エネルギー安全保障 電力逼迫問題 一度立ち立止まって考える
過去2回の「エネルギー安全保障 電力逼迫問題」シリーズを読んで戴きありがとうございます。
この先、次回、次々回と続いていくシリーズですが、ここで一度立止まって「その1」「その2」を簡単に振り返り、「その3」「その4」の要旨になるであろうことをお伝えしておくべきだと考えました。これまでの私の主張に疑念を抱いておられる方も多いのではないかと思うからです。
そのような問題意識を持つ最大の原因は、世界がCO2削減に向けてスクラムを組む中、私が火力発電の必要性を強調しているからです。このような主張に対して、再生可能エネルギー導入促進を求める方や、地球環境対策を重視する方からは大きな批判の目を向けているだろうと思うからです。
1.カーボンニュートラルや再生可能エネルギーの最大化の目標は同じ
でもご安心ください。将来的にカーボンニュートラルを目指すこと、その実現のため再生可能エネルギーを最大化すべきという方向性は私も同じです。
但し、目指す到達点までの移行期間はもちろん到達点以降についても、我が国の国情に鑑み、理想論を廃し、冷徹且つ現実的な方策を追求すべきだと思っています。
その現実的対応として、目指す到達点以降においても調整電源として一定の火力発電(特にLNG天然ガス焚きガスタービン火力)を有効活用する必要があります。
調整電源とはバックアップ電源と言い換えることができます。雨の日については、太陽光発電は設備が故障して発電できない状況と同じです。その故障時に本来は太陽光発電で賄うはずだった電力を替わって供給する役割を担うのが調整電源です。
2.調整電源は火力がもっとも適している
では何故バックアップ電源、調整電源は火力でなければならないのでしょうか。
電力需要に対する安定供給を考える時、再生可能エネルギー、特に太陽光発電は天気次第の電源なので、天気が悪い時に備えた蓄電池が必要になります。しかし、蓄電池は自ら発電しないので、どこかで発電した電気を蓄えておかなければなりません。蓄えられた蓄電池容量はせいぜい数日の需要に応えられるだけで、数週間の需要に対応できるわけではありません。
しかし、最近の気候変動を考えると、日本の梅雨の時期など1か月間太陽が顔をださないことは充分ありえます。その間、太陽光を電源として蓄電池に電気を貯めることができないのです。365日、24時間稼働するベースロード電源は、同時同量原理から、急な需要増減に即応できません。火力発電しか即応できないのです。
3.将来的には火力に頼らない電力システムの構築を
化石燃料を使わずに発電できれば、輸入代金を減少させることができます。海外への支払いを大幅に減らした分のお金を国内還流させれば経済も大いに潤います。
それゆえ、今後の技術進化によって電気自動車のバッテリーを蓄電池として活用することも含めた地域内スマートグリッドを全国に普及させるべきです。スマートグリッドが典型例となりますが、今後AIなどを有効活用した新時代の電力システムを構築し、化石燃料、火力発電に頼らないエネルギー社会の実現が重要です。
4.現実的対応 順番が大事
しかし、冷徹且つ現実的な対応としては、そのようなシステムが実現できた時点で火力発電を止めていけばいいのです。理想論が先行して火力発電の廃止を先行させてしまうと、今回のような電力逼迫問題が生じてしまうからです。
5.将来は安全性の高い核融合発電に
目指す到達点までのベースロード電源は、化石燃料を使わず、世界情勢に左右されない自前電源である原子力が主役になると思います。
しかし、既存の原子力に対しては国民の不安があまりに大きいので、目指す到達点以降は、安全性が高く、既存原子力と同じく、化石燃料を使用せず、国際情勢にも影響されない、自前の技術と燃料(水素の同位体である重水素と三重水素)で発電できる核融合発電(2050年前後に実用化見通し。詳細はその3かその4にて)に置き換えていくべきだと考えています。
吉良州司