含む客観的な情報を提供しつつ、敢えて逆張りの見方や考え方を伝えることも必要だと思っていたからです。

4.【まとめ】大いに反省する「誤解を招きかねない」私の論調とその論調に対する批判

しかし、私自身大いに反省している点もあります。同じ方向だけ向いてしまう世論に警笛を鳴らしたいという意味合いでお伝えしてきた逆張り思考だったのですが、相手の立場に立った場合の相手なりの正論に対する理解をお伝えしたつもりが、読者のみなさんから見ると、ロシア擁護、プーチン擁護、ロシア人擁護、ロシア兵擁護の論調と受け取られても仕方ない逆張り論調になっていたようなのです。
じっくりとメルマガを最初から連続して読んで戴ければ、そのような行き過ぎたロシア擁護論ではないことはわかってもらえると信じるのですが、「どんな犠牲を出しても、決してプーチンには屈しない。最後まで戦い抜く」と言っているゼレンスキー大統領を批判する論調に対する批判、「極悪非道の侵略者プーチンと妥協しろという感覚が理解できない」といった声も戴きました。

でも、私はゼレンスキー大統領を今でも評価しません。これだけの犠牲者を出して、これだけ街を破壊され、これだけの避難民を出していながら、それを阻止できないリーダーをどうして評価できましょうか。いくらプーチンを「戦争犯罪人だ」などとなじっても、何の解決策にもならないどころか、却って解決、停戦が遠のいてしまいます。プーチンが何をしでかすかわからないことははじめから分かっていることです。だからこそ、米国はじめ、欧米諸国も核や化学兵器の脅威を前に逃げ回っているのです。

武力侵攻前は武力侵攻させないための妥協、武力侵攻後は停戦合意のための妥協案を以って一刻も早く停戦合意を成立させて平和を取り戻すことこそがリーダーの使命です。

一度立ち止まって振り返りましたが、今やるべきことは、外野席から正義を叫んで戦争をより長期化、激化させることではなく、たとえ相手がプーチンであってもぎりぎりの妥協をして、一刻も早く停戦に持ち込むことであるとの信念は揺るぎません。一度立ち止まった結果、自分の信念を再確認するメルマガとなりました。

一人芝居、自己満足のようなメルマガになってしまいましたが、読者のみなさんにも一度立ち止まって戴き、今一度、今何が大事か、何が必要か、何をすべきか、一緒に考えて戴けたと信じています。ありがとうございました。

吉良州司

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